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青い焔

 力なく剣先を地に着け項垂れる。その姿からは覇気を感じることは出来なかった。ウルの変身が解け、黒い髪が瞳を隠す。隠れた瞳から、大粒の涙が溢れ落ちる。両膝を着いたウルの間近には鋭い刃が眩しく光る。触れれば、最悪の事態も避けられない。


「腕を斬った……だと。こりゃあ傑作だ!」


「ギル! 動けば撃つわよ」


「撃ってみろよ、ネエチャン。ネエチャンの身体に返ってくるぜ? うはは!」


 ギルのワープを警戒して、撃つのを躊躇うキリナ。ギルならば、銃弾をワープさせてキリナに当てることなど朝飯前だろう。キリナの銃は重りと化していた。


「……随分と!」


 ギルに向かって、無数の刃が飛んできた。ギルは、穴を出現させてワープで返す。メイルも攻撃を繰り返す。飛んでは返す無数の刃。果てなく続くと思われたが、左腕の痛みに堪えきれず、メイルのワープが途絶えてしまう。そんな状況の中、ギルの放った刃が、痛みに苦しむメイルに向かっていく。


(駄目だ! 痛みでどうにかなってしまう)


 死を覚悟して、目を閉じた。後ろにいるウルの壁くらいになってやろうと胸を張る。しかし、一向に攻撃は来ない。メイルが目を開けると、赤い炎が現れた。


「ウル!?」


「さっきの借りを返したって……。剣、使わせてもらうな」


「なんだぁ? まだオレと戦う気か? 懲りない奴等だ」


「簡単に懲りたりはしないって。俺は、俺の闘志が尽きるまで戦う!」


「お友達の左腕を斬り落とした剣でか?」


「意地でもテメエを捕まえてやる。大尉の面前で詫びさせてやるって!」


「馬鹿な奴だ。大人しく震えてればよかったのによ!」


 ギルが穴から刃を飛ばせば、ウルは燃え盛る剣で薙ぎ払っていく。ギルの右腕が、ウルの首元を執拗に狙ってくる。ウルは赤い炎で、ギルの攻撃をかわしていく。


「右腕に持ってる短剣で、俺の首を掻っ斬ろうって算段だろうが……そうはいかねえって!」


 ウルは、メイルから借りている剣に炎を纏わせる。そして、炎の刃としてギルに放った。


「!?」


(掛かったって!)


 穴から穴へとワープしたギルだったが、その先にはウルが待ち構えていた。ギルの左腕に剣を突き刺す。ギルはウルごと穴の中へ。軍隊にしたように、ウルにもしようということなのだろう。


「瞳術使い以外は、この空間で自由は利かない。オレの独壇場って訳だ!」


「くっ!?」


 ウルの炎が弱まっていく。ウルとギルが消えたことを認識したキリナは、重傷のメイルへと駆け寄る。


「気をしっかり!」


「気はしっかりしてる……。けど流石にマズイ!?」


(このままでは、出血多量で死んでしまうわ!)


※ ※ ※


「街の人達、大分避難したみたいよ」


「ティタちゃん?」


「メルちゃん。私、行くよ!」


「え、だってメイルは!?」


「分かってる。けどね、私も核師コアマスターだから……行かないといけない」


「ボクだって、メイルの役に立ちたいのだよ。だけど、ボクが行ったら足手纏いになるのだよ。ボクだって核師コアマスターなのに!」


「メイルちゃんも核師コアマスターなの!?」


※ ※ ※


「ぐわあああ!!」


「いい声をあげるねえ。殴り甲斐がある」


(ヤバい。このまんまじゃ殺されるって)


「これが瞳術使いの怖さだ。異空間へと相手を閉じ込めてボコる! 次元をねじ曲げ、どんな距離でも追い掛ける! どんな相手だろうがな。うはは!」


「……楽しいか?」


「あ?」


「そんなに殴って楽しいかって訊いてんだ」


「楽しいに決まってんだろ? じゃなきゃあ、さっさと殺してる」


「……ああそうかい。俺はもう、殴られすぎて冷めちまった……。お陰で頭も冴えてきた」


「今更か。一体何が出来る?」


「『オレを燃やし尽くさなかったことを後悔するんだな』とか言ってたな? ……今度は、後悔しないように燃やしてやるって!」


「この空間では無理だ。身に染みた筈だ」


「たとえコアを打ち消したとしても、俺のコアは絶対消えねぇー!」


 ウルの身体を赤い炎が纏っていく。その炎は、どんどん燃え盛り熱を上げていく。


「この異空間(場所)で……何故だ!?」


 燃え盛る炎は、高温を維持しながらウルの身体へと吸収されていく。逆立つウルの髪色が、赤から青へと変化する。そして、ウルの身体に青い炎が纏まる。


「俺の、テメエへの激しいほむら。俺のコアコアが、俺の殺意に呼応した」


「だからどうした? 炎の色が変わったくらいで」


「炎は、赤よりも青のほうが熱いんだ!」


 ウルは一瞬でギルを追い詰めた。あまりの出来事に、ギルのワープが追い付かないでいた。


「ぐううっ!」


 ウルに殴られ飛んでいくギル。痛みに堪えながらも穴を出現させて抜けていく。閉じていく穴を見逃さず、ウルも穴をすり抜けた。

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