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見習い魔法使いが最強に至るまで  作者: 鬼仁雪姫
第1章
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10話 修行初日と魔力


 昨日帰宅してから購入したものを片付けその後「少しだけ。」と思って本を手に取ると、ついつい熱中して夜更かししそうになったのを慌てて自制して眠りにつき、朝早く目覚めた私はベッドから出る。元の世界では自分で弁当を作ったりしていたので、まだ寝ているきょうだいを起こさない様に気を使っていたが多分キッチンと師匠の部屋は離れているので物音を立てていても気付かなそうというか気付かないと言っていた筈なので、気にせず音を立てながら朝御飯の下準備をする。


 今日早く起きてしまったのはいよいよ修行を開始するという事で緊張から、でも楽しみでもある。だけど今は兎に角何かしていないと落ち着かない。


 下準備を終えて部屋に戻ってどうやって過ごすかを思い返しつつ、メモを取り出して一日の過ごし方(一日の修行スケジュールと題名を書いた紙)を見返して自習みたいなものだったというのを確認し自分が好きな読書を出来るのを考えて、本番は午後からだと思い少し落ち着く事が出来た。



「えっと確か今日だけは読む本は指定されてたっけか?」



 昨日夕飯後に私の勉強用の為の大量の本を渡してきてその中の一冊だけ手に取って「明日は此れにも目を通しておいてくれ。」と言われていた為分かる様に机の上に置いていた本を手に取って改めて本の表紙を見る。



「昨日も思ったけどタイトルが無いんだよね。間違って渡された? とかなのかなぁ。」



 本の厚さは長すぎず短すぎず位なのだがこれをどう読むのだろう。最初の修行が読書なのはどうかと思った以上にチョイスが一番分からない。というかこれ読めるのかな。昨日は特に気にせず中に目を通さなかった。聞こうと思ったら師匠はそそくさと部屋に籠ってしまいその後一切出てこなかったし。なので朝聞こうかと思ったものの師匠は起きてこないし起こすのも禁止されてるし、一度読んでみるのが良いのだろう。と結論付けて私は本とメモ帳とペンを持ってリビングに向かった。


 下準備は終わってるので朝ご飯を食べてからと考えたが、特に朝に限って言うとご飯を食べる前って意外に集中できる時間だったりするのでよく勉強したりしていた。という事で物音が一切しない静かな環境でまったりしながら少し本を読む事にした。そしてページを開いた所で私の手が止まった。思考も動きも停止してしまった。



「えっ!? なにこれ。」



 修行の時間になったら読めばいいと思っていた為昨日預かってから本を開いていなかったのだがタイトルが無い時点で気付くべき、否開くべきだったのだが軽く確認した時に師匠に「これ?」と聞き返した私に対して「それ。」と言われてしまったので間違いは無いのだろうけど読むどころか、



「何も書いてないじゃん!!」



 一ページ目だけ何も書かれていないのかと思っていたがパラパラと後ろのページまでめくってみるけど全て白紙だった。初日は此れで何をしろと言うのだ。最初の緊張は何処へやら呆れてしまって今では何も声を出せないでいる。


 でもこの本を読むように言われたからには読まなくてはいけないのだが。そもそも読むべき文字が無いしどうしようもない。



「……うーん。取り敢えず放置で。ご飯でも作ろうかな。」



 現実逃避。分からない時は此れが一番。後は昨日みたいに師匠が起きてくるパターンに賭けるしか無い。でも今のどうしようもない気分を少し晴らす事は出来るだろうし少し悩んでいる間に少しお腹が空いて来たし丁度良い筈。そう思い立ち上がって料理し始める。



 ................。



 結果から言うと賭けには負けました。師匠は起きてくる様子は無かったしその上料理中にも白紙の本の事が頭から離れず現実逃避も出来なかった。お腹は満たされたけど。


 今は食べ終わって片付けも済んでしまったのでリビングに座って机の上に置いてある本に向き合って唸っていた。どうしようも無いし(後から考えたら別の本を読んでしまえば良かった)白紙の本をぱらぱらと捲りながら呆然と見続けていた。


 段々と時間が経って行く内につれ悩ませ過ぎた頭がオーバーヒートしていつの間にか机に突っ伏していた。それどころか、いつの間にか寝ていた様で師匠に肩を叩かれて名前を呼ばれながら起こされてあまり覚醒していない頭で状況が把握できず吃驚した。



「え、え。何で師匠が起きて……?」


「え、いや、何でって。今何時だと思ってんだ。流石に俺も起きるだろう。ああ、寝てたし時間分からなくてもしょうがないか。もう午後になるし修行始めなきゃだろう?」


「え、あ。」



 師匠はそう声を掛けつつ欠伸をしながら何かに気付いたかの様に一回部屋に戻っていった。私は未だボーっとしていた頭をスッキリさせるのに伸びをして外の様子を見ると窓から差し込んでいた光から昼間を指している事に気付く。


 思ったより長く寝過ぎていた様でこの状況に少し固まってしまっていて急に正午近くになっていた事に午後のやる事を思い出し緊張してきた。結局本の謎は解けないままになってしまった。読む様に言われていたのだが読めず仕舞になってしまったが大丈夫なのだろうか。


 若干戦慄しながらいると師匠が部屋から戻ってきた。一回部屋に戻ったのに何も変わっていない様子に疑問を持ちつつ聞く前に話し掛けられた為聞きそびれてしまった。



「取り敢えず午前中の状況を聞いておこうとは思ってる、が、さっきの様子だと進んで無さそうだな。」


「うっ。確かにこの本を見て困ってしまって何も進んでいない……です。」


「まあ状況から推測できた事だけど此れに拘り過ぎだ。」


「え? だって昨日師匠がこの本読むように言っていませんでした?」


「確かに言ったけど。俺はこの本()読むように、っていた筈なんだが。」


「………。」


「別に初日だしそこまで言う気は無いんだけどさ。まあ昼にしてから午後のを始めるか。」


「じ、じゃあ昼作りますねー。」



 面白がってニヤニヤ顔をしている師匠をちょっと睨んでからそそくさとその場を後にしてキッチンに向かう。何かちょっと前に片付けをしたばっかりな気がするけど寝ていたせいで若干時間の感覚が変な風に感じるだけかな。


 そして準備を終え昼を食べ始めると午後に何をするかを説明された。



「午後は実践的な感じになるけどそんなに緊張しなくて良いからな。寧ろ余計な力入るからリラックスで。まあ最初は難しいだろうしちょっと位、緊張するのも仕方無いか。で、服は正装で杖を準備だな。それを持って昨日行ったあの広場で修行していく。何せ初めての事で、初日だし実際に魔力を見て貰ったり感じてもらうという所か。それが出来れば魔力を実際に操作してもらう感じだな。まあ実践じゃこれ位しかやる事無いし魔力が操作できれば魔法なんてちょちょいのちょいで使える様になるし。という事で片付け終わって着替えとか終わったら外に出ていてくれ。俺もちょっと準備しなきゃだしお互い準備が整ったら修行の開始だ。」



 昼を過ごし諸々の準備を終えて外に出ると既に師匠は外にいた。すると師匠が空を見上げていた。話し掛けようと思った時に師匠の表情を見て思わず止まってしまった。凄く寂しそうな悲しそうなそんな表情だった。面倒臭いって言っている時の表情含め今まで見た事無いような表情だった為私は話しかける事が出来ず未だ開けっ放しにしていた玄関の戸を閉めると師匠は此方に気付き先程の表情が嘘のように引き悪戯っぽい笑みを見せた。



「準備済んだみたいだな。行くぞー。」



 いよいよ実践の開始。さっきの師匠の表情が気になる所だが午前中無駄にした分取り返さないと。歩き始めた師匠を追随する。







 さて、此処からは面倒臭いとは言っていられないな。実際は内心文句を垂れているがそれを出さない様にしてサクサクと草を踏む音を聞きながら広場に向かう。


 まあそんなに大変な事では無いけど早めに習得してくれると負担が減ってくれるからユリナが早めに出来てくれる事を祈る。俺の見立てではそんなに時間が掛からないとは思うのだが。どっちにせよ早めには仕上げておきたい。


 広場に着いてもそのまま中心の方へ歩いて行ってそこで漸く止まって此れからする事を話していく。



「そんじゃやるかー。先ずは魔力を見る所からだと分かりやすいかー?」


「私は何をすれば良いですか。」


「いや、特に無いな。座って俺の様子を見ているだけで良い。」


「はい。」



 ユリナが座ったのを見て俺は少し離れて立ち止まる。まさか座って良いと言って正座するとは予想外だったが。


 最近人に見せる様に魔法を殆ど発動していなかったし上手くいくだろうか。


 俺は深呼吸してから集中する為目を閉じる。体に纏わせる様にして[緑]魔法である風を発動させながら更に純度を高めて暴風一歩手前まで強めた所で緩くしていく。久し振りに結構な強力に魔法を使ったので結構しんどい。まあこれ位で疲労感を出す訳にもいかず目を開けて息をゆっくり吐き出す。



「ふう。まあこんな所だが見えたか? 見えていたらどんな感じだったか言ってみてくれ。」


「えっと、[緑]の風魔法ですよね? 最初は微風に見えましたけど凄く強くなっていきましたよね、強風位? 体に纏うようにして風が渦巻いてました。竜巻とはちょっと違う様な気がしますけど。風の球体みたいな感じかなぁ。その後は段々と収まってきて何も見えなくなりました。若干緑色のキラキラした光も見えた感じがしましたけど、合ってますか?」


「おう、合ってるぞ。光まで見えてたんなら魔法を扱う素質が十分に在りって所だ。……俺の手間が減りそうで何よりだよ。」


「え? 最後何か言いましたか。」



 俺の気持ちが言葉に出ていた様だ。聞こえて無い感じなので良かったが聞かれてたらあきられていただろう。今後はもう少し気を付けないといけないな。


 見えていたなら次のステップにいけそうだ。コントロールするためには魔力とはどういう物かを実際に体で感じてもらう必要がある。例え他にも方法が有るとしても手っ取り早いのは此れだから何といわれても俺は他の方法を取るつもりは無いが。というより一番効率良い方法だと思う。俺の負担も少ないし。座学とか無駄だと思う、正直。



「気にすんな、俺の独り言だ。んじゃ次はユリナにも魔力を感じてもらおうか。」


「えっと、」


「取り敢えず俺と向かい合う様に立ってくれ。」


「こうで良いですか。」



 ちょいちょいと手招きして立ってもらう。そして、俺の目の前に立ってもらうと少々緊張している様にも見えたので肩の力を抜いてもらうか。


 俺は苦笑しながら声を掛けた。



「ユリナ、緊張し過ぎだ。そんなに強張らなくても大丈夫だぞ。」


「は、はい。でもどうしても緊張はしちゃいます。」


「まあ、大きな支障は無いんだが緊張で分からなかったとか言われたらやる意味が無くなるから少し落ち着いて貰おうか。」


「? どうするんです?」


「じゃあ俺が今から言う通りにしてくれ。此処からは一言も話すな。分ったら頷くか行動してもらうかだ。」



 未だに緊張した面持ちではあるが一応頷いたのを見て俺は指示を出していく。



「先ずは目を閉じる。それでゆっくり深呼吸する。……ただ深呼吸を繰り返せ。何も考えない様にするんだ。」



 緊張しているとか言いつつも俺の言ったとおりに深呼吸をしていると段々と落ち着いてきてるのか表情や雰囲気が柔らかくなった。まあ、完全に緊張を解くことが出来なくてもここまで落ち着けば初めても大丈夫そうだ。



「それじゃあ両手を前の方に出してくれ。……少し手触るぞ。」



 ユリナが手を出した後、俺はその手を握った。一応触る事は言ったが少々体をびくっとさせたが直ぐに落ち着いたみたいなので早速魔力を練る。


 練った魔力を、右手から左手を循環させるかの如く全身に巡る様に流し続ける。最初はゆっくりと段々とその流れを早くしていく。


 そして時間にして1分位だろうか。ユリナが慣れてきたのを見計らって目を開けるよう指示を出す。



「ユリナ、このまま目を開けて感じるだけでなく視てみるんだ。」



 目を開けたユリナの様子を見るにきちんと流れが見えているのが分かる目の動きをしていた。きちんと俺の魔力だけで無く自分に流れてくる魔力まできちんと見えている様なので魔力を流すのを止めても大丈夫そうだ。最初だしこれ以上は疲労感が残るかもしれないし。


 早くした魔力の流れを段々と緩くして止める。そして握っていた手を放してもう一度座る様促す。



「今ので大分疲労はあるだろうから座って、ゆっくりしてくれ。ああ、もう喋っても大丈夫だぞー。」



 正直俺も久し振りに魔力を人へ流す為の操作したをしたので、心配ではあったが上手くいった。思ったよりどっと疲れてしまって俺はユリナに声を掛けて座る。ユリナもそんな俺の様子を見て座った。今度は体育座りで。



「は~。凄かったです。自分の力じゃないみたいで。私もさっきの出来る様になりますか。」


「出来るか出来ないかで言ったら出来るぞ。まあここまでが導入。これからが本番だ。魔力の操作、まあ纏う感じでも循環させる感じでも兎に角色んな所に魔力を持っていける様にする。最初は手とかだとイメージしやすいか? まあ直ぐに出来るかは分からないな。成長度合いに関しては一概に言えるものでも無いし。まあ見たりするのにも数年や数十年かける人もいるのが多かったりしたし早い方ではあると思うぞ。」


「へえ。何だか嬉しいです。……ん?多かったりした?」


「え、あー気にすんな。特に意味は無い。」



 無意識に過去形になっていた様だ。深い意味は無いので流して欲しい。ちらっと彼女の顔を見ると此方をじっと見て「分かりました。」と答えてくれた。追及されず俺は安心した。何せ今は答えようの無い事だからな。



「暫く休憩したら今度はさっき感じた魔力を自分で操作する。循環させたし刺激は与えたから自分の中に魔力を感じられる筈だ………フフッ、何より早くやりたそうにしている様に見えるぞ。だが休憩も大事だからもう少しゆっくりしろ。」



 さっきので疲れていた筈だが実際に魔力を感じた事や操作できるようになることがそんなに楽しみなのか。まあ分からないでも無いけど。


 此処までやる気だと俺がずっと休んでいる訳にはいかないじゃないか。とはいえ、無理もいけないのでゆっくりする様言うと文句を言いたい顔をしていた。


 それでは最も大変で難所である魔力操作の本番に移るとしよう。





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