メイル:プレゼント
「美味しいのだよ! 美味しいのだよ!」
「落ち着いて食べれないのか、君は?」
小腹が空いたメルの希望で、メイルはリリッシュで人気のドーナツ屋に来ていた。メルは幸せそうにドーナツを頬張っている。
「これが落ち着いて居られますか。そこに甘いものがあるのなら、迷わず手を伸ばすのだよ」
「とても、甘党には見えないが?」
「人は見掛けによらないのだよ」
メイルの言う通り、メルのスタイルは細く、甘いものが好きだと言われてもピンとこない。そんなメルを隣で見つつ、メイルはコーヒーを飲んでいた。
「メイルは、ボクとは逆で甘いのが苦手?」
「いや、只の気紛れだ」
「気紛れ? 気紛れでコーヒーを飲めるなんて凄いのだよ」
「おだてても何もないぞ。それよりも、そのドーナツ旨そうだな……一ついいか」
「良いのだよ。その代わり、ボクにプレゼントをくれたりしてくれたら……嬉しいのだ」
「ドーナツの見返りがプレゼント、か。何が欲しいんだ?」
「え~と……愛の……」
「却下だ。物にしろ」
「そ、そんなー!」
残念ながらも、ドーナツを食べる手を休める気配はなく、『指輪』だとか『ピアス』だとか言っている。
メイルはその度に『却下』と切り捨てていく。
「じゃあ何ならいいのだよ?」
「メガネでいいんじゃないか? 少しは知的に見えるぞ」
「おお! それは良い案なのだよ!」
「そ、そうか」
すんなり意見を聞き入れたメルに、メイルは正直驚いた。いつの間にか、ドーナツがキレイサッパリ無くなっており、満足したメルはパッと立ち上がって伸びをした。
「そうと決まれば行くのだよ! メガネメガネ!」
「単純な奴だ」
※ ※ ※
「どう? 似合ってる」
数種類を合わせたあげく、ようやくお気に入りを選んだメル。メイルは自分の財布を取り出すと、メガネの代金を支払った。
「〈送迎書〉じゃないの?」
「僕の靴は、旅の必須品だ。が、そのメガネは、君へのプレゼントだ。〈送迎書〉を使うべきじゃない」
「なんだか嬉しいのだよ。メイルからの〝特別〟なプレゼントだから」
「オイ、別に〝特別〟なんかじゃないぞ!?」
「えへへ。 メイル、ありがとうなのだよ!」
嬉しそうに舞い上がり笑顔を見せるメルに、メイルは不思議な感情を覚えた。




