また始まった!
拙作『兄貴への恋を実らせてあげたい❗』の最終エピローグに繋がってますが同じ人かどうかの明言は避けます。
「おや?」
「気がついた?」
気がついたら私は椅子に座っていた。
目の前には男の子がにこやかな笑顔で私を見ている。
「ここは?」
「記憶の部屋さ」
「記憶の部屋?」
「うん。君に会うのは久し振りだけど覚えて無いよね」
男の子は少し寂しそうに微笑むが覚えが無かった。
「それでどうして私はここに?」
「死んだからだよ」
「死んだ?」
「うん、君は死んだ。だからこの部屋に来たのさ」
衝撃的な男の子の言葉に唖然とするが同時に大きな疑問が頭に浮かぶ。
「でも『久し振り』って私は一回死んだの?」
「違うよ、前回君は意識を失って迷いこんだのさ」
「迷いこんだ?」
「うん」
よく分からないが、まあいいか。
「あなた誰?」
「僕の名前は清水祐一。君の前世の記憶だよ」
「へ?」
ますます訳が分からない。
「前世の記憶って私は生まれ変わって今回の人生を歩んだの?」
「そうだよ」
「そんな事ってあるんだ」
考えても理解できない、諦よう。
「ごめんね」
唐突に男の子は私に謝った。
「なんで謝るの?」
「君を酷い目に逢わせたかからだよ」
「酷い目?」
「前回君が迷いこんだ時に早く救いだしていれば5年も昏睡しなくて済んだかもしれなかった。
僕は君が記憶を改竄してくれるのが嬉しくて黙って見過ごしてしまったんだ」
男の子は苦しそうに顔を歪ませて頭を下げ続けた。
「まあ済んだ事だから仕方ないけど、私今何も覚えて無いのよね」
「え、覚えて無い?」
「うん。私いつ、どうやって死んだの?」
「そんな事って...」
男の子は唖然と私の顔を見ている。
「珍しいの?」
「うん、大概は直前の記憶を持って此処に来ると思ってたから」
「そうなの?」
「良かったら教えてあげようか?」
「そんな事出来るの?」
「うん僕は君を通して今回の人生を見てきたからね」
男の子の顔をじっと見つめる。
どうやら本当に出来るみたいだ。
「やっぱりいいわ」
「え?」
「良いのよ。終わった事でしょ?」
「まあそうだけど...」
「1つだけ教えて」
「何を?」
「私の人生幸せだった?」
私の質問に男の子は少し考えている。
「幸せだったと思うよ、少なくとも全くの不幸では無かった。何より周りの人達はみんな君に感謝していたよ」
「良かった...」
男の子の言葉に嘘は全く感じない。
少し知りたい気持ちはあるがきりがない。
周りの人達が全て幸せだったなら充分だ。
「次だけど」
「次?」
「うん次の人生だよ」
「ちょって待って!また次があるの?」
「うん」
またしても衝撃的な言葉、今終わってまた次って、そんな次々にあるもんなの?
「次は君の希望が叶いそうなんだ、でも最後まで叶うかどうかは君次第だ」
「私次第?」
「うん。僕の希望でもあるんだけどね」
「あなたの希望?」
「そうだよ、今回は少し希望通りにいかなくってね、それでも君は今回の人生で一生懸命頑張ってくれた。
その特例かな?」
「特例ってあなたは神様なの?」
「違うよ、でも2回も此処にいると何となく分かるようになるもんだよ」
「どうして分かるの?」
「勘だね」
聞かなきゃ良かった。
「あ、その顔明らかに失望しているな!」
「まあ少しね」
「もう、でも良いや、最後に記憶を渡すね」
「いや要らないってさっき...」
「違うよ今回のじゃないよ前回の記憶、これは決まりなんだ。これをしたら転生が始まるよ」
「そうなの?」
「うん、いくよ!」
男の子の言葉と共に私の頭の中に様々な情報が流れ込んで来る。
「...僕本当に男の子だったんだね」
「そうだよ」
「本当に女の子になれるのかな?」
「大丈夫だよ、だって今君は女の子じゃないか」
「確かに」
「記憶を持っていけるの?」
「それは運次第だ。突然戻るかもしれない、一生戻らないかもしれない」
「そうなの?」
「何しろ2回目だからね、僕が干渉も出来るかどうか...」
「それでも...」
「「ま、いいか」」
僕達は声を合わせて笑った。
「ありがとう祐一君」
「どういたしまして、祐子ちゃん」
「僕は祐子って名前だったの?」
「そうだよ、次は別世界だから新しい名前になるけどね」
目の前がどんどん朧気になる。どうやら時間が来たらしい。
もう祐一君は見えない。
「ありがとう!」
「頑張ってね!」
――――――――――――――――――――――――――――
「梢、そろそろ起きなさい!」
僕はお母さんの声に目が覚めた。
「おはよう母さん今何時かな?」
「もう8時前よ、早くしないと入学式に遅れるわよ」
「大変だ!」
急いでベッドから飛び降りてパジャマを脱ぎ捨てるとハンガーに掛かった真新しい高校の制服を掴む。
「梢、あんた着替えは1人の時にしなさい!」
「いいじゃん別に減るもんじゃなし」
下着姿の僕に母さんは呆れているが別に恥ずかしく無い、だって親子じゃないか。
「梢、準備出来たか?」
呑気な声と共に部屋の扉が開く。
そこに居たのは幼馴染みの川渕和馬君だ。
「わ!梢お前着替える時は鍵ぐらいしろよ!」
「いいじゃん僕とは裸も見せ合った仲でしょ?」
「幼稚園の頃だろ!」
和馬は真っ赤な顔で僕の部屋を出ていく。相変わらず照れ屋だな。
「あんた女の子の慎みを持ちなさい!
それと僕は止めるように何回言ったら分かるの!」
「はいはーい」
母さんの雷を受け流してパンを口に頬ばりながら玄関で待つ和馬と高校に向かう。
「ごめんね」
「もう良いよ、早くしないと遅刻だぞ」
「それは不味いね」
自転車に乗り高校に急いだ。
「高校生活楽しみだね」
「まさか2人共仁政第一高校の難関特進コースに編入合格するとはね」
「本当僕達は普通科を受験したのに」
「感謝しろよ木下梢」
「川渕和馬様にはいつも僕の受験勉強手伝って頂きありがとうございました」
「軽いな」
「重い女は嫌いでしょ?」
笑い合いながら高校の門を潜り駐輪場に自転車を停めて僕達は校舎に入った。
「え?」
次の瞬間私の頭に何かを感じる。
「なにこれ!」
「どうした梢?」
横で心配する和馬を見る。
その顔が別の人に変わる、いや厳密には変わっていない。
しかし違う人が浮かんできた
「浩二君...」
「は?」
「何でもないよ!」
「誰だよ浩二って?ひょっとして梢の好きな人の名前か?」
「違うよ!私が好きなのは和馬...」
「何だって?」
「何でもないよ!」
和馬のお尻を鞄で叩いた。
顔が熱い、血が昇って真っ赤なんだろう。
いつもそうだ、肝心な時に勇気が出ない。
「痛いぞ祐一」
「え今何て?...」
「何か言ったかな?」
「言ったよ、もう一回言ってよ!」
「すまん無意識だから覚えて無い」
(祐一?祐一...どこかで聞いた懐かしい名前)
「どうした?」
和馬が心配そうな顔で見ている。
何か、大切な何かを思い出せそうなのに!
「こら新入生、早く教室に行きなさい!」
その時教師と思われる人の声がして僕達は顔を見合わせる。
「急ぐぞ!」
「うん!」
校舎内を走り抜けようやく目的の教室に着いた。
「ふー間に合った、セーフだ」
和馬が教室の扉を開け先に入る。
次の瞬間僕達の人生が大きく変わるのだった。
ありがとうございました。




