四十話 辺境領より愛を込めて
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お前がここを出て、早いものでひと月が経とうとしている。
辺境領の街は、すっかり普段の賑わいを取り戻した。
相変わらず領主公認(が謳い文句の)肉屋の串焼きはよく売れているし、行きつけのパン屋は戦勝を記念して新しいパンを売り出した。アーノルドの角を模した、パイのようなパンだ。
ついでに焼き菓子屋の新しいクッキーは、私の角を模しているのだそうだ。
何だかとてもむず痒い。
アーノルドはあんな怪我をした癖に、既に執務に復帰している。
本当に、呆れるほどに頑丈な男だ。
もっとも奴は最近はちゃんと食堂で飯を食うし、毎日眠るようになった。
昔を思えば、随分と変わったものだ。
うちの連中も、至って元気にしている。
むしろ元気すぎて毎日困っているぐらいだ。
性懲りも無く隠れて酒は飲むし、相変わらず喧嘩もする。
本当に、いつまで経っても落ち着きのない奴らだ。
それから、お前がいなくなって随分と寂しがっているよ。
イアンについては、お前が出ていった少し後に領外追放の沙汰が下った。
……あいつは、最後までよく分からない男だった。
私はお前にもあいつにも随分頼っていたから、まだ時々、ひどく心許ない気持ちになる。どうか笑ってくれ。
ほかの領城の連中も、相変わらず元気にしている。
ヴォルフは相変わらず大酒飲みだし、若いものの鍛錬には容赦がない。
うちの連中も世話になっているし、無論感謝しているが、あいつは自分がおかしいという自覚をもう少し持った方が良い。
オーウェンは相変わらず仕事を抱え込むし、師匠の横暴に日々胃を痛めている。
先日も本気の打ち込み稽古を半日つけられて、動けなくなっているのを見た。
毎回真面目に付き合ってしまうあたり、難儀な男だと思う。
タルトは、例のクズ魔石の充填機を改良して、領主が居なくても空気中の魔素を取り込んで再利用できるようにしたらしい。相変わらず、私では思いもよらないことを考える。
あと、今月に入って二回、工房を爆発させた。
要するに、此方は相変わらず騒がしい日々を送っている。
帰ってきたくなったら、いつでも帰ってきたらいい。
アーノルドが出立前に伝えた通り、ここはいつだって人手不足だし、
そもそも家族を家に迎えるのに、特別な理由も必要ないだろう。
また気が向いたら、返事を送ってくれると嬉しい。
旅の合間、体に気をつけて。
お前の幸福を、心から願う。
お前の姉 ノーラ
辺境領より 愛を込めて
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