六話「鉄パイプの男の剣術」
また天井から声が降りかかる。
『いやぁ、二十一人も残っていらっしゃったとはお見事。今回は相手が動物で良かったものの次は人間が相手です。今からあなた方にサービスとして言い渡します。今から落ちている武器を使用してもいいです。さぁ、中へとお進みくださいませ』
私たちはまた扉の先へと誘導される。その扉の先にいたのは鉄パイプを持った男が立っていた。近くに同じような鉄パイプがあちらこちらに転がっている。
「よう、人間ども。俺はお前らのような人間風情がやる剣道のやり方に反吐が出る。なんで木を使うんだ」
「はっ。なんだよ、貴様。そんなお前に良い物を味わせてやるよ。鉄パイプと木刀、どちらが強いか見せてやるよ」
白い粉がかかった緑色のジャージのおっさんが木刀を持って前に現れる。
「あのう……。やめておいた方がいいですよ」
私は彼に忠告した。後のことは知らないと言いたくなるほど両者から殺気が漂う。
「出しゃばり野郎は黙ってな。これは俺の戦いだ。おい、そこの鉄野郎。俺の名は大崎影親。親しいと書いて“ちか”って読むんだよ。影と親しくなるには近くならなくてはならなきゃいけねーんだ。影は後ろを取るのが好きなんだぜ」
「影親か。面白い名前に加えて無駄口の多い奴だな。我が名は自称鉄の神だ」
「知らんがな。ボケ野郎が」
「悪いな。調子に乗ってしまったが、お主の負けだ、影親君」
気が付いたら大崎さんは木刀を折られ、腹から血が染みていた。どうやら斬られたようだ。一瞬の出来事のように彼はそのまま消えてしまった。
「俺の名は本当はない。いや、ここの塔にいる者はお前たち以外名前なんてない。むしろ必要としてねーんだよ。俺らの目的はただ一つ、お前らを一人残らず消すことだ」
私は近くにあった鉄パイプを手に掴んだ。
「おい、小僧。俺とやり合う気か」
「いや、別に。ただ持ってみただけです」
「ふっ。面白い奴だな」
「すきやり」
足音がしたとしたら先ほどライオンを倒した小宮さんがさっきの血の付いたナイフを彼に刺そうとした。しかしそのナイフは彼が持っていた鉄パイプによって弾かれてしまった。
「何だ、小娘。女が刃物を持つ時は人を殺す時ではない。自分の心を刺し殺す時だ」
「いつの時代の説教よ」
「戦国時代の侍時代の説教だ。だが男は女を殺すことだって可能だ」
無意識に私の体は動き出した。まるで彼女を庇うかのように。彼女が話している間に自分のポケットに突っ込んでいた三個のうちの一個のミントガムを食べたおかげだった。