メイル:銀髪と金髪
ウルとティタと別れたメイルは、次なる街を目指して歩いていた。
「近いのはリリッシュか。リリッシュといえば、代表的なのは靴だと聞いている。だいぶ履き潰したのを履いてきたからな、そろそろ買い替え時だ」
色が褪せ、紐が緩くなった靴を見ながら思う。メイル自身、歩くのは好きな為、靴を履き替える事は一大事なのだ。
「さて、小腹がすいた。ここで昼としよう」
拓けた道だが人通りは少なく、木の蔭で食べるにも不自由しないとあって、メイルは上機嫌でパンを食べていく。生きているから食事を取れる……当たり前が幸せなんだと、メイルはパンと一緒に噛み締めていた。
(ウルとティタは上手くやっているのか)
離れていても友達で幼馴染み。普段、口喧嘩が絶えなくても、やはり心配にはなってしまうメイル。数時間前まで一緒だったにも関わらず、すこし寂しさを覚えているのだった。
(僕は僕の行くべき場所に向かうまでさ)
パンを食べ終わり立ち上がったメイル。が、自分の背後に迫る気配にいち早く気付き、素早く振り返り体勢を整える。〝左目〟との遭遇が彼を反射的にそうさせた。
「声も掛けず背後に近付くなんて大胆な……何者だ!」
「ひっ、酷いのだよ! こんなにか弱い女の子を目の前にして! ボク、泣いちゃうのだよ」
「フン、何がか弱いだ。そんな派手な金髪の癖に、か弱いも何もあるものか」
「ひっ、人を見た目で判断しちゃあ駄目なのだよ!」
「見た目に騙されて損など御免だ。君の正体が判らん以上、僕は警戒を解くつもりなどないぞ」
警戒する銀髪の少年と隙だらけの金髪の少女。近付かれては退いていく。退いていけば近付かれる。お互いに一歩も譲らないまま、時間だけが虚しく過ぎていく。
「今すぐ僕の視界から消えるんだ。言うことを聞かなければ敵と見なす!」
「ボっ、ボクは敵じゃないのだよ! 困ったのだよ~、どうしたら敵じゃないって信じてもらえるのだよ?」
「さあな」
(クッソ。まだ左目の違和感に慣れていないのに。ヘタに戦いになったら不利になるぞ)
「ボクの名前は、メル! 〈精進の儀〉で旅立って一週間で、とても不安なのだよ。木陰で休めてるから、とても旅慣れしてるのと思って近寄ったのだよ」
「何だと? そんな嘘で信じるとでも?」
「そっ、そんなあ~」
メルの目に涙が浮かび流れていく。さらに、そのまま座り込んでしまった。うつ向いたまま、地面に涙を落としていく。メイルは、女の子を泣かせてしまったということに自己嫌悪に陥ってしまった。正当な理由なくして女の子を泣かせることはしないと誓っていた為、そんな自分に腹を立てる。
「オイ、泣くんじゃない!?」
「ボク……ボクわあああ!」
咽び泣くメルを宥めるメイルの表情は、眉をへの字にして困っていると訴えていた。
※ ※ ※
「ご馳走さまなのだよ!」
(女心と秋の空ってやつか。この僕が、謝り倒すことになるとは)
思いっきり泣いたメルは、お腹が空いたことを訴え、メイルからパンを分けてもらっていた。
「ありがとうなのだよ! メイルが親切な人で助かったのだよ」
「そ、そうか。機嫌が直ったのならそれでいい」
警戒心をいつの間にか解かされていたことにメイル自身が一番驚いていた。隣にちょこんと座り笑顔を見せるメル。
「メルとメイル……なんだか似てるのだよ」
「くだらん」
「金髪と銀髪で派手派手なのだよ」
「くだらんぞ」
「メイル、ボクを一緒に連れてってほしいのだよ!」
「く……何だと!?」
「だめ?」
メイルの顔を覗き込むように、上目遣いでお願いする姿は、猫が甘えた声で訴えてくるようだ。そんなことをティタにすらされたことのなかったメイルの顔が赤くなっていく。
「す、好きにしろっ!」
「うん! 好きにするのだよ!」
自分の心臓が高鳴っているのをメイル自身、戸惑っていた。




