3話 悪託
ハンバーガーって美味しいよね。パン派なのもあるけど
「着いた〜! 俺の愛しの段ボールハウス〜!」
俺は結構歩いて自分の家に辿り着いた。
俺の段ボールハウスはある廃墟にこっそり建てている。7年間見事にバレていない自慢の家だ。
にしてもちゃんとした段ボールハウスで寝るなんて久しぶりだな。
今日は色々あったしもう寝よう。
俺が段ボールハウスに寝転がろうとした瞬間に目の前に現れたのは鳥人間のおどろおどろしい影だった。
「ハッ! まさか!」
最悪の予想が当たった。俺はどうやら…
「ピャアァァ!」
夢魂にストーキーングされていたらしい。
「しまった」
ザシュ!
鳥人間の夢魂は一瞬で壁を抉るほどの破壊力の鉤爪を持っていた。
あぶねぇ! なんとか避けれた! でもどうする? この破壊力がある夢魂から逃れるのは至難の業! 終わりか! ここで! あと少し、あと少しで!
「全うな人になれそうだったのによ!」
「ピャラアァァァ!」
ボン!
「ピャアァァァァ!」
「え? 生きている?」
「大丈夫か? 蘭童!」
俺の目の前に現れたのは時間の夢魂だった。
「時間の夢魂! 何でこんなところに!」
「お前との別れ際にそこの鳥人間を見つけたんでな! とりあえず後をつけさせてもらったらこのザマだぜ!」
「助かった〜」
「ピャア!」
グサ!
鳥人間の鋭い鉤爪が時間の夢魂の腹部を貫いた。
「ゴホ!」
クソ! 俺としたことが! 弱体化した今の身体では超級にも勝てんのか! こいつは恐らくストーカーの夢魂! 超級ぐらいの夢魂、昔だったらザコの夢魂のはずだ!
「時間の夢魂!」
「ピャラアァァァ!」
ドッカーン!
ストーカーの夢魂の超強力な体当たりは時間の夢魂ごと廃墟を貫いた。
「ボォフ!」
なんて破壊力! ストーカーの夢を見る物はこんなにも多いのか!
夢魂はその夢をみる人間の数が多ければ多いほど強くなる! 現代、増えたストーカー被害がトラウマとなり悪夢にうなされる人間が増えたことでストーカーの夢魂はかなりの破壊力を誇る殺戮兵器となっていた。
「時間の夢魂! 大丈夫か!」
「大丈夫、な状況ではないな」
どうする? 時間の夢魂は空腹は凌げたとはいえ身体は元々かなりボロボロだった! そんな中で俺を助けに来たばっかりに! クソ! クソクソクソが!
「蘭童!」
「ん?」
「これを使えー!」
時間の夢魂が投げたのは時間の夢魂特製の剣。その名も時間の剣。
「これをどうしろと!」
「蘭童! 俺と今すぐ悪託を結べ! 俺とお前にバフを付ける悪託を!」
「どうやるんだよ! 悪託って!」
「悪託は自分が悪託を交わしたい夢魂と同じ条件を言った後に悪託を行った側がペナルティを生成する事で成し遂げられる!」
「ペナルティ!?」
「バフを付ける代償みたいなものだ! わかるよ! んなもん嫌だよな! でもこのままだと二人とも死んでゲームオーバーだ!」
「じゃあペナルティってどうするんだ!」
「何でもいい! 好きなペナルティだ! お前が選べ! お前が受けてもいいと思える代償があるなら!頼む!」
俺が受けてもいい代償? そういえば俺はずっと一人だった。親にも捨てられ、行き交う人にはゴミと同じように扱われる。そんな15年間。俺はこの代償だったら…
「俺は! 時間の夢魂と! 悪託を結ぶ!」
「蘭童! ありがとう!」
「俺と時間の夢魂に全てのステータスにバフを付けてくれ! デカいのを! 代わりに俺は…」
「時間の夢魂と死ぬまで絶対に一緒に生きる!」
「ハッ!」
そういえば蘭童、お前はずっと孤独だったな。
「いいぞ! その悪託! 結んでやる!」
これが夢魂狩り、蘭童のスタートである。
何だ? すげぇ! 力が湧いてくる!
「おっしゃあ! ぶちかますぞ! 蘭童!」
「おう!」
「タイム爆弾!」
「爆弾!」
「ピャ?」
3
2
1
「ドッカーン!」
「ピャアァァァ!」
「効いてる!」
時間の夢魂のタイム爆弾。
タイム爆弾は爆発時に相手にダメージを与えるとともにセットした時間分、相手のスピードを変化させる。今、ストーカーの夢魂のスピードが3秒低下した。
「今だ! やっちまえ! 蘭童!」
「おらあぁぁぁ!」
バシュン!
蘭童の時間の剣がストーカーの夢魂の首を切り裂いた。
「ピャアァァァ!」
「酷え断末魔だな。さっさと燃やすかどうかしようぜ」
「蘭童、ちょっと待て」
「どうした? 時間の夢魂?」
「そいつの死骸ちょうだい」
「いいけど、死骸なんて何につか…」
「ガブ!」
「え?」
「え?」
「え? ちょっと、ちょーっと待って! 今〜君〜夢魂〜食べた?」
「うん。食べたけど」
「食べたけど!」
「え、もしかして知らないの?」
「いや夢魂食べる夢魂は始めて聞いたよ!」
「夢魂はな死骸を食うとその夢魂の能力を奪えるんだよ。こいつなら…お! 便利そうじゃん!」
「そいつストーカーの能力だろどうせ」
「好きな姿に変身できるらしい」
「いや何でストーカーの夢魂の能力が変身なんだよ!」
「その方がストーカーがバレづらいんだろ。じゃあ俺はどうしようかな」
「え? 変身するの?」
「うん」
「何に?」
「人間?」
「マジ?」
「大マジ?」
「何で?」
「人間の姿の方が…便利じゃん」
「自分の体が不便な自覚はあったのかよ!」
「あるわ! カンガルーの身体なんて爆弾やらぶん投げづらいし、動き鈍いんだよ!」
「でもどんな姿の人間になるんだ?」
「怪しまれない子供の姿かな」
「おぉ! じゃあもう変身すんの?」
「おう! じゃあいっきまーす!」
「はーい!」
「変身! 発動!」
その瞬間、時間の夢魂の姿がみるみる人間になっていった。
「おし! どうだ!」
「おぉ〜! マジで人間だよ!」
時間の夢魂は身長160cmぐらいの青髪の中学生の姿になっていた。
「姿的に俺と同い年だな」
「あぁ! これでレストランとかに普通に入れる!」
「てかさ、ずっと気になってたんだけどさ」
「どした?」
「夢魂ってマルゲリータとか人の食べ物食べるもんなの?」
「いや、基本極級以上しか食べないな」
「だよな。夢魂が人間の食べ物食べるなんて滅多に聞かないしな」
「話変えるけどさ、蘭童」
「どしたの?」
「俺らさ、悪託結んじゃったじゃん」
「うん」
「悪託結ぶとさ、法律的に夢魂狩りにならないといけないんですよ」
「え?そんな法律あんの?」
「うん。だから折角人間に変身したけど、夢魂狩りやるとなると、時間の夢魂で登録しないといけないから、あんまり意味ないんだよね」
「え、ちょっと待って! 夢魂狩りになるの! 俺!」
「うん」
「マジで!」
「マジです。言い忘れててすまん」
「マジかよ。でも待てよ。夢魂狩りも俺らの今の力的にあんま怪我しないよな」
「バフによるけど多分しないと思う」
「じゃあ仕事もらえるんだったら今だったら案外ありかもな」
「てことは、やるんすか? 夢魂狩り?」
「どっちにしろやるしかないから、やるか」
「ありがとう」
「いやいや。しゃあないしゃあない。あの状況じゃ言うのも忘れるって。でさ、夢魂狩りってどうしたらなれるの?」
「夢魂狩りの本部に行って夢魂狩りライセンスを発行して、登録してもらうだけだ」
「思ったよりすんなりなれるんだな」
「あぁ。だから弱い人間が賞金欲しさに夢魂狩りになるから夢魂狩りの死亡率が年々上がってんだよ」
「時間の夢魂の事を別の夢魂って事にしたら犯罪?」
「犯罪。ワンチャン死刑!」
「死刑! じゃあやめとくか」
「うん。正直に時間の夢魂って言おう」
「なるほどね。じゃあ行くか! 本部!」
「おう!」
俺らは本部に向かった。
夢魂狩り日本支部本部にて──
「ん?あれって、蘭童君? 隣の子供は何だ?」
土屋は偶然にも蘭童の姿を見つけていた。
「すいません」
「はい!どうしましたか?」
「夢魂狩りのライセンスを発行して欲しいんですけど、いいですか」
「分かりました、お名前は?」
「蘭童です。名前は諸事情でなくて」
「分かりました。悪託を結んでいる夢魂はいますか?」
「はい! います!」
「その夢魂の名前を教えてください」
「俺の悪託夢魂は時間の夢魂です」
「分かりまし、って時間の夢魂!」
「はい! 隣のが時間の夢魂です」
「悪託を結んだんですか?」
「はい!」
「分かりました。では、夢魂狩りライセンスを発行します。しばらくお待ち下さい」
「はい」
20分後──
「蘭童様〜いらっしゃいますか〜!」
「はい! 今行きます!」
「こちらが蘭童様の夢魂狩りライセンスでございます。大事に扱って下さい。紛失した場合は直ちに職員にお問い合わせ下さい」
「分かりました。ありがとうございます」
「ふぅー。終わったー!」
「思ったよりすんなり通ったな。人間の姿なのも特に反応されなかったし、土屋のやつ指名手配とか結構ヤバいこと言ってたのに」
「それは、俺の事か!?」
「うわ! びっくりした!」
「土屋さん!」
「蘭童君、夢魂狩りになるのかい? 時間の夢魂と悪託を結んだって本当かい?」
「はい。本当です」
「一体何があったか教えてくれる?」
「分かりました」
それから俺は土屋さんに全ての事を話した。
「なるほど、蘭童君の言うとおりだったらペナルティも大して危険じゃない。特に問題はないか。蘭童君、衣食住に困ってるって言ってたよね?」
「はい」
「夢魂狩りがホームレスなのもまずいし、しばらくは俺の家に泊まらないかい?」
「え! いいんですか!」
「いいよ! 時間の夢魂もそれでいい?」
「あぁ。いいぞ」
「じゃあ決まり! 荷物持って本部集合ね!」
「はい! ありがとうございます!」
蘭童君と時間の夢魂が悪託を結んだのなら多分これから時間の夢魂を狙った刺客に襲われたりするかもしれない。
俺が2人を守らなければ!
「蘭童君!」
「はい。何ですか、土屋さん?」
「これから多分君の人生はかなり大きく動き始める。それでも、例え世界が全て君の敵になっても、俺だけは君の味方だからな! だからいつでも頼れよ! 後輩!」
「はい! ありがとうございます!」
「後、これからは土屋さん、じゃなくて土屋先輩な。分かったか! 蘭童君!」
「はい! 土屋先輩!」
こうして俺の夢魂狩りとしての人生が幕を開けた。
もしかしたら俺の人生はここから始まったのかもしれない。
「時間の夢魂?」
「どうした? 蘭童?」
「もし良かったら親しみも込めて、時間ちゃんって呼んでもいい?」
「じ、時間ちゃん!」
「え、駄目?」
「うーん、まあ別に悪いわけでもないし、いいだろう」
「おっしゃー! じゃあこれからよろしくね。時間ちゃん!」
「あぁ! 頼むぞ! 蘭童!」
6年後──
「こちら大隈! 渋谷の大通りにて超級夢魂を発見! 応援を願いたい!」
「こちら司令部! 了解! 応援を派遣します!」
本部の隣のマンションの一室にて──
プルルルルル! プルルルルル!
「はい! 蘭童です!」
「こちら司令部の中本だ! 渋谷区に超級夢魂出現、応援を願いたい!」
「了解しました。すぐに向かいます!」
「仕事だってよ! 時間ちゃん!」
「待て! まだこのマルゲリータが終わってないんだ!」
「家帰ったら温めたげるからいくよ!」
「仕方ないな!」
「流石蘭童ですね」
「あぁ、この6年で獅子倉一夜に次ぐ最年少で極級夢魂狩りに名を轟かせた実力者だ。期待の星だな」
これから始まるのは俺と時間ちゃんによる夢魂狩りとしての人生の物語。
-夢魂悪託 開幕!-
プロローグは終了です。次回から本編が始まります。お楽しみに!




