6."Eupcacciaの自死"
「陸……」
「おい、陸…………」
『本当に、人間が膝から崩れ落ちる事などあるのだな』と、心の何処かで冷静な分析が行われて居る
事実、俺はいま崩折れて膝立ちになり、何か大きなものに救いを求めるように視上げて居る
視線の先には、冷たくなった、もう動かない陸の躰が、まるで総てが最初からそうだったかの様に、ぶら下がって揺れて居た
部屋はいつも通り
カーテンが降りて暗いままだ
今日は少しカーテンに隙間が在って、家の前に在る通りからの陽光が白く差し込んで居る
時刻は6時くらいだった筈だ
これからきっと、街は少しずつ始まっていくのだろう
外では雲が晴れたのか、部屋が更に明るくなった
照らされた陸の皮膚は、人形のように白くて
紫色の痣が斑に浮かんで居る
光の差し方のせいか、陸の顔だけが暗く
表情は解らない
カーテンを閉めたかった
いや、閉めたかったのだろうか
解らなかった
眼前には、陸の爪先が在る
俺は、陸の足の甲に顔を擦り付けて泣いた
泣いたのは、いつ以来だろう
どういった感情に由来する涙なのかも解らないまま、俺は泣き続けた
泣きながら陸の足に、唇で触れる
こんなにも空っぽになった心の内で、それでも次に自分が何をするのかだけは解って居た
テーブルに乗ると、陸を縄から外して床に横たえる
触れた感触が冷たく弛緩して居て、皮膚感覚として「もう死んだのだな」「これは唯の肉だ」と感じる
縄で出来た輪を、茫然と視て居る
両端が俺の手で握られて居る
輪に首を通し、俺は眼を閉じた




