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もう一人のママ
「……」
「どうかした?」
フラムクーヘンを持ったまま俺は呆然となる。
(これ絶対気づいてるわ。俺と天空の事)
表情を変えずに俺を見る玲子さん。
瞳の奥から、
「ぜーんぶ知ってるんだからね」
と声が聞こえた……気がした。
「みっくん、ぼーっとしないで早く食べてね。冷めたらおいしくなくなるから」
「は、はい」
俺は急に味のしなくなった料理を懸命に平らげた。
「ねぇ、みっくん。久しぶりに玲子ママとお話しようか? 学校の事とかいろいろ、ね?」
「はいっ!」
玲子さんがママと言うのには理由がある。
ほぼ同じ時期に生まれたハトコ同士の俺と天空をお互いの母親はフォローし合って育てた。
母乳も融通し合った為、俺達は乳兄妹の関係となった。
よって玲子さんは俺の乳母、もう一人の母親なのだった。




