世界樹のお仕事の結果2
読まれる方によっては、少し気分を害す表現があるかもしれません。m(__)m
2.
世界樹の果実から生まれた生き物たちは己の血を次代に繋げるために奔走する。
より多く、より広く、より強く。
それは誰かから学ぶでもなく刻み込まれた、生きとしものの本能。
―ある種はより多く交わり、より多く産むことでそれを為そうとした。
あるものは己の身体から相手を引き寄せる匂いを発すことで。
あるものは相手の目を惹くようにと身体の一部の色を変え、肥大化させて。
またあるものはより多くの種を造り出すことで。
そうしてより多くの子孫を残し、広い世界へと血を広げていく。
―ある種は強いもの同士を求め合う事で、それを為そうとした。
あるものは己に生える角を強さの象徴とし、その大きさを示すことで。
あるものはより多くの獲物を狩ることで。
またあるものは己の力を誇るもの同士が争い、相手を打ち倒すことで。
そうして己の力を魅せ付けて自分の子孫へ、より強い次世代へと血を繋いでいく。
―ある種はより優れた異種族と交わり、それを為そうとした。
あるものは異種族の種でも孕むことの出来る様ににその胎を作り替え。
あるものは異種族でも孕ますことの出来る様にその種を作り替え。
またあるものは己とは異なる性を狂わせる力を持つことで。
そうしてあらゆる種族の力を得ることで、新たな種として己の血を進めてゆく。
世界樹の果実から生まれた生き物たちはその血を増やし広げ強くし新たにして繋げていく。
世界樹の果実から生まれた生き物たちは己の種を守る為に強くなる。
数を増やしていく自らの種が生き延びるために。数を減らしていく自らの種が絶えないように。
それは生けるものの存在する世界で自ずと生まれる弱肉強食の概念。
―ある種はより多くを狩る為にその身体を武器とする。
あるものは相手を切り裂き貫かんと、その牙を角を爪を鋭く研ぎ澄ます。
あるものは相手を圧し潰さんと、自身を大きく重く鍛え上げる。
またあるものは相手を燃やし尽くさんと、火を吐ける様に己の身体を作り替える。
そうして種を守る為に他者を狩り、生きていく。
―ある種は己の身を守る為にその体を盾とする。
あるものは何者にも傷付けられぬように、その身体を覆う皮膚を堅く磨き上げる。
あるものは敵を寄せ付けまいと、その身体に猛毒を纏う。
またあるものは決して敵に気付かれぬ様、その身体を周囲に擬態させる術を身に着ける。
そうして種を守る為に耐忍び身を潜め、生きていく。
―ある種は多くを狩り、己の身を守る為に道具を造り出す。
あるものは己より強大なものを狩る為に、棍棒を槍を斧を造り出す。
あるものは己の身体を守る為に、盾を鎧を造り出す。
またあるものは己の受けた傷を少しでも癒す為に、薬を造り出す。
そうして種を守る為に創造し知識を蓄え昇華させ、生きていく。
―ある種はより強い種の庇護下に入り、対価を払うことで活路を見出す。
あるものは強き種の巨大な身体に着く汚れを餌とすることで、外敵から守られる。
あるものは強き種の子を代わりに育てることで、狩られる対象から見逃される。
またあるものは強き種に愛想を振りまき、飼われることで種を存続させる。
そうして種を守る為に意地汚いほど逞しく、生きていく。
世界樹の果実から生まれた生き物たちは己を鍛え、作り替え、周囲を利用し強くなる。
そしてまた、その生存競争に置いてかれ消えていくもの、進化の半ばで血を絶たれたもの、得た力を奢り滅びていくものも、数多に上った。
――そうして僕の果実から生まれた子供たちは時にその姿を変え、時に淘汰されながら世界に広がる。
僕とアルシュはその営みの美しさに驚き喜び、その営みの残酷さに嘆き悲しみ、手を貸したいという想いを、救いたいという想いをグッと堪えながら見守り続ける。
天から種が落ちて僕が世界樹となるまでの年月よりも、ずっとずっと長い時間。
唯一様子の変わらぬ森の中。湧き続ける泉の隣で僕とアルシュは見守り続ける。
やがて爆発的に誕生し進化を続けた生命は一先ずその速度を落とし、それぞれの種族が世界を住み分け暮らし始める。
先に待つ嵐の前の静けさの様に、ゆっくりと穏やかな時間が流れ始めた。




