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見習い魔法使いが最強に至るまで  作者: 鬼仁雪姫
第7章
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87話 魔王覚醒と運命に抗う意志5



-side 勇者-



大きな爆発音が聞こえた。輝たちがいるところよりも大分距離はあったが軽い地震のように揺れ始める。揺れと共に、爆発音が聞こえたところから大きな土煙を上げた。



「何が起こっている?」



輝だけでなく誰もが状況を理解出来ず戸惑いを隠せない。すると音の正体と思しき()()は現れる。



「アハッ。沢山いるねー、殺しがいがあるよ。どうやって殺してあげようか? 一撃で殺せる位置を狙うのも良いけど少しづつ苦しめた方が楽しいって事に気づいてね。だから出来るだけ抗って苦悶の声を上げて死んでいってね。僕の為に。」



楽しそうな声でいつの間にか目の前にいた男性に誰もが驚きを隠せない。姿は最後に会った時と変わっている。全身に蔓が張ったような模様が描かれていて特等的だった長髪が今やバッサリと切り落とされている。何より特徴的なのは左の黒目に対して右が紅目であること。魔王としての主な身体的特徴であるオッドアイを持っているが、はっきりとした自我がある。その残虐性を抜きにして、にはなるが。若干声も高く、見た目を見なければ子供の声にも聞こえる。



「何故、貴方が此処に。それにその姿は?」


「んんー? 僕と会った事あったっけ? あー、ノトとしての彼と会ってるのかー。僕が分からない筈だね。確かに見た目は君たちの知ってる彼だけど、僕は彼だけど彼じゃない存在なんだ。」


「どういう、意味だ?」



丁寧な言葉遣いを無くし、戦闘態勢を整える。相手は話に夢中になって楽にしている様に見えるが全然隙がない。今攻撃を加えれば更に強力な攻撃が飛んでくるだろう。幸いにも此方が臨戦態勢を取っても態度は変わらず話を続けていた。まるで話しかけて来てくれたことが嬉しいのを隠しもしない少年のような無垢な笑顔を浮かべながら。



「そういえば近くにいた彼女が僕の事言い当てて知ってる様子だったなー。そんなに有名人なの僕?」


「桜城さん?」


「彼女の名前はよく知らないけど、僕の名前ねー、」



楽しそうに笑顔を浮かべたまま名前を言う。



「雪原 烈乃斗、それが僕の名前。後、魔王っても呼んでたね。」



次の瞬間、輝に迫っていた烈乃斗が攻撃をしていた。



「輝っ!」


「大丈夫だ、急所は外した。」


「何を勘違いしてるのー? さっきも言ったよね? 簡単に殺さないって。わざと、急所を外してあげたんだよ。」



カラカラと楽しそうに笑いながら輝が浅く切られた左腕を抑える。治癒士の千晴はすぐさま回復を掛ける。痛みが和らぎ深呼吸をする輝。



「その名前は俺達も耳にしたことがある。と言っても分かるのは日本人だけだろう。」


「うん、そうだねー。君たちはあの()()()()()()()に呼ばれたんだもんねー。僕はその女神に力を貰って転生したのさ。「貴方の優しき心で世界を救って下さい。」って僕に言ったんだよ? 面白い冗談だと思ったよ。」


「? 女神とかは知らないが、あの人は確かに........変な人だとは思うが、お前なんかとは違うっ!」


「何言ってるのかなー、言ったでしょー? 僕も彼の一部、本人に違い無いんだよー?」


「........あなたは邪悪。オーラが真っ黒。先生とは違う。」



視覚師という非戦闘職の相手の事を見るだけに特化している無口な神久夜(カグヤ)絢音(アヤネ)は口を開いた。見れる情報は相手と自分のレベル差で決まる。レベル差が近ければステータスも見ることが出来るが、何より相手の脅威度みたいなものがオーラとして視覚化することが出来る。色が濃くなるほど危険を表す。だが、相手に殺意や敵意がない場合は強くても白く視える事がある。以前、彼女はノトの事を見ているが故に違うことを知っていた。



「.........以前はそこまで黒くなかった。少し怪しい感じではあったけれど。........言動の割にという異質さがあったから記憶してた。」


「そっかー、嬉しい言葉だねー。より脅威として君たちに認識してもらうんだから僕としてはとても楽しい虐殺(戦い)が出来るんだもの。」


「......皆、気をつけてね。」



戦えない絢音は喋り終わると一番後方へと下がっていく。



「それじゃあ、楽しく残虐に殺されたい人だけ僕と戦うことを望んでねー。弱いもの虐めも一方的で楽しいことには楽しいんだけどやっぱり意志ある人形を壊した方が更に楽しめるからねー。」



楽しそうに笑い声を上げて切迫してくる烈乃斗の様々攻撃を躱し、捌き、時に傷を負い、回復を受けながら防戦一方の戦闘を強いられている。勿論相手が本気を出せば輝達は為す術なく全滅しただろう。少しづつ痛めていくのを楽しんでいるが故に長時間戦闘が可能になっている。



「ハハッ、耐えるねー。殺り甲斐があって楽しいけどね。」



腰につけている剣を使うことなく一本の短剣で烈乃斗は圧倒している。二刀流は以前ノトとして使っていたから同じ体である烈乃斗も使えない筈が無いのだが、二刀流どころか魔力も攻撃ではなく自身への強化のみになっている。戦闘方法が大きく異なるが、元々のノトの戦い方を知らない彼らにとっては知らなくて良かった情報とでも言える。先入観なく戦闘できているのは強みだった。



「........これが選択しなきゃいけない場面なのかっ。」



小声で輝は言う。輝達、いや、輝を油断している今なら不意に強力な攻撃を出すことが出来る。



「その攻撃、私の言うタイミングに合わせてくれないかな?」


























天野君がいる位置の直ぐ隣に降り立つ。咄嗟に[緑]魔法をぶっつけ本番で使って擬似的な飛行を可能にして気配遮断を解除し姿を現す。満身創痍気味の様子を見ていられなかったというのと現状を打破する準備を整え終えた。



「あれ? 生き埋めになってなかったんだね? あー、何となく彼の魔力の残滓があるねー。そっかー、僕より彼女を優先したかー。まあ、抵抗しなかったんじゃなくて出来なかったし最後の足掻きってことかなー。」


「............。」


「助けた彼女を殺してから彼の意識を呼び戻したら完全に僕はこの身体を掌握できそうだ。」



幼い印象を受けた魔王の言動は私の想定通りだった。重要な情報さえも喋ってしまうのだから。完全な意味で身体を動かせている訳でもないし、ノトさんの意識がまだ奥底にはしっかりと残っている事を証明した。



「桜城さん、何か策があるっていう事で良いのかな?」


「何も無く、ノコノコと姿を現す程考え無しじゃない。天野君たちの戦闘を近くで見ても加勢しなかったっていう事実を突き付けたら信じてくれるかな?」


「段々と似てくるどころかそっくりになってきてるけど、百合奈。」


「今は目の前に集中。天野君悪いけど出し惜しみせず解放して貰っていい? 奥の手はそれじゃあ無いんだからさ。」



そう言って余裕そうな表情のまま私たちの作戦会議を待っていた魔王に対して天野君に伝言を伝えてから突っ込んでいく。



「君は遠距離の攻撃が得意なはずだけど接近戦を挑むの? 僕の方が得意だけどっ。」


「少し凌ぐだけならお前の生温い攻撃方法を防ぐのに造作もないから。」


「へー、君って意外に生意気言うんだねー。良いよ、少し本気を出してあげる。」



私は杖をしまい腰に刺していた短剣を取り出す。相手の得物が短い以上此方も小回りがきいた方が戦いやすい。しかもこの短剣にはノトさん特製の付与が付けられた特別な短剣。自分の未熟な剣術はこの付与された術式によって補われる。



「戦いにくいなあ。」


「そうですかっ。」



わざと煽り、本気を出させた。そうなると必然的に急所を狙う攻撃が増えてくる。勿論急所を外して攻撃してくる事もあるが、かすり傷であれば自分の[白]魔法で回復できる。急所を狙った攻撃に関しては『未来予知』と短剣の危機察知により上手く捌ける。頭も体も使うこの戦闘は互角に見えて私が押されている。私には余裕がないからだ。それも当たり前のはずで一応身体は師である彼の物。私はノトさんに1回もまともに攻撃を与えられた事が無い。



「大きな口を叩く割にはさほどだねー。ちょっとガッカリしちゃったー。」


「フフッ。」


「何がおかしいの?」


「私は一人で戦ってる訳じゃないってことに吃驚してるだけ。」



そういつだってこちらの世界で戦闘している時は一人じゃなかった。今も一緒に戦闘している人が敵として立ちはだかっているが後ろには同郷者たちがいる。



「『邪悪を討ち滅ぼし、彼の魂を浄化せよ、聖華』っ!」



後ろに控えてもらっていた勇者である天野君の声が聞こえてくる。



「『天翔ける閃きの刃、天翔閃』っ!!!」



私が直前まで引き付け天野君には同郷者から掛けられるだけのバフを掛けてもらい、聖剣も本来の力を出してもらい、最大限の攻撃を当ててもらうのに専念してもらった。私は避けられないように足元を凍らした。突然の事で反応出来ず、魔王はその攻撃を剣でガードしようとしたが短剣は簡単に折れる。



「なっ!?」


「壊れるよう攻撃したから。」


「はああああああああああ!!!」



天野君の渾身の一撃が確実に捉えた。物凄い閃光によって目を塞ぎながらも察知を鋭敏にさせ最後まで気を抜かずにいる。魔力が揺らぐのを感じて思わず懇願するように叫ぶ。



「っ! 反応してっ!」



杖を再び取り出し、魔力を拡散させる。



「『真の姿を現せ、魔剣《鴉羽》』っ! 『()()()()》』っ!!」









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