今日から浪人
——霊桜町。
桜の形をした川に囲まれるようにして広がる町なのだ。
二人は霊桜町の中へ足を踏み入れた。
その瞬間、周囲からいくつもの熱い視線が注がれる。
特に女性たちからの視線は、先ほどまでとは比べものにならないほど露骨だった。
アリシアはちらりと隣の陸を見上げた。
(よく考えてみると、陸の服装はちょっと変だけど、スタイルはいいし、顔もかっこいいし……)
改めてそう思うと、なんだか妙に意識してしまう。
「ねー」
「ん?どうしたんだ?」
「い、いや、何でもない!」
慌ただしく顔を逸らす。
彼女の頬は、夕焼けのように赤く染まった。
“……オヤジ、ほんと……女性に鈍い”
「え?なんて急に?」
陸は首を傾げる。
見られていた本人だけが、周囲の視線にも、アリシアの反応にも気づいていない。
しばらく二人の間に微妙な沈黙が流れた。
そして数秒後、アリシアは気を取り直すように口を開いた。
「……じゃあ、まずギルドに行こう!」
「おう!」
二人は町を歩き、やがて一際目を引く大きな建物の前へと辿り着いた。
三階建てほどの巨大な建物は、白壁と黒塗りの木材で構成され、幾重にも重なった瓦屋根が空へ向かって伸びていた。屋根の端には細かな装飾が施され、最上階には金色の飾り瓦が輝いている。
ギルドの扉を開けると、受付にいた女性が二人に気づき、笑顔で声をかけてくる。
「人族ギルドへようこそ。何かお手伝いできますか……あっ!アリシア、お久しぶりね!」
「お久しぶりー、セシリア。」
受付嬢のセシリアはアリシアの隣に立つ陸へ視線を移した。
「この人は?彼氏?」
「ち、違うよ!彼氏じゃないよ!彼は陸。旅の途中で会ったの。」
アリシアは咄嗟に否定した。
すると、セシリアは陸をじっと見つめている。
「『アリシアの彼氏じゃない』陸様でございますね!こちらへどうぞ。」
セシリアは妙に妖しげな笑顔を浮かべた。
「こちらに資料をご記入ください。今からギルドについて簡単にご説明いたします。」
彼女はそう言いながら、ギルドの資料を取り出した。
陸は紙を受け取り、ざっと目を通す。
「一般的な仕事に就かず、自分の刀を使って大陸の平和を守る者は、『浪人』と呼ばれています。」
「……浪人?」
陸は一瞬、首を傾げた。
聞き慣れた言葉のはずなのに、この世界では意味が違うらしい。
「はい、浪人はギルドを通して様々な任務を受けることができます。」
セシリアは風神羽を取り出した。それは現代社会が使われているスマートフォンみたいなものだ。
「ギルドの掲示板にも、風神羽にも任務が受けられますよ。任務には期限が設定されて、依頼を受けてから三日以内に目標を達成できなかった場合、その任務は——」
彼女は風神羽の一箇所を指先で示した。
「滅星網に掲示されることになります。そして、他の浪人もその任務を引き受けられるようになって、もし先に目標を達成した場合、陸様が獲得できる名声の点数は減少します。」
陸はじっとその風神羽を見つめたまま、セシリアの説明などほとんど耳に入っていなかった。
(……ヘルメス?)
ふと彼の脳裏に浮かんだのは、とあるブランドだった。
「それでは、ご記入が完成したら、そちらのお部屋へご移動ください。」
セシリアはそう言いながら、陸を奥の部屋を案内しようとした。
「お体に少々ご検査いたしますので、ふふ」
「セ、セシリア、何変なこと言って……おかしい検査をやめなさい!」
アリシアが思わず止めに入った。
「ただの身体検査ですよ、ご心配なく。さあ、中に入りましょう、陸ちゃん♡ふふ」
「セシリア!あなた、いい加減にしなさいよ!」
アリシアが声を荒らげる。
その横で、陸は何やら納得したように頷いた。
「蓮、見て、やっぱ俺の魅力メロメロだな。」
“……オヤジ、母さん見てるよ。”
「…………」
陸の動きがぴたりと止まった。
「……ぐっ!」
何かを察したように、陸は慌てて取り繕う。
「あ、綾乃……こ、これは……あっ、そうだ!これはギルドの定番の流れだ。」
苦しすぎる言い訳だった。
“……父さんったら、本当に目が離せるとダメね。”
綾乃の声が、直接陸の脳へ響いた。
ゾクッ。
陸の身体は、わずかに震えた。
「陸?何かあったの?さっきからぼーっとしてるけど。」
アリシアの声に、陸はようやく我に返った。
「……ああ、悪い。ちょっと考え事してた。」
「もう。セシリアの説明、全然聞いていなかったでしょ。」
アリシアは呆れたようにため息をつく。
「じゃあ、まずは簡単な任務から受けてみようよ」
「ああ、そうだな」
二人が受付を離れようとすると、セシリアが声をかけた。
「それでは、お二人ともお気をつけて♡」
セシリアは意味ありげな笑みを浮かべながら、陸を見送る。
「またいつでも来てくださいね、陸ちゃん♡」
「おう!」
陸は何も疑わなく手を振った。
「じゃあな!」
「…………」
アリシアは無言でセシリアを睨みつける。
「……何ですか、その目は?」
「別に。」
アリシアは陸の腕を引いた。
「ほら、行こう」
「お、おい、アリシア?」
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【ステータス(能力面板)】
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【名前】リク(神坂 陸)
【LV】1
【種族】人族
【職業】浪人(初心者)
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【基本能力値】
HP(生命力):15 / 15
MP(魔力) :0 / 0
SP(體力) :10 / 10
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【裝備・武器】
・羈絆の刃(預設初心者木劍)
[招式塊スロット]:[ 風渦曲陣 ][ ロード中 ][ ロード中 ][ ロード中 ][ ロード中 ]




