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187 仲睦まじい双子ロリと一方的で(2)

誤字報告ありがとうございます。

おねえちゃんの鳴き声が、声帯に届く前に喉を鳴らすようになる頃。

顔を離すと、彼女は懇願するように視線を揺らしている。

あまりいもうとちゃんに意地悪をしすぎるのも、そしてもちろんおねえちゃんに心配をかけるのも申し訳ない。


安堵させるように額に口づけて、私はゆるりと振り返る。


そこで『待て』をしていたいもうとちゃんは、刃というよりむしろ剣山みたいな視線で私を刺しまくっていた。

それをまっすぐに受け止めながら、視線もろとも抱きしめる。

即座に肩に噛みつかれて、幼気な力で跳ね除けようとしてくるのを、問答無用で押さえつけつつ押し倒す。


「ごめんね」


づぢ。


と。

皮膚が、肉が、裂けて、抉れる。

小さな子っていうのは思いのほか容赦がない。

幼少期のメイちゃんにぶん殴られて乳歯をへし折られたのはいい思い出だ。

なんというか、力のリミッターがないんだろう。今も割と本気で肩が噛み千切られるかと思うくらい。


だけどせいぜい犬歯が突き刺さるくらいで済んだらしい。


流血に驚いて身をすくませた彼女は一度口を離して、それから唇を密着させるように張り付いてくる。

れろりと踊った舌の腹が血液を舐り、傷口をえぐるように舌先がねじ込まれる。


「ぷ、はぷ、」


密着する口の端からこぼれる吐息。

零れ落ちていく血が制服を汚す。

それを上書きするように、もっと熱い雫が、流れて、流れて。


「ん……ふ……ご、めんなさ、」


震える声の謝罪が触れる。

私は彼女の頬を挟むようにして顔を見合わせた。

口周りを血に汚した彼女は青ざめて、茫然としていて、どうしようもないほどに震えている。


人に傷をつけることが、どうやら彼女をたくさん傷つけてしまったらしい。

まったく本意じゃないことでこんな顔をさせてしまったことがひどく罪悪感を生む。

なんで私はこう毎回愚かなんだろう。


彼女の口周りを舌で綺麗にしてあげて、滑る鉄味を飲み下す。


口づけを交わして舌を混ぜあって、吐息が溢れて瞬きが触れ合う。


「ごめんね、みくちゃん。痛かったよね」

「? ゆみかちゃんのほうが、」

「ううん。ごめん。ごめんね」


もう一度彼女とキスをして、それからもう一度ぎゅっと抱きしめる。

彼女の小さな手が背中に回って私を受け入れてくれて、だからその耳元に声を溶かしていく。


「大丈夫だよ。私、みくちゃんからおねえちゃんを引きはがしたりしないよ」

「っ」


ぴくんと弾む小さな体。

彼女の片手が離れて行って、私の背後で、たぶんおねえちゃんと繋がった。

だってすぐに熱が背中に触れて、ふたりの幼女に抱きしめられたし。


「ただね。わたしは『ふたり』じゃなくて、『ふたりとも』がいいんだよ」


彼女たちは、『彼女たち』としてここにいる。

たしかに双子ちゃんを二人一組として認識しがちなところがないではないけど―――みくるちゃんもいちかちゃんも、ひとりひとりとして大好きなつもりだ。

だけど彼女たちはあくまでもふたりのつもりだから、いい機会だしちょっと認識を変えていきたいとそう思って。


だから、といってあんなやり方は非道だったか……


なんて思っていると。


彼女はぐずぐずとしゃくりあげて。

私の制服でその涙と鼻水をぬぐって。

それからにえらと笑みで見上げた。

その手の中には黒リルカがあって。


「つぎはわたしとあそんでくれるんですよね?」

「えっと、うんまあ、そうだね?」


ぴぴ。

と、買わざるを得ない。

否はないけども。

でもよりにもよって黒っていうのがマズい……気がする。


だってめちゃくちゃにこにこしてるし。

調子に乗った後にどうなるかなんて経験則でさえ積み重なっている。


おおよそ死あるのみだ。


「ゆみかちゃん♪」


にっこにっこな彼女は、おねえちゃんの手を振り払って私を占有する。


「おねえちゃんに『おあずけ』ってめいれいしてあげてください♡」

「……いちかちゃん。ごめん」

「うぅ……」


黒リルカによって指示を受けた私の指示がリルカの効果でおねえちゃんを引き下がらせる。

なんだこの構造。どうかしている。


「うふふ……♡ ゆみかちゃん、はやくべろだしてください♪ おんなのこがだぁいすきなえっちでいやらしいべろ、だしてください♡」

「ぇお」


命令されるままに舌を出すと、彼女の細い指がそれをむぎぎと摘まんだ。

いひゃい……


「わたしをさしおいておねえちゃんといいっぱいたのしんだんですもんね……♡ このろりこんせいはんざいしゃ♡」


彼女お得意の言葉責めだ。

だけどあいにくそんな事実で今更ダメージなんて受けたりしない。

なにせ警察の方にもお墨付きもらってるからね。自首しても捕まらなかったって言うことはつまり合法……ッ!


「アハッ♪ ゆみかちゃんのべろ、ぬるぬるしてとってもかわいいです……♡」


ぬにぬにと舌を弄んで楽しそうないもうとちゃん。

まあ楽しいならいいや、とか思ってされるがままにしていると、指が少し口の中に侵入して、それどころかえずくくらいに奥まで這入って、喉にまで触れる。


「お゛、ぇお゛、」

「どうしたんですかぁゆみかちゃん♡ ゆみかちゃんのだぁいすきなしょうがくせいじょじのおててですよ♪」


毎度思うけどこの語彙力はどうやって育まれてるんだほんとに。

っていうかこれ下手したら本気で出そうなんだけど……え。

いや、さすがにそこまでは……いやでも幼いって時に残酷だよね……?


「うふふ♡ たのしいですね、ゆみかちゃん?」


にこにこと。

わらっていても、鋭い目。


ああ。

私はどうやら本気で怒らせてしまったらしいと。

そんなことを、いまさらになって理解する。


「―――だしちゃっていいんですよ……♡ へんたいゆみかちゃん♡」


……しぬかも。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 黒リルカと白リルカの連携は新しいですね。本当に恐ろしい子…。 それにしても最後、まさかいもうとちゃんにはそっちの属性も…?
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