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36話 共感性羞恥

「ちょっと待ったーー!!」


声の聞こえた方を見ると剣を握り締めたポンパがいた。


「ポンパ!?どうしてお前が?」


俺達は一旦カムイから距離をとった。

カムイは俺達の居場所が把握できておらず、自分の間合いに入るまで待ちの姿勢でいるつもりらしい。無言でじっとその場に身構えていた。


「お前、捕まってたんだろう?なんでいるんだよ?」


「あぁ、ジョンの使いの者が来てね。この戦いに参加する事を条件に保釈金をはらってくれたんだよ」


「そうだったのか。お前が一番カムイに恨みがあるはずだ。この戦い、お前に譲るぜ」


「アレン……ありがとう……」


「この前まで裸で女性の周りを動いてたとは思えないわね」


多分感動的なシーンだったがミリアの一言のせいで冷めた。


「この日をどんなに夢見た事か……散々俺らの組織からみかじめ料をむしり取りやがって!払えなくなった途端に虫けらの様に殺しやがって!てめぇだけは許せぇよ!!カムイ!覚悟だ!!」


大きな声で叫び、カムイを指指して叫んだもののカムイは無反応だった。


「ポンパ、実に言いにくいんだけど、今のカムイは鼓膜が破れてて全く何も聞こえてないんだよ」


冷静なリッチーのツッコミがなんとなく見ているこっちまで悲しくなってきた。


「お、おぉ……そうだったんだ……ならしょうがないよ」



ポンパの大声にこの部屋のみんなが注目した。

ふと入口付近を見ると、どうやら兵士達は既に制圧され義軍達によってお縄についているところだった。

みんな一段落しており、少し気を抜いた感じで後処理作業をしていた。

1班もこちらに合流したらしく、黒服もこの部屋にいた。


「おぉ、あれがジョン様のご学友のポンパ様か」


「どうもあのポンパ様の密告により兵士団の不正が明るみになったらしい」


「素晴らしい勇気だ!」


「しかも自分の部下を殺された恨みを晴らすということらしい」


「なんと嘆かわしい!」


「よし!我々でポンパ様を応援するぞ!」


「ポンパ様!頑張れー!!」


「ポンパ様!不正を暴いてくれー!!」


「ポンパイェ!!」


「「「ポーンパ!ポーンパ!!」」」



義賊軍の連中が口々に噂を始め、最終的にみんなでポンパの応援を始めた。


ポンパも少し調子が出てきたようで、手拍子をしてみんなを煽る。その手拍子にみんなもつられてポンパコールがますます大きくなっていく。


「まるでいつぞやのあなたを見てるようだわ」


ミリアが俺の耳元で話しかけてくる。

忘れようと努力してきたあの魔の記憶が一気に呼び起こされた。


ギャラリーの手拍子を煽りどんどんポンパコールが早くなる。


「ポーンパ!ポーンパ!ポーンパ!ポンパ!ポンパ!ポンパポンパポンパポンパ!!イエーーーイ!!」


みんなのコールに合わせどんどん洋服を脱ぎ捨てていったあげく、ポンパは誇らしげにパンツ一枚になった。

ギャラリーのウケも良く、みんな飲み会の一発芸か何かと勘違いしているようだった。


「見てみなさいよ、あなたそっくりで嬉しそうに洋服を脱いでいるわ!」


ミリアが嬉しそうに俺の洋服をギュッと掴んでいる。恐らく自分でテンションがあがっているということに無自覚なんだろう。もう片方の指でポンパを指差しながら笑っている。

これ以上俺の記憶を蒸し返すのは止めて欲しかった。



「いいぞー!ポンパいけー!」


「やってやれーー!」


ポンパの応援がさらに増した。ポンパがギャラリーに手をふる度にギャラリーから歓声があがった。ただし全員男だ。


ポンパは剣先をカムイに向け、わざわざギャラリーに聞こえるように演技臭い喋り方で話しかけた。


「さぁ、我が七色に輝く剣の前にひれ伏すがよい!果たして日輪の光が貴様を許してくれるかな?」


なんかポンパの変なスイッチが入っちゃったようで喋り方とか言い回しが気持ち悪い。


「今の聞いたかしら?誰かさんのポエムには叶わないわね。なんせみんな笑っていないんですもの」


ミリアがダメ出しをしているがダメージを受けているのは確実に俺だった。


「ミ、ミリアさん、止めてくださいませ……」


「何を言っているの?黙ってよく見てなさい」


俺が必死に絞り出した言葉は無視され、顔を掴まれまばたきをせぬよう無理矢理指で瞼を開かれた。



「さぁ!よく見ておきなさい!あれはあなたよ!アハハハハ」


ミリアがここ最近で一番楽しそうだ。


俺の視界に映るポンパは必死に腰を振ったりケツを振ったりして嫌悪感を抱かれようと努力している。

一方カムイは血塗れで静かに息をし、敵がひたすら自分の間合いに入るのを待っていた。


王様をはじめ護衛兵達はただただ様子を見守るといった感じで、これといった感情を抱いていなさそうだ。


ギャラリーの義勇軍達は、さっきから宴会芸を見ているような気分で楽しそうに一向に攻撃しないポンパをひたすら応援している。



そう、ポンパは攻撃したくても攻撃出来ないのだ!



ポンパは嫌悪感を誰からも抱かれる事なく、むしろギャラリーから好感を持たれてしまっている。

そのせいで敵討ちをしに現れ、あれこれとやってみたものの全てお笑いと見なされてしまっている。


ただ、問題が一つあった。

ポンパがやることなすこと、全部俺にとって普段の自分を見せられているようで心が締め付けられる想いだった。

しかもその恥ずかしさをわざわざミリアが横で言葉にして解説してくるのだ。


「頼む、ポンパ。さっさと攻撃するか、無理なら帰るかカムイに斬られるかしてくれ。このままだと俺が限界を迎える……」


「何よ?逆に、あなたまだまだ限界を迎えてなかったわけ?とんだ恥知らずなのね。驚きよ」


ミリアが揚げ足をとってくる。

訂正する。もう限界だ。これまでの限界の数々が今ポンパによって一気に押し寄せてきている感じだ。

もはや恥ずかしすぎて俺はこれ以上自我を保っていられない気すらしてきた。


ええい!ポンパに任せたのが悪かった。


俺はポンパの横を素通りした。

カムイ、お前に恨みは無いがお前は賞金首。そしてポンパをこれ以上野放しにしておいたら俺が死んでしまう。カムイには早めに舞台から退場していただく事にした。


カムイまで10mをきった。カムイの射程2~3m以内に入ったらばっさり斬られそうだ。

学生時代よく、カムイの秘密の特訓に付き合ったっけな。


「カムイ。思い出すだろ?あの時のお前は頑張ってたよ」


俺は水弾を連発した。

案の定、カムイの射程に入った水弾は尽く切り裂かれた。


「ほう……これはもしやアレン殿でござるか」


「あぁ、聞こえてねーとは思うがどんどんいくぜ」


俺は水弾の威力を、数を、速度を、どんどんあげていく。少しずつ対応が遅れていくカムイを水弾が容赦なく攻撃する。


「なんだ?もうへばってんのか?たるんでんじゃねーよ!」


俺は水弾を撃ち続けた。

カムイは斬って身を守る事を止めて剣を構えたままでいる。

水弾の威力もさすがに抑えてはいるが、石をぶつけられた程度のダメージはあるはずだ。早く倒れてもらわないと骨折の1本や2本じゃ済まない。



カムイが一気に剣を振り下ろすと自分の右足を切り落とした。膝上からばっさりと切れ、大量の血が噴き出した。右手に持った剣と左足で体重を支えて立っている。早く止血しないと危険だが、切り落とした左手のように止血をする様子はない。


俺も思わず水弾を撃つ手を止めた。義賊軍のギャラリーもカムイの行動を不気味がって静まり返った。



「動きを制限したでござる。この一撃で終わらせるでござるよ」


そう言ってカムイは足の代わりに自分を支えている剣に力を込めた。




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