第5話 前半戦ハイライト&初めての魔道具
「疲れたー、マジ疲れたわー。
こんなに疲れたのは深夜28時45分の初電に乗って以来だわー。
あまりに疲れたから地獄のミサ○みたいな口調になっちゃうわー。」
前半5人が終わったところで机の上に突っ伏した。
それでは前半戦のハイライトをお送りしたいと思います。
まず1回2回と切り抜けた私だったが3回、スキンヘッドの男から流せない質問が来た。
「失礼ですがお歳は?」
私は前かがみで上目づかいをしながら、襟を広げ胸元ちらり作戦を決行しながら
「いくつに見えます?」
と逆質問。
すると相手は、
「伯爵夫人様と聞いたから20歳くらいかと思ったが、12,3歳かな。」
と答えてきたので机をバンバン叩いて抗議した。
そうすると
「じゃあいくつなんだ?」
と更問がきたので、
「12ちゃい」
と答えると相手は頭を抱えた。
そんなこんなで3回を切り抜けた私を待っていたのは女性の尋問者だった。
後ろは肩にかからない程度、前は眉にかからない程度にそろえたおかっぱの人。
身長は私より頭一つ高い。
そんな彼女は私を見つけると右手をつかんで外に走りだそうとしたが、そこは副団長に止められた。
「女性の尋問はベットの上でします!」
それが彼女の流儀だそうだが、私が外に連れ出されることはなかった。
肝心の質問だが、
「好きな女性のタイプは?」
とか、
「初めてのデートはどんなところがいい?」
とか、
「子供は産むのがいい?産ませるのがいい?」
とか、とにかくぶっ飛んでた。
女の人逃げてー!
何とか4回を脱した私を待っていたのは魔法至上主義とも言うべき人だった。
騎士団に魔法使いなんて居るんだと感心していたら、その人は使えないらしい。
しかし、昔共にたたかった魔法使いさんのことを尊敬しすぎているらしい。
1聞いたら中身のない話を10してくる光景を想像してほしい。
話を聞かない人の対応は疲れるものだ。
ともかく5人終わらせた。
今はそのことに満足しよう。
「おいおい、まだ半分も終わってねえぞ。
まだまだこれからだってのに。」
副団長のニコラスさんは冷たい。
「こんなに大変だとは聞いてませんでした。
追加料金が発生しても不思議じゃありません。」
「夕飯ぐらいなら出すぞ。」
「おおっ!
ちょうどお腹空いてたんですよ。」
夕食!その言葉には希望が詰まっている。
私は伏せていた顔を上げる。
と、そこで疑問が出てきた。
今何時だろう?こんな訓練合間の休憩時間で食事ってできるのかな?
「……ちなみに、夕食までどれくらいあるんですか?」
「あと2時間ちょっとってところだな。」
2時間……長い!
「……おやつはありませんか?」
「ないな」
私は再び突っ伏した。
ちょっと涙が出てくる。
「うう~、食事の自由もないなんて……私って本当に捕まっちゃったんですね……」
「そんな気を落とすな。
もう半分終わったんだ。
あと5数えればいいんだぞ。
5・4・3・2・1・0で夕食だ。
それにここから先は≪真実の目≫を使うからな。
相手が使い方を知っていれば楽になるぞ。」
そう言って金色土台付き水晶玉(手のひらサイズ)を見せてくる。
「これってどういう代物なんですか?」
「これは、相手が嘘をついているか見抜く魔道具だ。
使い方は質問される奴が指をこの水晶玉の上に乗せて質問に答える。
相手が嘘をつけば、この水晶玉が赤く光るってわけだ。」
いわゆるポリグラフなのでしょうか……。
「副団長はこの魔道具の仕組みはわかりますか?
どういった方法で嘘をついていると判断されるのでしょうか?」
「そこまでは知らねえな。
使い方さえ覚えれば誰にだって使える代物だ。
魔道具の作成者ぐらいしか知らないんじゃないか。」
「せっかくの有用な技術なんですから簡単な仕組みぐらいは覚えておいた方がいいと思いますよ。
それと、嘘を見抜くということですけど、本人がどっちかわからないことはどうなるんでしょうか?」
「本人がわからないってどういう質問を考えているんだ?」
「例えば未来のことです。
明日は雨が降りますか?と聞かれても私には、はいともいいえとも答えられません。」
「そういうのは全く反応しないらしいぞ。」
「そうですか。……ちょっとテストしてみませんか?」
「いいぞ。
やる前にちゃんと動くか確認しておかないといけないからな。」
そう言うとニコラスさんは机の真ん中に魔道具を置いた。
私は左手の人差し指でそれに触る。
「おまえの名はオノデラミヤビである。」
「いいえ。」
水晶玉は赤く光った。
「お前は女である。」
「はい。」
水晶は透明なままだ。
「大丈夫だな。」
「ついでに一つ質問してもらってもいいですか?」
「なんだ?」
「日本という国がこの世界にあるかどうかを聞いてほしいんです。」
「……ああ、わかった。」
ニコラスさんは深くうなずいてくれた。
「ではいくぞ?
日本という国はこの世界にあるか?」
「いいえ。」
水晶は透明なままだった。
(もうちょっと試したい)
「もう1回同じ質問してもらってもいいですか?」
「ああ。
日本という国はこの世界にあるか?」
「はい。」
水晶は透明なままだった。
「もう1回、もう1回だけ同じ質問をしてもらってもいいですか?」
「なんだ、往生際の悪い奴だな。
日本という国はこの世界にあるか?」
「わかりません。」
水晶は透明なままだった。
改めて思う。
……別の世界に来てしまった!
累計のユニークユーザーが150人を突破しました。
え、少ない!?
でもうれしいです。
これからもがんばります。