妹は魔法少女
ピコーン
――
スキル「衣装チェンジ」を付与できるようになりました。当スキルは一日以内に無効化されます
――
珍しい、無効化前提のスキルか……しかし、ここまで役に立ちそうにないスキルも珍しいな。
俺も使う前から役に立たないスキルをもらっても困るのだが、しかも現在寝起きである、何を考えてこんなスキルを付与できるようにしたのだろうか?
そう考えながらベッドから寒い中渋々体を起こし、顔を洗う。鏡を見ながら顔に出ていないことを確認する。ミントもあれで勘がよく少しでも顔に出ているとばれてしまう。
よし! いつも通りの顔! 俺は平然としている! どこもおかしいところは無い!
チェックが終わったので部屋を出て朝食へ向かおうとドアを開けるとミントが立っていた。
落ち着け……顔には出ていない、何も問題なくごく普通の依頼をこなして一日を終えられるはずだ、一日で消えるスキルなんだから今日をしのげばそれでいい……
「お兄ちゃん! 「衣装チェンジ」ってスキル習得したんですよね? 早速使いましょう」
「へ!?!? なんでばれてんの!?!?!?」
「なんか頭の中にこのスキルを付与して貰って試用を頼むみたいな声が響いたので分かりました! というかスキル習得ってこんな感じなんですね?」
この習得方法が一般的ではないと思うが、それはさておき早速ばれてるぞ! どうする? 一日引きこもるか?
「早速試してみましょう! ほらほら、早く付与してください!」
やっぱり……コイツに新しいスキルを与えるとロクな事にならないから隠してるのに、ご丁寧に本人に告げちゃいますか……
「で、お兄ちゃん、変な格好にされると困るのでとりあえず家の中で使ってみましょう! 恥ずかしい格好もお兄ちゃんに見られるのはやぶさかではないですが、むやみに公衆にさらす趣味はないのでとりあえず家の中で!」
「その慎重さがあってなんで使わないって選択肢がないのかなあ!?」
「まあそこはアレですよ!! ノリ?」
変なところで調子に乗る俺の妹をなんとかするスキルはいつになったら授けてくれるんですかねえ……
「はぁ……変なスキルだと思うぞ?」
「家の中だけなら試してみてもよくないですか? 即死とか爆発とかは起こりそうにないですし」
それはそうなんだけどなあ……嫌な予感しかしない……
「分かったよ、後で文句は言うなよ?」
「もちろんですよ!」
――
妹に「衣装チェンジ」を付与します
――
「お、来ましたね? コレを使ってみればいいんですね? よし!」
「チェンジ・コスチューム!」
ボン
その言葉と共に煙が当たりを包みそれが晴れるとミントは……
「きゃ……ちょっと恥ずかしいですね、自宅で使って正解です」
なんというか、露出のやけに高い、紺色の水着らしきものをまとった姿が見えてきた。
「なんつーしょうもないスキルだ……」
さすがに呆れるなあ……このスキルが役に立つって一体どの場面を想像したのだろう?
「うーん……お兄ちゃん? こういうのが好きなんですか?」
「俺の好みじゃねえよ!」
声を上げて抗議するが俺の付与したスキルでそうなったのだから俺に責任があるのだろうか?
「とりあえずまともな服着てこい」
そう言ってミントを部屋へ送り返す。しかしすぐにその格好のまま出てきて言った。
「ところでお兄ちゃん?」
「なんだよ……これ以上まだ何かあるのか?」
「この服? 脱げないんですけど?」
「はい!?!?」
「ですから、スキル効果でこの服になったわけですが、どうもスキルの効果が切れるまで着替えもできないようです」
どんな発想していたらこんな不毛なスキルを与えようと思うのだろう? 天の神はずいぶんと頭がよろしくないらしい。
しかし幸いなことにこのスキルは一日限定、明日になったら元の服に戻っているはずだ。
「まあ、うん。一日限定のスキルだから今日は表に出ないってことでよくないか?」
ミントもさすがに恥ずかしいのかうなずいて「ですね」と言った。
「お兄ちゃん?」
「なんだよ?」
「こういうのそそりませんかね? 結構過激な衣装だと思うのですが?」
勘弁してくれ。
「はぁ……もうそそるって事でいいから部屋に戻ってような?」
そう言って妹を部屋に送り返そうとする、しかし俺の妹であってブラコンなのでこういう機会は見逃さないようだ。
「ほらほら、サービスですよ? おっとお兄ちゃんはもっと胸が大きい方がお好みでしたか? 小さいのが好きという方が最近増えているらしいですよ?」
「そのどこから調査したか怪しいにもほどがある統計に興味はないから」
一般的に言えばどうなのかは知らないが、露出の高い妹と一緒にいたからどうなるというのだろう?
家族相手にどうしろっていうのやら……
「お兄ちゃん! どうです? 気持ちいいでしょう?」
ミントが俺にすり寄ってくる、露出の高さも相まって過激なスキンシップだが……
ピコーン
――
スキル「衣装チェンジ」が強制除去されました、これは管理者権限によるものです
――
ポン
再びミントを煙が覆い、それが晴れてきた頃にはすっかりいつも通りのパジャマになっていた。
「あれ? なんで?」
「さあ?」
理由は分からないがとりあえず天の意志は少しくらいの理性というものを持っているらしい。
「せっかくお兄ちゃんといい感じになったのに……」
「なってないからな!?」
そう言って普段着に着替えに行くミントをぼんやりと眺めながら、先ほどまで腕にまとわりついていた柔らかな感触について考えるのだった。




