九話「七人のスーツマンとの死闘」
扉の先にいたのは男女七人のスーツの人たちだった。
「来たか。さぁ、始めようか」と口にピアスを付けた男が言う。
「親分。こいつらなんぞ。銃で殺しちまえ」と右隣にいる右耳ピアスの男が言う。
「決めるのは生前のときは親分でしたが、ボスだよ」と左隣りの左耳ピアスの男が言う。
「まぁ、待ちな。私たちが先に行くわ」と右目にアイパッチをはめた女が言う。
「いいよね、ボス」とアイパッチを逆側に付けた女が言う。
「ボス、お呼びだぜ」と右端にいた腰に剣を付けた男が言う。
「あっ……すまん。寝てた……っていうかボスを左端に置くのはおかしいだろう。あぁ、眠い。好きにやりたまえ」と言う男はスーツのズボンのベルトを利用して銃や剣をあらゆる隙間に入れている。それよりも背中に背負っている黒い箱であった。
「あぁ、だるい。血を見たくねぇ者は適当に隠れてろ。俺らが奴らを殺す。同じ殺し人として役目を果たすのなら、消える償いぐらい受けてやるよ」
目の前にいたのは言った茶色のコートの男などが立っていた。もちろん、小宮さんもいる。自分の記憶の黒い影がじんわりと解け始めた。私の手元には武器がない。
「おい、君。これを持って戦え」と茶色のコート男が言う。
私はピアスの三人を知っている。ガムの話に出てきた三人だ。ならばここで黙って見てるわけにはいかない。もちろん人を殺すことはしたことがないが、武器があるなら戦ってやろうじゃないか。
「よし、行くぞ」と彼の掛け声で敵に襲いかかる。
私たちはここで激しい争いを起こした。私は殺すことがやはりできなかったが、殺す手助けと敵からの攻撃を防ぐことはできた。しかし銃に討たれて死んだ者や剣に斬られた者もいた。敵も消えていった。ついでにピアスの奴らが私のことを覚えてないことは悔やんでしまった。とにかく自分たちが思うことはただ一つ。
《消えるなら消してしまえ。》
こうして争った結果、敵の数はボスと呼ばれた男だけになった。それに対して私たちは隠れていた人数が荒井さんを含めて三人だったが現在は不明だ。だがここにいるのは九人いたのが七人になった。もちろん小宮さんも茶色いコートの男もいる。
「おや、やっと荷が楽になる」と私たちに気が付いたボスの男が言う。黒い箱は棺だった。奴はそのふたを外した。
「おはようございます。私の愛しの妻よ」と言うとそこにいた者は棺から立ち上がる。
赤色の髪の毛に目はなくドレスも赤い。何よりも血の臭いが漂う。肌は意外にも人間らしい色をしている。彼女は右手を口に突っ込む。そこから出てきたのは赤い血がべっとり付いた剣だった。
「この女は化け物だ」と四名が同時に言う。
「化け物だって。私は赤い血が……」
「私の妻を化け物と言うな」と彼女の言葉を遮ってボスが彼らに向かって剣を振ろうとする。
「たとえあなたであってもこれは私の好きな物よ」と彼女は言ってボスと呼ばれた男を腰あたりに真二つに斬ってしまった。
「赤い血。赤いドレス。赤い夫。なんて幸せなんだ、私は」
「この女は狂ってやがる」と周りにいた男が言う。
「うるさいのは嫌いよ」と彼女は言って男を含めて周りにいる四人をものすごい勢いで殺した。
「おいおい、冗談じゃないぜ」と茶色い服の男が言う。
それと同時に私の黒い影か黒い革靴に灰色のズボンと白いシャツに血がしみているのを隠すかのように茶色いコートの半分ぐらい、つまり心臓の辺りまで見えてきた。血は私の血だろう。私を殺したのは横にいる彼か。いや、まだ確かな情報とは言い切れない。
私が考えていると銃声が鳴り響く。目の前にいる女の頭から赤い血が流れる。ミントのガムの味がしなくて困っていたところだった。しかし銃を撃ったのは彼じゃなかった。後ろで銃を持った理沙さんが立っていた。
「やったわ。血を見たくないけど当たったわ。日本の憲法で武器を使ったら捕まるのよね。でも今は……逮捕されないよね」
「どうせ、消える運命を持ってるんだ。まぁ、生き残れたら逮捕だろうな」と理沙さんの言葉に応じて茶色いコートの男が言う。
「赤い血。赤い血。そうか、私自身を殺せばいいのね。うふふふ。痛くなんてない。むしろ快感よ」
赤いドレスの女性は自分の体を自分でナイフを使って切り刻んで血を出していた。その光景は酷かったが、次第に消えていったのである。




