消えない闘志
穴を呼び出して銃撃を免れたギルは、攻撃を仕掛けてきた軍の中へとワープした。突然現れたギルに狼狽える軍隊。ただ一人を除いて。
「みっともない! 軍に属していながら、何なんだその態度は! 恥知らずな奴等め!」
「オレを前にして随分と威勢がいいじゃねえか」
「ふん。犯罪者に屈しておったら、大将などやれん。我々軍が、お前のような青二才に負けると思うのか」
「オレは核師だ。それを承知で喧嘩売ってんだろうなあ!?」
「核師なぞ脅威ではない」
「あ? どういうこった」
「確かめたければ掛かってくるがいい」
「そんなに殺されたいかあ!」
ギルは、穴を出現させて異空間へ。大将の背後から現れたギルは勝利を確信した。が、ギルの確信は幻に消えた。攻撃は当たらず、自分の身体に痺れが走る。
「な、何を!?」
「ふん。核に溺れた青二才には似合いの姿だな。無様に横たわっておる。どうだ、身体が痺れてたまらんだろう?」
「し、質問に答えろ!」
「釣り上げられた魚のようにピクピクしている分際が。まあいい教えてやろう。我々にも核師が居る。それ故に実験も可能なのだよ。核師との対策の結果、出来上がったのがこれだ。核師に打てば、効果が切れるまで能力を封じることが出来る」
「な、なんだと!?」
「せっかく捕まえても、能力を使って逃げられたら意味がない。ようやく完成した特効薬だ」
注射器を見せつけニヤリとする大将。その目からは、軍の正義感というより、一個人の達成感を感じる。
「何をボサボサしている! さっさと指名手配犯を連れていけ! 軍服が泣いている」
連行されていくギル。大将の元に駆け付けたキリナは、ギルの身柄を要求するも、あっさりと断られてしまう。怪我をしているウル達の為に軍附属の病院への手配を要求するが、それも断られた。
「我々の管轄外の人間の要求なぞ呑まん。我々の司令部には、たとえ同じ軍人といえど踏み込ません。我々の司令部附属の病院も我々以外が使うことなど言語道断。ましてや〝たかが〟民間人。勝手に戦って、勝手に怪我をしたに過ぎん。正直どうなろうと知った事ではない。……さっさと管轄から消えてくれないか。目障りだ」
「……」
自分に浴びせられた言葉を信じられないキリナ。それを言ってのけたのが国軍大将なのだから尚更だ。
「オレをどうする気だ?」
「まだ喋る気力があるのか。二度と口を利けないようにしてやろう。どうせ死刑だ……やれ」
ギルの喉を貫く銃弾。能力を封じられ、身体の自由も奪われたギルに下された罰。大将の口元が緩む。
「度が過ぎませんか!」
「キリナ少尉、だったか。我々のやり方に口出しは遠慮願おうか。五月蝿い子供に〝躾〟をしたまでだ」
(声が……。畜生! 軍の分際で!)
ギルの闘志に火がついた。最後の力を振り絞り、ウルの左目に穴を出現させた。
(このまま捕まんのはシャクだ。軍の現実を目の当たりにしたんなら、オレの気持ちを少しは理解した筈だ。軍認の核師を減らさなければ、こんな腐った奴の手駒として利用されてしまう。オレは、自分の手を汚してでも軍を変えたかった)
ウルの左目から矢が消滅した。更にウルの左目に視力が戻る。穴は消え、ウルの左目からの出血も止まった。
(くれてやる。その左目で、オレの代わりに軍を変えろ! ……兄貴を頼んだ)
「ようやく大人しくなったか。手間取らせる」
気を失ったギルを、まるでゴミのように連れていく軍隊。ロイズでは見てこなかった光景に、キリナは絶句した。ウルの左目には、ギルの左目が輝いていた。




