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「ちょっとあんた達ねぇ! まぁいいや。とにかくこれ以上ややこしい事になんないように気をつけてたらいいんじゃない?」

「そうですね。それしかないですよね。まぁ幸いな事に城でクリスに会うこともありませんしね」

「だな。僕はヒマリのお世話で精一杯だからな。城に出向いてる暇なんかねぇんだよ。てか、お前いつの間に僕の事呼び捨てにしてんだよ」

「あなただって俺の事呼び捨てじゃないですか。敬語使っているだけマシでしょ」

「いやお前な、僕高位妖精なんだよ、こう見えても。敬えとまでは言わねぇよ。でもさ、もうちょっと何か無い訳?」

「無いですね。まだ尊敬出来そうな所も残念ですが見つかってませんから」

「こ、こいつヒマリぐらい腹立つな!」


 羽根を震わせてそんな事を言うクリスにトワが鼻で笑う。そんな二人を見て私は思わず呟いた。


「あんた達ってさ、何だかんだ言いながら地味に仲いいよね?」


 それを聞いてトワとクリスは二人して机に乗り上げてきて同時に言う。


「絶対に無いから!」


 と。やっぱりこの二人、仲が良い。



 二回目の号外が出たのは聖女がやってきてから半月後の事だった。


「ヒ、ヒ、ヒマリ! 大変だ! おい、大変だぞ!」


 そう言って部屋にノックも無しに飛び込んできたクリスは、やっと腰痛が治まってきたので部屋で軽作業をしていた私の肩をこれでもかと揺さぶった。


「い、痛い! 腰!」

「あ、ああ、悪い。いや、お前の腰どころの話じゃないんだよ! これ! 号外!」


 クリスは痛さのあまりに腰を抑えた私を見て一瞬申し訳無さそうな顔をしたものの、すぐに思い出したかのように一枚の新聞を私の前に突きつけてきた。


「また号外? 今度はなんな……のぉぉ!?」

「聞いてない! 僕たち何にも聞いてないよな!?」

「聞いてないわよ! 誰よ、こんなふざけた事ぬかしてんのは——って王様かぁ……」


 ルチルは毎度毎度ここへやって来ては王の愚痴を喋り倒して帰って行く訳だが、今回ばかりは私も思わず王の愚痴を言いそうになる。


「王様だろうが神様だろうが、僕は絶対に行かないからな! ヒマリ、今すぐ隣町に引っ越そうぜ」

「いや、そりゃそうしたいのは山々だけど、隣町に逃げた所であそこもエトワールだもん。意味ないよ」

「じゃ、隣の国行こう! 何だって僕がトワの屋敷に移らなきゃなんないんだよ!」

「ねぇちょっとこれ見てよ。言い出しっぺ聖女さまだよ」


 そう言って私が号外の一文を指差すと、クリスが隣から覗き込んできて青ざめた。


「マジじゃん! あの男色の話聞いたからか、僕には聖女がそういうつもりで言ったとしか思えないんだけど」

「私もそう思う。ていうかこれ、私の事ボロカスすぎない? 会ったこともないのに」


 クリスが持ち帰った号外を読むと、そこにはクリスを名付けた私の事がまるでどこかで見ていたかのようにボロカスに書かれていた。


 しかし内容は概ね当たっているような当たっていないような感じなので複雑である。


「なになに? かの偉大な高位妖精の名付け役は高位妖精を自己のために使役するとんでもない悪党だ。しかし高位妖精は妖精界の理を破ることは出来ず、今もなお日々虐げられて暮らしている、って、お前じゃん。まんまお前の事じゃん」

「いやそうかもだけど! 何かこんな書き方されたら私すんごい酷いことしてるみたいじゃん! 日々使役するったって買い物と草むしりよ? それをこんな書き方する!?」


 内容だけ読めばさも悪党かのように書かれているが、私がクリスに頼んでいる事と言えばはっきり言って子供に頼むような事ばかりである。と、私は思っている。


 それを聞いてクリスも苦笑いを浮かべて言った。


「まぁ誤解は招くよな。で、この記事だと虐げられた僕を救うのはトワしか居ないって事になってんのが何とも……」

「ていうかあんた達が聖女の事怖がってた理由がやっと分かったわ。まるで見てきたかのように話すんだね、この人」


 記事の最後には聖女が直々にインタビューに答えた記事が載っていた。


 そこには、はっきりと私の事を守銭奴で傍若無人だと書いてあるのだが、ほぼ当たっているという自覚があるだけに怖い。


「いや、これはニュアンスが違うっていうか、お前の事を知ってる奴らはこの記事見て噴いてると思うぞ?」

「そうかなぁ」


 見たこともない人からの突然の誹謗中傷にしょんぼりしていると、そんな私を慰めるようにクリスが声を出して笑う。


「まぁ文章にしたらお前は確かに守銭奴で傍若無人で自己中で社畜だけど」

「最後の2つはあんたの感想よね?」

「まぁ聞けよ。文字にすりゃ酷い女だけど、お前のこと知ってる奴らはこんな風に思ってねぇよって話。ああ~ヒマリはな~って笑い話だろ」

「……それもどうなの」

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