戦場
睨み合う二人。街は混乱していた。倒れこむ大勢の軍人。逃げ惑う人々。応援に駆け付けた軍人達は、二人を取り囲むように隊列を成し、一斉に銃を構えた。
「「そこの二人、両手を挙げなさい!」」
大楯を構え、拡声器で呼び掛けてくる。攻と守、見事な連携をみせる様はまさに軍隊だ。
「だとよ。邪魔だから始末してやろう」
「テメエのせいで俺まで犯罪者か。巻き添えは御免だ。巻き込むのも御免だがな」
「綺麗事を並べてるんじゃない。オレに掛かれば、あんな軍隊の一つや二つ潰すのなんか朝飯前だ」
「……答えろって! なんでショウを殺したんだ!」
「殺したかったからだ」
表情ひとつ変えず答えるギルに、ウルは怒りを増幅させる。今にも飛び掛かりそうな様子だ。
「ルワンの殺傷の理由もか?」
「ルワン? ……ああ、あの風車の街か。あんな街でも人殺しは起きるのか」
「とぼけんな! ルワンの殺傷もテメエの仕業だろ!」
「ふざけるな。オレが、あんなちんけな街で殺しをするだと!? 濡れ衣も大概にしろ」
ギルの表情に変化が見えた。ウルは警戒を強める。
軍隊の間をくぐり抜けて、キリナが来た。
「それは本当なの?」
「ああ。オレ、無闇矢鱈に殺さないんだ。本当の猟奇的な殺人犯なら、視界に入るヤツを次々殺してるだろうな」
「あら……貴方自身は猟奇的ではないと?」
「オレには目的がある。猟奇的なヤツとの違いだ」
「人殺しに違いなんかねえ! 殺しを楽しんでいる時点で、テメエも充分猟奇的だって!」
「そうかよ。人殺しに違いはない、か。それじゃあお前も同じになるのか? オレを殺したいんだろうよ?」
「……ちぃっ!」
「ウル君!」
キリナの銃声が鳴り響く。その音がウルの抑制に繋がった。そのまま、空に向けた銃口をウルに向ける。
「ウル君、冷静に。相手の思う壺よ」
※ ※ ※
逃げ惑う街の人達に巻き込まれて、身動きを取れないティタ。キリナから、待つようにと言われているが、とても待っていることなど出来なかった。
(ウル……それに今の銃声は!?)
気持ちばかりが先行してもどかしくなる。正直加勢したとして、役に立てる自信はなかった。それでも行かなければならなかった。自分の師匠の仇が、すぐそこまで居るのだから。
「ティタ!」
混乱の中、自分の手を引く誰か。後ろ姿で誰かを判別すると、その引力に従った。
「何が起きている? さっきの銃声も一体」
「メイルも来てたなんて驚いたよ。ん?」
ティタの視界にメルの姿が入った。見られているメルの方は、なんだか穏やかではない。
「メイル。この女の子は何なのだよ!?」
「幼なじみだ。それがどうかしたのか」
「手なんか繋いじゃってさ! 怪しいのだよ!」
「今はそんなことを言っている場合じゃないぞ! ティタ、知っている事を話すんだ」
ティタは、メイルに事のあらましを伝えた。それを聞いたメイルの左目は、金色を強めている。
「アイツ、やはり無茶を……。〝左目〟とアイツは、この先だな」
「私も行くよ。仇を討たないと」
「いや。君は彼女を頼む。気持ちは解るが、彼女の身の安全も確保したい」
「……分かったよ。……気を付けて」
メイルは合図をすると、戦場へと駆けていく。その後ろ姿を、不安そうに見送るティタとメル。
「大丈夫。ボクは、メイルを信じて待つのだよ」
(不思議な娘)
ティタがメルを見ている。初めて会ったにも関わらず、なんだか油断してしまう雰囲気を感じていた。




