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『モテ男が欲しい女たち――略奪したら駄目ですか?』  作者: 蒼


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7/7

追記――エリーゼのために

グスン、グスン。

エリーゼは薬草畑の前で泣いていた。


「私の薬草が……」

薬師科の学生には、それぞれ畑が振り分けられている。

「毎日、毎日……一生懸命育てたのに」


薬師科の学生は、この畑をとても大切にしていた。

育て方で効能も変わるため、薬師独自の栽培方法も研究していた。


「ねぇ、聞いて、クラリス。私の薬草畑が荒らされたの。毎日、毎日世話していた畑が」

クラリスに相談した。


心配はしてくれたけど、植え替えの手伝いは習い事があるから……と素っ気なく断られた。


少しだけ、クラリスなら手伝ってくれるかもと期待していた。


放課後、エリーゼは泣きながら薬草の植え替えをした。

中には、まだ生きている薬草も僅かにあった。

ただ、そのほとんどが折られ、踏みつけられていた。


土にポタポタと涙が落ちる。

「うぅ……もう嫌だよ。つらいよ。誰か助けてよ」

つい最近は、教科書をビリビリに破かれたばかり。


今まで、なくなっていたと思っていた物も、いじめられていたからだと知り、エリーゼは傷ついていた。


「これは……酷いな」


顔を上げると、そこには薬師科の学生がいた。

確か、一つ上の学年の先輩だったと思う。


「確か、エリーゼ嬢だったよね?」

「僕も手伝うよ」

そう言うと、シャツのボタンを外し、腕をまくってスコップで掘りだした。


固くなった土を耕していく。

「うぅ……ありがとうございます」


土と涙でドロドロになった顔で、エリーゼは笑顔でお礼を言う。

二人はせっせ、せっせと、夕方が訪れるまで薬草畑で作業した。


❖❖❖❖


それからというもの、すれ違えば挨拶する関係になった。


段々と綺麗になるエリーゼを、薬師科の男子はチラチラ見る。

しかし、恋愛偏差値が激低の彼らにとって、エリーゼは高嶺の花だった。


その上、毎日、毎日、教室を覗くフェリクスに勝てる気もしなかった。


そして、あの日の断罪劇だ。


離れた薬師科にも、その情報が流れてきた。


聞き逃さなかったのは、エリク。

畑を手伝った男子学生である。


彼は、あのドロドロな顔で笑うエリーゼの顔が忘れられなかった。 


ただ、フェリクスに勝てる気がせず、諦めようと日々戦っていた。

すれ違うたびに心が動き、忘れることができなかった。


今だ。

彼は、すぐに行動へ移した。


「エリーゼ嬢、あなたが好きです。是非、婚約者になってください」


一度は諦めた身。

振られるのは怖くなかった。


「私も、エリク様の婚約者になりたいです……」


クラリス嬢がフェリクス様と付き合うようになり、昼食も一人で食べることが増え、心細くなっていた。


エリクは、エリーゼがつらい思いをしないようにと、せっせ、せっせと弁当を準備し、薬草畑の前のベンチで仲良くランチするのが日課になった。


そして、毎日のように。


「愛してる」

「大好き」

「いつもありがとう」


と言葉を浴びせ続けた。


エリーゼの心が、自分へ向くように。


そして――。

あの日、一緒に植えた薬草の種から、芽が出ていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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