妹と賞金首
力には代償というのがつきものだ、果たしてこれだけスキルを使い放題にして何のリスクもないのだろうか?
――
ありません、全てはあなた方の力です
――
わー、大盤振る舞いだなあ……
天の声の補足に有り難く思いながらも、こんな力を無償で手に入れてよかったのかは疑問に思う。
今日は何もスキルが振ってこなかった、だから俺とミントは薬草採集の真っ最中だ。
「おにーちゃーん……退屈ですねー?」
「やめろよ……そんなこと言ってたら何か来そうだろ!」
幸いなことにドラゴンやアンデッドやオークキングが現れることは無かった。
「…………ちっ」
「何も起きなかったからって舌打ちすんなよ……平和なのはいいことだろう!」
コイツはどこまでも厄介ごとが大好きなところがある、そういうのは巻き込まれるものであって引き起こすものじゃないんだよなあ……
「あっ!!!!」
「どうした?」
「これこれ! エリクサーの材料になる薬草ですよ! いい感じにお金になりそうじゃ内ですか?」
鑑定……
『フェネル草:エリクサーの材料にもなる。単体でも強力な回復効果を持つ』
「おお、たしかにこれはいい感じに金になりそうだな」
「でしょう! これを見つけた私スゴいですね!」
「じゃあさっさとストレージに……」
「おい!」
野太い男の声が聞こえた、やっぱりこうなるよなあ……
声のした方を見ると筋肉質の中年の男がこちらを見ながら怒声をあげていた。
「それは俺が先に見つけたんだぞ! 横取りするんじゃねえよ!」
「とったもん勝ちですよ? あなたが必死に探し回ってたのかもしれませんが、先に触ったのは私です、つまり私のもの!」
ミントもミントで喧嘩を進んで買っていくスタイルを崩さない。
「とりあえず話し合いを」
「「するわけない「でしょう」「だろうが!」」
こうしてあっさりと交渉は却下され、武力行使に移行するのだった。
「お兄ちゃん! バフお願い!」
「はいよ……」
――
力「S」
体力「S」
素早さ「A+」
――
目の前の男が魔道士のような感じはまるでしないので魔力の強化は必要ないだろう。
ヒュン
素早く男の裏側に回り込んで一発殴りを入れようとする、男はかろうじてかわす。
「以外とやりますね……」
「お前ら……ただのパーティじゃねえな……なんでその腕があって薬草なんて集めてんだ……?」
「それはお互い様だと思いますがね……」
男は躊躇なく剣を抜いた、ためらいが無い動きにコイツは殺しになれているなと気づく。
「お兄ちゃん、死人が出る可能性も……」
「まあ……しょうがないな」
命の危険があるというのに恩情をかけられるほどこちらにも余裕はない。
「ここでフェネル草と有り金を全部おいていけば許してやるぞ」
「お断りですねえ、これはもう私のものです!」
「クソがッ!」
男が剣を振るうがミントは余裕のステップで切り込みをかわしながら男の腹に一発撃ち込む。
「ぐへぇ!」
男は後ろの方に衝撃で吹き飛ばされる、死んだかな……?
「ちぐじょう……ぽあえら……こおす……」
男は腹に食らった一撃でまともな言葉が出せなくなっているが、戦闘自体はまだ続けるようだ。
「じねえええええええ!!!!!!」
ありったけの力であろう振り下ろされた剣をミントは横にかわして剣の腹に思い切り拳をツッコんだ。
メキ……バキッ
剣は砕け散り、もはや男は丸腰となった。さすがにもう戦闘力も残っていないはずだ。
「あきらめなさい、あなたの負けです」
「ぐ……ぐえ……」
男はミントに喉笛を掴んで軽々と持ち上げる、もはや声らしいものも出せなくなった。
「ふむ……」
ミントは少し考えて男をストレージに放り込んだ。
「お前……相変わらず荒っぽいことするなあ……っていうかよく殺さなかったな? 殺意しか感じられなかったんだが……」
「多分コイツお尋ね者でしょうしね、殺したら懸賞金が入らないじゃないですか?」
どうやら金のために殺さなかっただけらしい、しかし男が賞金首じゃなかったらどうするのだろうか?
「お兄ちゃん、さっきの男、凄く良いタイミングで出てきたと思いませんか?」
「あ、ああ……そうだな」
「ちなみにさっきの奴が出てきたところには足跡がどっさりとあります、あの辺だけ不自然に草が枯れていますよね」
そう言って男の出てきた方を指さすミント、たしかにそのあたりの草が枯れており、まるで日常的に踏み荒らしたような様だ。
「ちなみにこのフェネル草ですけど、貴重ではありますが持ち運びは難しくないんです」
「何が言いたいんだ?」
「つまるところは……ご丁寧にここに植え直してこうして呑気に薬草採集に来た奴からお金を巻き上げようという魂胆でしょうね」
「え? だって普通に売れば結構金になるだろこの薬草?」
「そうですね、つまりはコイツは手に入っても売り払うことが出来ない事情があるってわけです!」
なるほど、一番高く買い取ってくれるのは大抵ギルドだ、そこに弾かれるならまともな値段はつかないし足下を見られるだろう。ならどうやって稼ぐかという話なのだろう、ミントに見つかったのが運の尽きだ。
そうして俺たちはフェネル草と薬草を持って(ついでに男も)持って町へ帰っていった。
――
町にて……
「お二人ともお帰りなさい! 薬草は採れましたか?」
「ええ! バッチリとってきましたよ! オマケもしっかりありますからね!」
ドサドサと大量の薬草とフェネル草を取り出す。
「ええっ! これってエリクサーの素材では?」
「そうですよ、いい値段付けてくださいね!」
「鑑定の後でしっかり値は付けますが……よく見つかりましたね?」
「ええ、私の目に狂いはないですから! 後これもお願いしますね」
バタン
時間停止でストレージに入っていた男をとりだしてセシリーさんに言う。
「コイツ、私たちを襲ってきたんですけど賞金かけられてませんか?」
「ええっと……」
セシリーさんは人相書きをペラペラめくりながら見比べていく。
「ああっ! この男は賞金首ですよ! こすっからい夜盗まがいのことやってて結構な罪状があるんです! 結構な実力者ではあると噂は出ていたんですが……お二人に喧嘩を売ったのは不味かったですね……」
苦笑いしながら男は治安維隊に連行されていった。
「お二人ともありがとうございます! 助かりました! ちゃんと賞金は払いますのでご安心を!」
そう言って俺たちは結構な金額のお金をもらってそれなりに贅沢な生活が出来たのだった。




