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タウン・クライヤー~風が運ぶ街の声~  作者:


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6.エピローグ

「——コーネリアス伯爵家に監査が入ったぞ」

「え、本当? 早いねぇ」


 アッシュの“昔話”から更に数日が経った早朝。オーウェンが、騒動の顛末を伝えに来ていた。

 

 ——あの日。アッシュは「残された家族の末路」を簡潔に話した。


『義姉の本性が少しずつ明るみになり、糸を引くように様々な嘘が暴かれていった。伯爵家の正当な娘だった令嬢を虐げていたことも使用人が証言をし、流されていた不名誉な噂話は払拭され、代わりに伯爵家の評判は地へと落ちたんだ』


 そう。令嬢の名誉は回復し、陥れた者たちは揃って罰を受けた。


『もちろん、犯した罪に相応しい罰も与えられた。報復としては充分だったろう。だがそうしたところで……令嬢が戻ってくることは、二度とない』


 まだ幼かったあの日(・・・)、自分に向けられた優しい笑顔を思い出しながら、アッシュが続ける。


『失ってからでは遅いんだ。だからもし、何かに気づいたならためらわずに手を差し伸べてほしい。まだ、手が届くうちに。そして、歪んだ子供が大人になった時の末路を忘れるな。歪みを助長させることは、一種の虐待であると認識しろ』


 そこでアッシュは声のトーンを下げた。


『悪事は必ず暴かれるぞ。特にこの街には——俺がいるんだからな』





 

「あの日の僕、かっこよかったぁ?」


 にこにこと笑いながらオーウェンに称賛を求める姿は緩み切っていて、誰が見てもあのタウンクライヤーと同一人物だとは思わないだろう。


「ああ。かっこよかったぞ」


 肯定され、「ふふふ」と声を出して笑う姿はとてもご機嫌だ。


「今後の調査によるだろうが、来年学園を卒業すると同時に嫡男が家督を継ぐことになるだろう。現当主と後妻がどうなるかは知らんが、連れ子の方はいいとこ修道院行きだな。まだ矯正が効く歳だ、その方が本人にとっても平和だろうよ」

「そっかぁ。……あの子には、手を差し伸べてくれる人がいたんだねぇ」


 「良かった」と呟くアッシュの表情は相変わらず読めないが、オーウェンは丸まったその背中に手を当て、「違うだろ」と静かに否定する。


「キッカケはお前だろう。お前の声が、一人の令嬢を救ったんだ」


 その言葉にアッシュは目を見開いた。


「そぉ……そーおぉ? 僕のお陰ぇ?」


 詰まりそうな息を意識して吐きながら、言葉を絞り出す。


「ああ、お前のお陰だ」

「……っ、そっかぁ……、うん。まぁ、僕強いからねぇ」

「そうだな、お前は強い」


 へへ、と笑うアッシュにそう言うと、オーウェンは背中に当てていた手を肩に回し、ニッと口角を上げた。


「——ってことで、次の仕事だ」


 


 *

「ねーぇ〜。これ、本当に言わなきゃ駄目なのぉ?」

「仕事だからな。まぁ、乗り気じゃないのはわかる、が。その分だけ報酬がデカいんだ」

「もう、すぐお金の話するんだからぁ」

「商人だからな」


 ブツブツと文句を言うアッシュをあしらいながら、オーウェンは話を進める。


「お前の能力には本当に助けられてるよ。いつもありがとうな」

「! まぁ? こんなことできるの僕だけだしぃ? オーウェンの頼みならさぁ……仕方ないけどぉ」

「ああ、頼むよ」

「うん。まぁ、サクッと終わらせてくるねぇ」


 文句を言いながらも、オーウェンに頼られたことに気分を良くしたアッシュは、お触れを出すための場所へと向かった。いつものグレーの繋ぎを着た姿で、手押し車を押しながら——


 チリン、チリン

「Oyez! 聞いてくれ——」

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

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