大将の実力
ライド達に向かって放たれる銃弾。至近距離からの銃弾を避けれる程、人間は俊敏に動けない。
撃たれることを覚悟したライドは、咄嗟に腕を構える。しかし、銃弾が貫通することはなかった。それどころか、放たれた銃弾が消えていたのだ。
確かに引き金は引かれ、弾は飛んできていた筈。ライドの頭を、キリナの視界を、一瞬で惑わした現象。その現象を引き起こしていたのは、仮面の大将、にょんちゃんだった。
「そんなに驚かなくてもいいにょん。相手は銃が効かなかった、それだけだにょんから」
「……何をした!?」
「ロイズの大将在る人が、核の一つや二つでゴタゴタしないにょん。大将の肩書きが泣くにょん」
「核……だと」
「にょんちゃんだけじゃない。〈研究所の悲劇〉の生き残り……にょんちゃん達は全員、核師だにょん」
「全員、とはな。生命力はゴキブリ並みか」
「気にしちゃ駄目です、大将。生成を応用した破壊作用ですぜ」
敵大将の部下が、にょんちゃん目掛けて殴り掛かる。その拳は、にょんちゃんの顔面に触れることなく停止する。訳が分からず棒立ちの部下。
「九を手こずらせる相手じゃないだろうけど、面倒事を済ませて、さっさとずらかりたいもんでね」
「はっちん、面白がっては駄目にょんよ」
「面白かったら動いてない。つまらないから動いた」
「折っちゃいなよ。折られる覚悟があるから、その拳を向けてきたんだし」
「四は、ああ言ってるがどうする?」
「にょんちゃんは、争いは避けたいにょん。無意味な殺生はしたくないにょん」
「甘ちゃんだし、九。アタイ達を殺しに来てるんだ、殺しても構わないし」
「駄目にょん。無意味な殺生はしないにょん」
「……う、腕が!?」
「もういいにょん、はっちん。解いてあげるにょん」
「そうだな。相当に汗をかいてるしな」
はっちんは、敵の動きを自由にした。
自由になった腕をグルグルと回して一息つく部下。そんな部下に対して、敵大将は溜め息をついた。
「核師相手に突っ込んでどうする!自滅に行っているのと変わらんぞ!」
「核を使われる前に倒せばいいと思ったもので」
「殴っただけで倒せるのなら、こんな苦労をせずに済む。少しは考えて行動しろ!」
部下に叱りつつも、内心穏やかではない敵大将。銃が効かない以上、今ある武力では太刀打ち出来ないからであった。
「降参するにょん」
「ふざけるな! 誰が降参なんぞするものか!」
「いい加減にしてください、大将! そこまでして元帥の指示を守らなくても!」
「黙れ! 青二才が偉そうに! 元帥様が望む国の為、私は全力を出しきると決めているのだ!」
「地位と名誉の為でしょう?」
「……青二才が……はあ!」
敵大将は、ライドに向かって刃物を向けてきた。突いては舞い、舞っては斬り掛かってくる。そんな動きでも、人間の動きなら容易く読める。単調な動きには隙が生まれる。ライドは、そんな大将の刃物に向かって稲妻を放った。敵大将の空いていた手を刃物に触れさせ痺れさせる。刃物を持っていた方の腕も痺れ、刃物は床に落下した。
「……うっ!?」
「直接身体に流してもよかったのですが、私は加減が苦手なのです。下手をしたら殺してしまいますので、回りくどい方法を取らせてもらいました」
敵大将にとっては屈辱的だ。青二才と見下していた若者が、勝ち誇った顔で見ているのだから。
直接な攻撃ならば、もっと早く決着が着いたと言っているに等しい言葉に、敵大将は青筋を浮かべた。
「「大将!?」」
「おっと! 無駄な抵抗はやめるし。アタイは強いから」
「女が!」
刃物を投げ飛ばす部下だったが、四の身体をすり抜けるだけだった。その状況に固まる部下。四は面白がっている。
「どこに投げてるの? アタイはこっちだし」
「え!?」
部下の背後に忍んでいた四。部下の溝内を豪快に蹴ると、満足したのか欠伸をした。
他の部下が襲い掛かるが、はっちんの能力で動きが止まる。にょんちゃんの能力で相手の武力を削いだ。
「終わりです」
キリナの銃口が、敵大将のこめかみに向く。敵にとって、これ以上の攻撃はなかった。
※ ※ ※
「分身、かね」
「アタイの能力は分身。奴等の刃物がすり抜けたのは、アタイの分身だったわけ」
「おれのは重力。腕は勿論、対象の重力を自在に加減出来るって訳だ」
「分身に重力、か。やはり世界は広い。そんな凄い能力があったなんてね」
「言ったでしょう? 変身、生成、瞳術だけじゃないにょんって」
「君の能力は何なのかね?」
「にょんちゃんは……時間、だにょん」
「時間?」
「うん。ありとあらゆる〝時間〟を操る。銃弾の時間を操れば、銃弾の〝存在〟を消すことも安易だにょん」
「……壊すのではなく……無かったことにするということかね?」
「簡単に説明するとそうだにょん。それ故に、にょんちゃんは争いを避けたいんだにょん」
「確かにな。そんな核を使う者が居たと知れたら、それこそ大事になるだろう」
「……ライド大尉。これからどうしますか?」
「君はどうしたい? キリナ少尉」
「ワタシは大尉にお供しますが、ロイズの、ハリー曹長の事も気掛かりです」
「そうだね。わざわざ君にも情報を伝えたうえに、カムールへ行くことを後押しした。気にはなる」
「トーマやクリス、セレンは純粋に、ワタシに協力をしていたのでしょうか?」
「策を練るのに情報は不可欠だ。トーマはハリーに全幅の信頼を寄せている。こう言ってはなんだが、クリスやセレンには、裏表を使い分ける程の器用さは無いだろう。三人は、ハリーに上手く使われてしまったようだな」
「大尉! 連続殺傷事件の解決も急ぐって!」
「ウルクン、焦りは駄目にょんよ。焦ってしまったら、大事なものを見落とすにょん」
「大事なもの?」
「ウル。私とて何もしていない訳ではない。あれから独自に調べていた」
「本当って!?」
「ああ。それに君が、軍認の情報を見せてくれと言ってきたので確信に至った。犯人はおそらく、軍認の者だろう」
「根拠は?」
「軍認に選ばれてしまった故の、逆恨み。軍認に選ばれず、平和に過ごしている人への」
「ライドさん、それって!?」
「被害者の共通点を探ったら出てきたんだ。核師という共通点がね」
「……軍認故に殺された人も居れば、軍認にならなかった故に殺された人も居たって……なんだそれ!」
「皮肉だよ」
一難去って、また一難。ウル達も、ライド達も休まることはなかった。休むことなく再び、ロイズへと向かったのだった。




