とぅえんてぃわん
バレンタインデーが過ぎた後の行事といえば、卒業式。
大学受験を終えた先輩達が開放感に満ちた顔で残りの高校生活を楽しみ、
あっという間に卒業していく。
その表情は様々だ。笑っている人、泣いている人、両方。
無表情の私はぼんやりとその光景を眺めていた。
雅も3年前この高校を卒業していったのかどんな顔をしていたのだろう。
私の知らない雅を知っている人達が羨ましいと思った。
1.2年生が部活の先輩と写真を撮り始めた小春もスキー部の先輩達と撮っている。
帰宅部の悲しいところはこういうところだ。とはいえ、部活には入らないけど。
校門のそばで、学校1のモテ男である柚宇野君が3年生の女子と笑い合っていた。
王子は年上好きなのか。
目立つ王子とは正反対のような大人しそうな先輩に夢中のようだ。
「おーい、御山ー。みーやーまーさーん、聞こえてますかー?」
いつの間にか隣で柴犬が吠えていた。
「あ、今俺のこと犬って思っただろ」
「沢田は、相変わらずのテレパシーだね」
「う、うるせぇっ」
可愛い。
「今、沢田のことを可愛いと思ったな」
「…うわっ」
普通に現れたのは岡本君。
「というわけで、御山 さん、俺と付き合ってください。」
「どういうわけですか。前にも言ったとおり付き合いませんよ。」
「ちぇー」
岡本君がわざとらしく言った。
「あー、俺、完全に空気ー」
子犬がしょんぼり。
「夕紀!今日一緒に帰ろ~!」
写真を撮り終えた小春が私に後ろから抱きついてきた。
「宮島、お前が羨ましいぞ」
「あ、岡本君、いいでしょ~。夕紀は渡さないわよー」
「じゃ、あたしたち帰るから」
「うわぁぁぁぁ。俺、空気…」
空気な沢田は構ってもらえない寂しさから、しばらく拗ねた。
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卒業生じゃない学生達の春休みは、ほとんど無いような物で、あっという間に新学期を迎えた。
「もう3年生か~」
始業式の朝、校門をくぐる時に小春が呟いた。
「早いよね」
「ほんとにね。大学受験したくないよー」
「恐ろしい」
”受験”って言葉に背中に寒気が走った。
「うわー。人多いね」
玄関を見て小春が顔をしかめた。
「ほんとだ。あの中に今から行くのか」
手を取り合って喜ぶ女子とか、小突き合う男子とかがごった返している先には、クラス割りの紙が掲示されている。
「同じクラスだったらいいね!」
「うんっ」
2人で人混みに紛れていく。
「あ、私3組だ」
「私は……あった!3組!」
「「一緒だ!」」
2人でガッツポーズ。神様ありがとう。
ちなみに3組には山下君と岡本君もいた。
沢田は違うクラスだった。
「俺、1組…。うわぁ。神様ひどっ」
と嘆いていた。




