第30話 「戦いの後とヲタ通」
気が付くと、見知らぬ天井だった。
「異世界に召喚されたのか?」
そんな妄想が頭をよぎったが、
しかし、その浅はかな妄想は、全身を襲う激痛によって、一瞬で消え去った。
「クミが目を覚ました!!」
ミリアの大声が病室に響く。更に、その声が傷だらけの体に響き、激痛が走った。
「うぐっ!!」
「よかった……ようやく目を覚ました」
フィリアが安堵したように微笑む。
《クミが目を覚ましました》
ナビ子も珍しく落ち着いた声だった。
そして――
俺のベッドの横で突っ伏していた結奈が、ゆっくり顔を上げた。
どうやら眠っていたらしい。
目を擦りながらこちらを見て、次の瞬間、大粒の涙を浮かべた。
「クミ君!!」
「え?」
ドン!!
結奈が勢いよく飛びついてきた。
「うぐっ!!」
全身が悲鳴を上げる。
「よかったぁぁぁぁぁ!!」
「ぐぇぇぇぇぇ!!」
結奈は俺を思いっきり抱き締めた。さらに頭を胸元に押し付けながら、左肩からの傷が開き始めた。
ぐりぐりぐりぐり。
「本当に心配したんだからね!!」
「やめろ!!傷が!!傷がぁぁぁ!!」
「クミ君のバカ!!」
ぐりぐりぐりぐり。
「死ぬ!!死ぬ!!」
《クミのHPが減少しています》
「ウグッ、ぎぁあああ」
「「クミ!!大丈夫?」」
その様子を見ていたルナ様は冷静に
「大丈夫じゃないな。これ」
《原因は結奈です》
「「やっぱり!!」」
俺の急変した事に気付いた結奈は、涙を出して俺を更に強く抱きしめた。
「クミ君!!死なないで!」
ぎゅううううう!!
《クミのHPが更に低下、危険水域です》
ルナ様は、ため息をついている。左肩には、開いた傷口から出た血が滲み出て赤くなっている。
「あーあ」
《ああ…》
俺の意識が遠のいていく。それを見て、結奈は絶叫した。
「いやぁああああ!!!」
ぎゅううううう!!
「ぐはっ!!」
《合掌》
俺の視界が白く染まる。意識が遠のいていく。最後に見えたのは、慌てる結奈の顔だった。
「あれ?」
「クミ君?」
「クミ君!?」
「くみくーーーーん!!」
そして俺は、再び意識を失った。
⭐︎⭐︎
そこへ衛兵長が入って来た。
「ルナ様!!こちらも早く!!勇者が早くしないと?」
しかし、衛兵長は部屋の様子を見て固まった。
数分前から、ルナ様とミリアは結奈を説教していた。
「結奈!!力加減というものを知らないの??」
「だって〜」
「だっても何も魔力をフルブーストして、抱きしめる奴があるか!!」
ミリアの怒号が響いていた。シュンと、している結奈の横で治療をしているルナ様が
「ミリア、うるさい!!」
「うっ」
フィリアは、静かな笑顔でミリアを制して結奈を見た。しかし、その目は笑っていなかった。
「そうよ。ミリア、ところで結奈ちゃん、クミのことが好きなのはわかるけど」
その言葉を聞いた結奈は、ボンと顔を真っ赤にして、俯いてしまった。そんな中、衛兵長は部屋にやって来たのだった。そして、ルナ様以外、みんなの視線が集まる。
「あっ!!」
治療をしているルナ様は
「見たらわかるじゃろ!!今、治療中じゃ!!」
「けど、勇者が」
「いい加減にしろ!!これを解らぬか!!」
「しかし」
「結奈、挽回の機会じゃぞ」
「わかりました」
すると結奈は、右手に黒炎を作った。
「わっ、わかった」
こうして、衛兵長は部屋を出て行った。それと入れ違いに銀髪の冒険者が入ってきて、ルナに二言三言言葉を交わすと壁際にたたずんだ。
⭐︎⭐︎
気が付くと、さっき見た天井だった。しかし、横にはルナ様がいて、俺にヒールをかけている。その横には、ごめんなさいと泣いて謝る結奈の姿があった。
「クミが目を覚ました」
ミリアの一言でみんなの視線が俺に集まる。そして、結奈はというと、ミリアに押さえられている。
「よかったね。クミ」
フィリアの笑顔が目に入ってきたが今度は起き上がることすらできない。
《魔力が枯渇しています》
そして、ルナ様が俺の体を診ながら、うなずいた。
「魔力経絡が完全に詰まっておる」
そして、フィリアが魔力循環をしようとするが
「わたしの魔力では、魔力が入っていきません」
ミリアは、結奈を押さえていた手の力が緩んだ。
「嘘でしょ?」
「普通なら数か月寝たきりじゃ。いや、一生かもしれん」
「ルナ様が」
ルナ様は首を横にふった。
「わしも魔力が消耗し切っている」
《魔力の枯渇により経絡に詰まりが生じています》
結奈は意を決して
「私がやります」
結奈はクミの手を握った。そして、徐々に魔力を通そうとすると
「くっ、魔力が入っていかない」
少し魔力を上げる。すると、魔力が経絡に入り始めた。しかし、クミが悲鳴をあげた。
「ぎゃあああああ!!」
「我慢せい」
「痛い!!痛い!!痛い!!」
横でクミの体を見ているフィリア
「経絡が開いています」
「第三経絡開通」
「痛いいいい!!ぐぁああああ!!」
《現在、魔力経絡を物理的にこじ開けています》
《因みに現在、痛みは尿道結石に匹敵します》
「そんな説明いらん!!うぁああああ!!」
じっとクミの経絡を観察しているフィリアが
「第五経絡開通」
「結奈ちゃん、あと少しよ」
「お願い……開いて……魔力アップ」
「ぎゃああああ!!」
フィリアがクミの身体を確認する。
「あと二本です!」
「開いてぇぇぇ!!」
「う…くっ…うがががぁぁああああ!!あがぁあああ!!」
「全部繋がりました!!」
フィリアの報告を聞いて、結奈に安堵の表情が浮かぶ
「やった!!」
その言葉を聞いたクミは、息も絶え絶えになっていた。
「ゼェ…ゼェ…」
「クミ?大丈夫?」
ミリアの言葉にクミは反応すらできなかったが、結奈の言葉と表情を見て恐怖を覚えた。
「これからが本番よ」
結奈が魔力循環を開始した時だった。クミが野太い喘ぎ声をあげた。
「んあーーー!!」
フーフーと顔を真っ赤にしながら、必死に耐えるクミ
「こ…これ…だめ」
「まだまだよ」
「うぐ、いひ?あぁぁあー!!」
クミはえびぞりになって、気を失った。
気付くと俺はベッドの上だった。
全身が汗だくだ。
まるで三日三晩快感を受けた疲労感が残っている。そして俺は呟いた。
「もうお婿にいけない……」
「「「「行けるわ!!」」」」
《統計上、お婿入り成功率は極めて低いです》
《お婿にいけない確率95%》
「ナビ子!!身も蓋もないことを言わないで!!」
⭐︎⭐︎
ようやく、クミの治療が終わった。しかし、その様子を見ていた一人の冒険者がいた。銀髪の冒険者だ。何故、彼女がここにいるのかというと――
「この人は私の古くからの友人じゃ。今回の決闘を見てお前らに会いたいと言ったんで、連れて来たんじゃ」
クミをはじめ、みんなルナ様の言葉を信じていない。
「私は、貧乏貴族の三女、ミネルバ・アルトリアだ。よろしく」
するとクミと結奈が同時に叫んだ。
「「嘘だ!!」」
読んで下さりありがとうございます。
・面白かった、楽しかったは
・続きが気になる
と少しでも思ってくださった方は、
画面下部の☆☆☆☆☆を★★★★★にして応援して下さると嬉しいです。




