聖女の力は『殺意』でした。追放されたので南の島でストレスを食べる謎生物とスローライフを満喫します!王都が崩壊中?私の殺意がないと結界も張れないなんて知りません。二度と戻りませんから!
CWAVE の第一・第三日曜 21:30-22:00
「みちこの寄り道くまもと話」投稿テーマが「おつまみ」と言うことで、投稿原稿書いてるつもりがこんなストーリになりました。
第4章 殺意の果ての楽園
――あれから、数日が過ぎた。
大陸の遥か南端。地図職人でさえ描くのを忘れたような、名もなき小さな無人島。
視界いっぱいに広がるのは、宝石を溶かしたようなエメラルドグリーンの海と、どこまでも続く白い砂浜。
私は今、ヤシの木陰に吊るしたハンモックの上で、とろけるように揺られていた。
「ん〜……最高……」
手には、キンキンに冷えたココナッツジュース。
耳に届くのは、穏やかな波の音と海鳥の声だけ。
「聖女様、起きてください!」「治療が遅いぞ!」「寄付金はどうなった!」という怒号も幻聴も、もう聞こえない。
私の隣、ハンモックの窪みには、真っ黒でつるんとした謎の生き物が丸まっている。
この島に私を慕って(餌の放出者だと勘違いしてるだけかも)一緒にきた。なんとなく懐いている(私の勘違い?)「おつまみちゃん」。ぷにぷにした感触が、極上のビーズクッションみたいで心地いい。
ここに来る途中、港町で面白い噂を耳にした。
あやりあの黒い雲の下の王都では、あの追放劇の直後から大混乱が起きていたらしい。
私の「殺意の光」が消滅したせいで、国内のあらゆる治癒魔術が機能不全に陥ったとか。
さらに、私の放出していた莫大な殺意エネルギー(=聖なる光)が、実は王都周辺の魔物を遠ざける結界の役割も果たしていたらしく、今や王都は魔物の脅威に晒されているそうだ。
責任の押し付け合いで泥沼化する勇者と教皇。
暴動寸前の民衆。
負の感情の連鎖で、国中がかつての私のようなブラックな空気に包まれているという。
まあ、私には関係ない話だ。
だって私は、公式に「役立たず」として追放された身なのだから。
復職の要請が来ようが、国が滅ぼうが、知ったことではない。
「ねえ、おつまみちゃん。これ食べる?」
私はふと脳裏をよぎった、「勇者アルドが私の大切にしていた限定スイーツを勝手に食べた時の記憶」を思い出し、指先から小さな黒いモヤをひねり出した。
かつては大聖堂を揺るがすほどの光を生んだ私の殺意も、今や金平糖くらいのサイズしかない。
おつまみちゃんは、その黒いモヤに反応してポヨンと跳ねると、見えない口でパクッとそれを食べた。
どうやらこの子は、負の感情が大好物らしい。
私のストレスを美味しそうに咀嚼したおつまみちゃんは、満足げにプルプルと震え、お礼とばかりに私の脳内へ《極上の微睡み》のイメージを送ってくる。
あたたかい。
体の芯から力が抜け、意識が黄金色の光の中に溶けていくようだ。
ああ、これが、私が求めてきたやつだろうか。
生きたままにして永遠の心の平安の境地。
現世にいながら味わう、完全なるストレス・フリーな理想世界。
「あー……幸せすぎて、どうにかなりそう……」
私はゆっくりと瞼を閉じた。
もう二度と、あの場所には戻らない。
聖女の力が消えた? 婚約破棄? 国外追放?
ええ、どうぞどうぞ、ご自由に。
すべてを捨て去ったおかげで、私はようやく、神ですら与えてくれなかった本当の「救い」を手に入れたのですから。
波の音が、私を甘い夢の世界へと誘っていった。
最後まで読んでいただき、感謝です。ありがとうございます。
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実は、もっとみんなと作品についてお喋りしたくて、ミクチャで平日17時くらいから19時くらいまでで配信をしてます。
感想を聞かせてもらったり、創作の裏話をしたり……そんな双方向のやりとりができるのを楽しみにしています。
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それでは、また次のストーリーでお会いしましょう!




