第41話「牙を見せろ口開け!」
〈戦況報告〉
「要塞を加速させ、パラサイト艦隊群に突入させろ。なぁにまた作らせる、作ってもらうぞMID諸兄諸君」要塞を使った無人自爆作戦。ブル将軍指揮の艦隊はMIDの造船機能の全てを使い拡大した艦隊で一大決戦をパラサイト包囲艦隊に仕掛けた。攻囲を解除する目的ではなく、近傍の星系防衛軍と合流する為だ。MID義勇艦隊は決戦に出た。実質的な挟撃にあうパラサイト艦隊が求めるものは単純、耐えきり、合流を阻止し、各個撃破することだ。熾烈な艦隊戦が繰り返され、無数のデブリが海となる。この時、ウィドォを攻囲していたパラサイト艦隊の主力のほぼ全てはこの艦隊戦へと合流した。ウィドォの包囲は著しく弱まったが、地上での激戦は続く。
叫び。
それは悲鳴ではなく、敵を斃す為の声。
荘厳さの欠片もない南極要塞のありとあらゆる場所で白兵戦が繰り広げられた。激しい戦いは、より多くの血を流させる。ヒトの血、MIDの血、そしてーーパラサイトの血。流れた血は飲み干され続け、飢えと渇きが満たされる気配もない。
「撃ち下ろせ!」
頭程もある巨大な砲弾を機械的に撃ち続けるオートキャノンが、弾数を数えられるほど遅く、しかし破壊的な一撃でパラサイト装甲兵を両断破壊していく。車両の区別もない。狙えば穴だらけに貫通し、内部を破壊し尽くして壁に激突した。
「リオン、陣地転換して」
「もう解体してる」
「長くは持ちそうにない」
「支援砲撃用に戦車が展開しているみたい。それが間接砲撃してきたら下がろう」
「ありがたい」
「オートキャノンは捨てちゃ駄目」
「マジかよ……」
要塞内での戦いは市街戦の色を深めていた。地表部分に露出している要塞の面積は小さいが、その僅かなエリアに私達の持つ砲撃戦力のほぼ全てが投入されているんだ。火力の密度は桁違いだ。密集しすぎて、本来ならパラサイト砲兵に打尽されるところを、砲弾さえも叩き落とす盾を捨てた槍が、盾以上の守りとなっている。
空は無視していい。航空戦団と砲兵の仕事だからだ。私が目を向けるべきものは目の前にいる。
「ラビ! あんまり歩兵の近くで撃たないでーー撃つな! 撃つーーアッチ!?」
ラビの乗るガンドラが噴射したロケット、重い薬莢が真下の私に降り注ぐ。パワースーツ越しに肌を焼くのは予想外だ。欠陥だよ。
「あっ、ごめん!」
ガンドラが一歩前へ進めば薬莢の雨は過ぎ去り目の前を薬莢の海に変えた。
そんな散発的な戦いの繰り返しだ。一当て、そして撤退、そして小休止。
「どう思う?」
「探りをいれています」
「ーーだ、そうです」
コンダクター級MID未満の、小隊長クラスでの意見交換だ。パラサイトは何か怪しげに動いている。探りをいれている、らしい。あくまでもやりあった感触では、だ。
「イタズラにゴリ押しはパラサイトはやらない」
小隊長のベアがそう言いながら、
「問題は何を狙っているかだ。単純に考えれば突破可能な脆弱部を探っているということになるが……」
「こっちには充分な数の支援がある。MIDのドローンも、多少戦力が薄くても増援の機動は速いぞ」
「リオンの言う通りだ」
「ならーー何を探している? 知りたがっているんだ」
「わからん」
沈黙が、続く。
今もパラサイトは不気味な動きを繰り返していた。私達はその動きの意味を図りかねている。
攻略の目処を立てているだろうパラサイトの動きの狙いがわからない。よろしくない、とてもよろしくない。




