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 腹部の痛みを堪えながら、宿へと向かっていたウルの視界に、見覚えのある姿が入った。


「……メイル!?」


「ウル!? 何故君が」


 メイルの方も直ぐにウルに気付いた。


「俺、この宿に泊まるんだ」


「何。僕は昨日から泊まっているが?」


「え!?」


「ウル、君は昨日は何処で一夜を?」


「……途中の森で野宿……」


「なっ、何だと!?」


 ウルの発言にメイルは唖然とした。まさか野宿をしているとは思わなかったからだ。ましてやメイル自身は昨日の時点で街に着いていた為、余計に驚いていた。


「いやぁー。最初はどうかと思ったけど、言うほど悪くもなかったな」


「君には危機感というのがないのか! 旅立った当日に野宿とは、無謀にも程があるぞ」


「心配してくれてるのか?」


「だ……誰がするもんか!」


 即答で返すメイル。それを聞いたウルは、『ふーん』という素っ気ない態度でいた。ウルは、手に持っていた猫缶を見るや『ちょっと悪い』と言い残して宿へと入っていった。


「ちっ。相変わらず勝手な奴だ。僕が珍しく心配をしてやればこれだ」


 その場で立ち尽くすメイルだったが、自分に向かってくる少女と老人に気付き、向きを変えた。


「君もこの街に居たんだな」


「〝君も〟って?」


「ウルの奴も居るんだ。今、ここの宿に入っていったんだが」


「奇遇だね。私もここに泊まってるんだよ。なんだ、だったら声を掛けてくれてもいいのに」


「いや、それが……アイツ、昨日は野宿だったみたいなんだ。僕もさっき聞かされたんだが」


 野宿という単語を聞いた瞬間、ティタの表情が青ざめていく。それを見たメイルは、しまったと思った。


「あ、あ、安心するんだ、ティタ。アイツは元気そうだったから!」


「そう……なんだ……よかったあ」


 ふぅーと肩の力を抜くと、ティタはショウに背中を預けた。相当疲れが溜まっていたのだろう。


「おやおや。修業で結構な体力を消耗してしまったらしいの。さ、部屋に戻るとしようか」


 ショウは、ティタをお姫様だっこして歩く。ティタは顔を思わず赤らめるが、そんなことをショウが気にする素振りはなかった。


「師匠!?」


 宿に入ろうとするショウに声を掛ける少年。ショウもまた、その少年を見て目を丸くした。


「ダイじゃないか! 久しいの!」


「はい。師匠こそ変わりなく安心しました」


「これでも歳は取っておるよ。おっと、お嬢ちゃんを部屋に寝かせたいのだ。少し待っておくれ」


 宿に入っていくショウの背中を見つめるダイの目は、自分に修業をつけている時の彼とは違うと、メイルは思った。


「そっちの師弟関係は良好のようだな」


「師匠は偉大なんだ。今の俺は、師匠なくして語れない。だってあのときに……」


「いや、そこまで誰も訊いてないぞ」


 やんわりと話を遮り、メイルは戻ってくるのを待った。ショウ、ウルの順で戻ってくる。


「二人とも、部屋で話さぬか。お嬢ちゃんを一人にしておくのは不安での」


「はい、師匠!」


「構わないぞ」


 メイルとダイも宿へと入っていった。ショウの取った部屋に集まる。すぐさま話題になったのは、〝左目を閉じた少年〟の事だった。


「あのやろぉーっ!」


 〝左目を閉じた少年〟の話題になり、感情を露にするウル。メイル、ダイ、ショウの三人は、ウルの愚痴を黙って聞いていた。


※ ※ ※


「はあはあ」


「気は済んだか? 珍しく愚痴を溢したと思ったら、三十分以上も話をするとは……。まあ、今の話を聞いた分だと、やはり只者ではないみたいだ」


「俺を見る目は冷たかったねえ。何かよ、闇を抱えている感じを受けた」


「冷たい!? いーや! あの目は、人を馬鹿にした目だ。左目の金色が気に食わないって!」


「「金色!?」」


 ウルの言葉にダイとショウが反応した。二人の表情が、みるみる暗くなっていく。


「どうしたんだ」


 メイルがダイの様子に不安を覚える。


「もしかしたら、ヤツは核師コアマスターかもしれん。だとすればヤバイね」


核師コアマスター?」


コアを使う者をそう呼ぶんだ。お前だって修業すればそうなる」


「……何の事だ……?」


 コアの事を知らないウルは、話に付いていけてなかった。


「それも恐らく瞳術じゃ。厄介じゃの」


「どういうことで?」


コアには色々と種類タイプがあるのだが、瞳術は、その中でも厄介での。一筋縄ではいかんかもの」


 ショウの言葉に黙ってダイは頷いている。ダイの表情が、メイルに全てを悟らせた。


「僕達には何も手立てはないのですか?」


「否定も肯定も出来ぬ。済まぬの」


「師匠。何となくですが、ヤツはまた現れます。そんな気がするのです」


「お前さんの予想は当たるからの。警戒は必要かもしれん」


「次会ったら容赦しねえって!」


 ウルは一人、闘志を燃やしていた。

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