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何ともなしに呟いたクリスの言葉に私はギョッとして顔を上げた。
「嘘でしょ!? 私、命狙われてんの!?」
「いや、知らねぇけど、他国からすりゃ高位妖精が居るってだけで羨ましい話だからな」
「そういや前から聞きたかったんだけど、あんた達ってパートナーを一生変える事出来ないんでしょ? それって離れて暮らすって設定になっても別に良い訳?」
「大丈夫だろ、別に。パートナーだからって一生そばに居ないといけないって決まりは聞いたことないし、実際パートナーじゃない奴と子供作った奴だっているし。名前とパートナーは変えられないってだけでさ」
「そうなの? でもそれじゃあ、あんた自由なんじゃん。それ分かってて居直り強盗みたいな真似したの?」
「聞こえ悪いな。大体人間界が久しぶりなのに名前だけつけられて放り出されたって困るじゃん。だけどヒマリが相当ヤバそうな奴だったら僕は名前だけ貰ってすぐさまトンズラしてたけどな!」
そう言って歯を見せて笑うクリスの憎たらしい事と言ったら! 私は肘をついて昨日焼いたクッキーを齧りながら言う。
「なるほどね~。他に何か縛りみたいなのないの?」
「縛り? そうだなぁ。あ! 国も変えられない。ヒマリがどっか他所の国に動かない限りは」
「そうなんだ。そういう所はパートナー依存なんだ。他には?」
「他~? う~ん……ああ、大きい魔法を使う時はお前の許可がいるな」
「ふぅん。大きい魔法も自由じゃないんだ。地味に厄介だね、パートナー制度」
「だろ? だから僕たちはいつだって戦々恐々としながら人間界に来るんだよ。ガチで運だからな、パートナーは」
「それってさ、絶対来なきゃダメなの? 別に魔導書引かなきゃいいんじゃないの?」
「そうはいかない。女王から連絡が回ってくんだよ。それは強制だからさ」
「女王? 妖精の女王って事? なんか学校の当番みたいだね。で、今回はクリスがその当番だった、と。え、待って。高位妖精ってもしかして本当に数少ないの?」
クリスの言葉に驚いた私が言うと、クリスはコクリと頷いた。
「少ないよ。僕含めて7人しか居ない」
「7人!? ちょ、それ結構な頻度で当番回ってくるね!?」
「どうだろな。皆が休みの周期もあるから何とも言えねぇけど。実際僕なんて今まで人間界に降りてきたのは2回だけだしな。ひっさしぶりに人間界に来たと思ったらパートナーが社畜だった訳なんだけど」
「えー、それは何かごめんね。もっと可愛いお嬢様とかの所なら良かったのにね」
「それは今更言っても仕方ねぇな。それに下手に良い家になっても悲惨なんだぞ。僕の兄はいつだったか公爵家の娘のパートナーになったんだけどさ、無理やりその子と結婚させられそうになって逃げ回って、結局その娘に死ぬまでずーっと追いかけ回されてそりゃもう荒れ狂って帰ってきたからな」
そう言って何かを思い出したかのようにクリスが声を出して笑った。
「うわ~ひさ~ん。パートナーがストーカー化とか笑えなぁい。お兄さんかわいそ。大丈夫だったの?」
「ぜんっぜん大丈夫。だって僕たち高位妖精だから。僕たちの権利は例え王でも侵害は出来ないからな」
「高位妖精の権力凄すぎない?」
「だから何回も言うけど! 僕たちは超がつくほど貴重で凄いの! ヒマリぐらいだよ、僕の事こ~んなに雑くあしらうの!」
「はいはい、ごめんなさいね、雑くって。まぁでも何となく高位妖精のシステムが分かったわ。しっかし現存する高位妖精たったの7人か~。そりゃ取り合いになるわね。で、今人間界に降りてきてんのは?」
「僕だけ。そもそも高位妖精が被って降りてくる事なんてねぇから。でも今回は異例中の異例だぞ。前回高位妖精が降りた時からさほど時間も経ってないんだから」
クリスはそんな事を言って不思議そうに首を傾げている。
「そうなの?」
「そうなの」
「大変なんだね、あんた達も。なるほど、だからこんなに貴重がられてんのか。でもあんた達が定期的に人間界に降りて来ないといけない理由ってなんな訳?」
そこが一番の謎だ。わざわざクリス達が人間界に降りてくるのには、きっと何かしらの理由があるのだろう。
案の定私の質問にクリスは眉をしかめて難しい顔をする。
「何かがある時だな。僕たちの力が必要な時に僕たちは人間界に呼ばれる。前回はトワも参加した魔王討伐の時だった。ちなみにその時高位妖精が降りたのは隣国だったんだけど、あれからまだ数年しか経ってないのにもう僕の順番が回ってきたんだ。今度は一体何が起こるんだろうな」
「なにそれ、やーね。もしかしてあんた達が原因なんじゃないの?」
私の言葉にクリスの羽根がビリビリと震えた。
「そ、それはお前、もしかして厄災の原因は僕たちにあるって事か!? もうお前には本っ当に色々びっくりするわ!」




