騒然の司令部
カムールからロイズへ。一日掛けて、ライド達は司令部へと戻ってきた。中へ入るなり、ピリッとした空気を感じる。歩いている人間を見掛けない。いつもならば、忙しそうに右往左往している軍人を一人として見掛けない。
「注意したまえ。何だか妙だ」
「分かっています。普通じゃないです」
奥へと進むライドとキリナ。辿り着いた先は、大将室。意を決して突入する。そこには、我が物顔で腰掛けるハリーが居た。
「……ハリー」
「戻ってきたんですか? 〝俺の砦〟に」
「皆はどうした!?」
「閉じ込めてますよ? 面倒なんで」
「ハリー。貴方は一体、何が目的なの!」
「何が? くだらない質問だよ、キリナ少尉。この司令部を支配することが一つ……」
「ワタシをカムールに行くように仕向けたのは何故?」
「計画の妨げになるからだよ。少しでも障害は取り除いた方がいい。それまでだ」
「大将達の会議の事を、貴方はどこで知ったの?
「そんなの簡単だよ……俺に知らせが来たんだから」
「……やはりか……。どう考えても、辿り着いた答えへは君だった。君が、会議に現れなかった〝一〟だとすれば、筋がすんなり通るんだ」
「流石はライド大尉。カムールへ、只行ってきた訳じゃないですか」
「〈研究所の悲劇〉の首謀者、元帥への復讐の為に、ロイズの大将をも利用したか」
「復習、ですか。そんな安い目的の為に、仲間を利用しようだなんて思いませんよ」
「何?」
「こんな国になってしまった原因を正す……それこそが、俺の目的ですよ。大尉がカムールに行ったのは正直、計算外でしたが、少尉に見張りを付けることで、司令部からの脱出を煽らせることには成功した。情報を与え、仲間の後押しを受け、カムールへと向かうように仕向けた。邪魔な大将も追い出して、全てが上手くいっていた」
「いっていた?」
「戻ってくるなんて思いませんでした。向こうで悠々自適に……と思っていたのに」
「因果応報というやつだよ。君はこうして、自分で危機を生み出している」
「まあ、こっちにも策はありますけど」
机の上に置いてあるスピーカーから、聞き覚えのある声が聴こえる。ハリーの顔が、みるみる不気味な笑みを作り上げる。
「「トーマ! セレン! クリス!」」
「そう大きな声を出さないでくださいよ。鼓膜が破けてしまいます」
「ハリー! 何が望みだ!」
「言ったでしょう? 今の国を正すって」
「……元帥はどこだ……」
「勘がいいのは困ります。元帥を捕らえているだなんて、普通は至らない」
「ほう。元帥を捕らえているのかね?」
「……嵌めたのか!?」
「元帥を殺して達成するつもりかね? そんな強引な手段で、この国を変えれると思っているのかね?」
「〈研究所の悲劇〉を経験した身でなければ、この考えに賛同出来ないでしょう。あの一族を、悪夢の連鎖を止めないと、この国は変わらない!」
「それはハリー、君の主観だよ。同じ経験者でも、他の者達はどう思うかね?」
「やめてハリー。こんなのは間違っているわ」
「間違っているのは、この国の〝今〟だ!」
ハリーは、感情を高め語気を強める。
司令部が揺れ、配置物が倒れていく。
「邪魔をするのでしたら、全てを〝破壊〟します!」




