第2話 わかった
「わかった、協力するよ」
カイが言った。
マイは星を見たまま、少し間を置いた。
「……なんで?」
「することができた」
「それだけじゃだめか」
「だめじゃない」
風が吹いた。
「ありがとう」とマイが言った。小さい声だった。
気づいたら焚き火があった。角うさぎが二匹、串に刺さって焼けていた。マイがいつの間にかやっていたらしい。カイは何も言わなかった。
肉が焼ける匂いがした。二人で食べた。それだけだった。
「眠たい」とマイが言った。
「色々あったもんな、寝とけ」
「カイは」
「もう少し起きてる」
マイは返事をしなかった。しばらくして、寝息が聞こえた。
カイは火を見ていた。誰もいない東京が、静かに夜を続けていた。
◇◇◇
目が覚めた時、マイはまだ眠っていた。
カイは一人で東京を見ていた。昨夜と同じ景色だった。人のいない街が、朝日の中で静かに広がっていた。
一晩考えた。
マイが起きたのは、日が高くなってからだった。目をこすりながら起き上がって、カイを見た。
「おはよう」
「おはよう」
マイは髪を手で整えながら、あくびをした。それだけで少し子供に見えた。
カイは口を開いた。
「一晩考えたんだが」
「うん」
「お前の考える通り、人を増やすのが一番いいと思う」
マイがカイを見た。
「お前、はやめて」
「え」
「マイって呼んで」
カイは少し黙った。
「悪い。マイの考える通り、人を増やすのが一番いいと思う」
マイは小さく頷いた。
「ただ、ゲームはだめだ。あれは不自然すぎる」
「わかってる」マイが言った。「あれは失敗だった」
「もっと自然な形がいい。俺みたいに目覚めて状況がわからないうちに、うまく誘導する感じで」
マイは膝を抱えた。
「難しいけど、そっちの方がいいよね」
「ああ」
しばらく沈黙が続いた。
「そもそも」とカイが言った。「生き返らせるって、どのくらいいけるんだ」
「一億人くらい? だいたいいなくなった人全員」
カイは思わずマイを見た。
「全員?」
「うん」
「じゃあ」カイは少し間を置いた。「俺の父さんも、いけるのか」
マイは星を見たまま答えた。
「多分大丈夫だよ。あの時は「消える」ことを願ったから消失しただけで、魂はそのまま残ってる。死ぬと消えるは違うみたい」
「生き返らせられるのか」
「できるよ。でも覚悟した方がいい」
「覚悟?」
「変な感じになるから」
「変な感じって」
マイは少し黙った。
「なんだろう、やっぱり元々知ってる人って、外見?オーラ?なんて言うのかそういうのがそろってないと不自然なんだよね。パパと散々やって、諦めた」
マイは時間をおいて続けた。
「そもそも知り合いに対してその調整をするの、とても疲れる。人の命を弄んでるようで。自分が生き返らせてるからかな」
カイは何も言わなかった。
「記憶はどうなるんだ」とカイが聞いた。
「記憶はそのまま。魂に宿ってるだろう、ってパパが言ってた。死ぬ瞬間まで覚えてる。だから毎回、2年分くらいの記憶を忘れさせてから生き返らせてた。魔力が一般的じゃない時までだね」
「忘れさせて、から」
「この前の村人とか、建物や機械を作ってて命令する時は別だけどね。だからそのままNPCって表現しちゃってる」
マイは淡々と言った。
「最初は抵抗あったけど、もう慣れちゃった」
カイは黙った。




