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「え!? ちょ、お前! 魔王も知らないのかよ!?」

「知らないわよ! いや、魔王ってのは分かるわよ? でもこの世界には魔王まで居るの!?」

「もちろん。もう討伐したけどヒマリの居た世界とこことでは随分違うんだね。聖女もそう言えばよく分からない事を言ってましたよ」

「へぇ? なんて言ってた? 私、聖女じゃなくて実は魔女なんです! とか言ってなかったか?」


 クリスがからかうように言うと、トワは真顔で首を振って何かを思い出すようにチラリとクリスの顔を見る。


「なんだよ?」

「あなたからの手紙を持って来た時に『やっぱりあの解釈は間違ってなかったんだ! 公式ではトワには婚約者が居るって事になってたけど、裏設定ではやっぱりクリスとトワは出来てるのかも……クリスを救うのもトワだし……ああ、でもトワは駄目よ! どうしよう! 夢女と腐女子な私が引き裂かれそう!』とか何とか……」

「……どういう意味だ? てか、後半は何かの呪文か?」

「さっぱり分からないでしょう? でも聖女はそう言ったんですよ」


 その言葉に私はハッとした。


「夢女……は分かんないけど、腐女子は知ってるわよ」

「え!? どういう意味なんですか!?」

「えっとね、創作物に出てくる男子と男子の恋愛を応援する人たちの事って言えばいいのかな。まぁ、あんまり私はそこらへん明るくないんだけどさ」


 興味のあることは大抵手を付けてきた私だが、生憎ゲームや漫画、本などには全く感心が無かった。ドラマはかろうじてハブられないように見ていたが、個人的に進んで見たことすらない。


 そんな私の言葉にトワとクリスが愕然とした顔をして私を見つめてきた。


「だ、男子と男子の恋愛……ですか」

「それはいわゆる男色……ってやつか?」


 二人の質問に私はコクリと無言で頷く。多分それで概ね合っているはずだ。

 頷いた私を見て二人は互いに顔を見合わせて青ざめた。


「ないないない! 絶対無い! たとえ僕が本当にそうだったとしてもトワだけは無い!」

「俺も無いですよ! 確かに戦地では未だにそういう習慣はあるけど!」

「衆道! 噂には聞いてたけど戦場ではやっぱあるんだ? あー、でもトワは確かにそういうの誘われそう」


 綺麗な顔してるもんねぇ、と付け足すと、トワは真っ青を通り越して真っ白になって言い返してくる。


「無いってば! いや、確かにヒマリの言う通り誘われる事はありました。でも俺は男女関係なくそういうのが苦手なんですよ! だからこの地位にまで上り詰めたんだから!」

「マジかよ! 誘われないようにするために? 騎士団長になったって? そんだけの理由で!? ウケる!」


 そう言ってお腹を抱えて笑うクリスを睨みつけてトワは真顔でこちらに向き直った。


「ヒマリ、信じてください。俺は、今までたったの一度もそういう経験は無いので」

「うん、別に疑ってないよ。まぁ世の中にはそういう事自体したくないって人も沢山いるもんね。トワはあれか、草食系男子か!」


 別に他人の色恋沙汰になど全く興味のない私だ。なにせ人の心配よりも自分の心配をしなければならないのだから。


「あ、いや別にそういう事がしたくない訳ではなくて……って、何言ってんだ、俺」


 耳まで真っ赤にして必死に取り繕っていたトワは、とうとう両手で顔を覆ってしまった。最初の印象から比べると随分表情豊かになったものだ。


「止めとけよ。下手に言い訳したらどんどん泥沼に足突っ込むぞ」

「言い訳じゃないですってば!」

「まぁまぁ二人共。とりあえず聖女様はあんた達がデキてるって思ってる訳だ」

「どんな思い込みだよ。ていうかその他のセリフも気になるな。公式とか裏設定ってなんだ?」

「さあ? 俺が聞く間もなく一人で喋ってたので何とも」


 そう言ってトワは何かを思い出したかのようにため息を落とした。その顔にはデカデカと、うんざりだ、と書かれている。


「災難だったわね、二人共。何か変な誤解されてるみたいだし早めに解いておいた方がいいんじゃないの?」


 私の問いにトワは大きなため息を落とす。


「あまり話したくないんですけどね。聖女に限らずやっぱり女性は苦手です」

「ふぅ~ん。そっかぁ~その割にはヒマリとは平気で喋るよね~。あ! もしかしてヒマリの事を女だと思ってないのかも~?」


 トワのセリフにクリスがテーブルに頬杖をついてまたOLみたいな話し方をすると、トワはハッとした顔をして私を見るなり早口で言う。


「ち、違います! 違うからね!? ヒマリは裏表は激しいし人使いは荒いしお金に目がないけど十分魅力的な女性だから! 俺が唯一何も気にしないで話せる貴重な女性だから!」

「それ、大半が私の悪口じゃない?」

「え!? いや、でもヒマリってそういう所ある……でしょ?」

「あるな。むしろそういうとこばっかだな」

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