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レヴァン・オックスブラッドは最高な気分であった。
なぜなら可愛らしい婚約者とは相思相愛で、更には結婚式を目前に控えているからである。
婚約者とは一緒に領地を見回ったり、散策に出かけたりと少しずつ婚約者らしい触れ合いも増えている。
それがもうすぐ妻になるのだ。こんなに可愛くて仕事が出来て自分のことも理解してくれる人が妻になるのだ。
国王陛下には頭が上がらない。感謝の念しかない。こうなると計算していたとしたら恐ろしい。
今日はアイビーと庭を散策している。
笑いながら歩く姿はさながら妖精で思わずどこかに行ってしまうのではと心配になってしまう。
消えないように手をつないで歩くと少し恥ずかし気に笑う。
「不思議なんですの。庭は何回も見たことがありますのに、こうやってレヴァン様と一緒に歩いてみますと、こんなに美しかったのかと驚きますの」
またもや自覚がないだろう口説き文句に胸が締め付けられる。
「…愛している」
「いきなりびっくりさせないで下さいませ。私も愛していますわ」
花嫁衣裳を来たアイビーはどれほど可愛らしいだろう。早く見たい。
結婚式はもうすぐである。
アイビー・ロータスはふと国王陛下から婚約の話を持ち掛けられた時のことを思い出す。
それはレヴァンと顔を合わせる少し前。
城の一室、部屋の窓から訓練を見ていると、明らかに一人だけ動きが違うことに気が付いた。
「おじさま、あの方がレヴァン・オックスブラッド様?」
「そうだよ。レヴァンのおかげで戦いに勝ち、沢山の命が救われた。皆怖がるがいいやつだよ。アイビーが嫌なら婚約はやめるけど」
「…私、嫌ではありません」
「そうなのかい?」
「笑った顔はとっても可愛いらしいですし。怖いとは思いませんわ」
「アイビーは大物だなぁ」
「…婚約お受けしますわ」
「ありがとう。あいつのことよろしくね」
本当に受けてよかった。
あの可愛らしくて恰好よい人が旦那様になるのだ。
本人に可愛らしいというと拗ねて不機嫌になるけれど、そこもまた可愛らしい。
正直愛することはまだよく分かっていない。
でもレヴァン様と一緒にいると心が浮き立つし、暖かくなる。時々喉の奥が苦しくなってキューと胸が締め付けられる。でも、これからもずっと一緒にいたいと思うし、幸せにしたいと思う。
きっと、これが私の愛し方なんだろう。間違っているかもしれないけれど。
父親に手を引かれて歩き出す。せっかくのドレス。裾を踏まないように気をつけないと。
お父様もお兄様もおじさまも泣きそう。お母さまは流石、笑っていらっしゃる。
レヴァン様はというと緊張した顔で私を待っている。早くいって安心させてあげたい。お父様には申し訳ないけどレヴァン様が待っているので、すこし歩くスピードを上げる。
レヴァン様まで、あともう少し。
お読み頂きありがとうございました。