その41
一瞬状況がわからなくて、ぼーとしてしまう。ど、どうしよう。
「ま、まってよ」
どうにか声に出していってみたけど、彼は止まるはずも無く、どんどん歩いていってしまう。
よくわからないけど、今、追いかけないともう会えないと感じた。
私の視界から消えそうになっていた彼を走って追いかける。
公園から出そうになっていた所へ追いついて、彼の肩を掴もうとしたら、振り払われてしまった。
彼が言う。
「もう近づかないでくれ」
彼が泣いてた……。
「好きなんだ」
「……」
「くそっかっこわる」
「……」
私の体が自然と動いて彼を抱きしめていた。
「同情すんなよ」
「違うって」
「男としてみれないのはわかってるから」
そう言うと彼が私から離れようとする。離れないように抱きしめる力を強くして、私は叫ぶように言った。
「だから違うって!」
「……なにが?」
切なかった。全部私が悪いのだけど、私の言葉で彼がどれだけ傷ついていたのかを実感してしまった。悲しい、けど、凄い嬉しいよ。まだ好きでいてくれたんだ……色んな感情が溢れて泣けてきた。
「何でおまえが泣くんだよ」
「しょうがないじゃん」
あ~色々考えすぎないで、こうすれば良かったんだ。もっと早く自分の気持ちに素直に行動すれば良かった。彼を傷つけずにすんだかも……少しでも、彼の傷が癒えればと、ただ優しく抱きしめた。
どれくらい時間が経ったのだろうか? 彼が呟くように言う。
「あ、あのさ」
「なに?」
「いつまでこの格好でいるき?」
「嫌なの?」
「そういう事じゃなく……つか、おまえ平気なの?」
「平気だけど?」
「お、俺は平気じゃいれない」
「うん」
「だ、だから離れて」
「嫌!」
「さっきから、わけわからない……」
いいかげん気付いてくれないもんかな?
「つかさ、最近のおまえの行動が意味不明」
やっぱり、ちゃんと言葉にしないとダメだよね。でも、つい言ってしまう。
「ニブイね」
「だからわかんないって!」
ふぅ~。私は一つ息を吐いてから言う。
「あのさ……好きかも?」
「はああ?」
「なにそのリアクション」
「それマジですか」
「マジです。好きになってしまいました」
「……はぁ~。つか、何で2人で泣いてたんだよさっき」
「嬉し泣き?」
「よくわかならない泣きだな」
「そう」
「じゃあ、そっちは嬉し泣きだったのかよ」
「さあ?」
「はぁ~」
彼が力を抜いて私の方にもたれかかってきた。
「ちょっと」
「何も考えられない」
「うん」
「なんだよそれ」
「ごめん。ほんとにごめんなさい」
「いいよ。わかったから」
そう言うと、やっと抱きしめ返してくれた。
「いつから?」
「よくわからない。好きな気持ちも何か良くわかんないし」
「なんだよそれは」
「だって、2人好きな状態になったりしたし」
「うん」
「男の人好きなの初めて出し」
「そっか」
「あのさ、ただ一緒に居たいのそれだけじゃだめ?」
「ダメじゃないよ。うん」
いつの間にか、気付くと周りが暗くなっていたので帰る事にした……どんだけ抱き合ってたんだか……あはは。
まず公園から出ようと2人で手を繋いで歩いていたら、彼がぽつりと言った。
「俺たち凄い遠回りしてねえ」
そうかも知れない。でも、遠回りしたから、今、2人手を繋いでいられる気がした。
「だから、今があるんじゃない?」
「そっか。うん。かもな」
「ねえ」
「なに?」
「さっきの突然だったから、なんだか良くわからなかった」
「え!? ……あ~」
「もう一度してよ」
彼が笑うと私の頭を優しく撫でた。
安心する。自然と笑顔になってしまう。
そして、私はひとみをとじて……。