三話「運命という名の奇跡」
なぜ黒い影が起きたのかは分からない。考えられるのは自分で記憶を消したか、誰かに記憶をいじられたか。しかし見た感じ自分の体をいじられた感覚はない。それどころか刺されたはずの痛みさえない。ただ自分が持っていたリュックと腕時計はない。青いジーパンに黒い靴、Tシャツの上に着た灰色のジャケットといったように服装は殺されたときのままだったが、服の切り込み等も付いてない。傷口から熱と激しい痛みに襲われていたはずなのだが。
「あのう、大丈夫ですか」
女性の声に私は今の世界に戻された。まぁ、とにかくやることは一つ。消されないためにここで勝つことだ。
「あっ。すみません」
「もしかして君も記憶を探っていたの?黒い影出てきた?」
「えっ、黒い影について何か知ってるのですか」
「知らないわよ。私を自殺に追い込んだ記憶なんて……」と彼女の瞳から静かに一滴だけ頬に向けて流れていた。
「ごめんなさい」
「そんなことよりもカードを出すわよ。いっせーのせ」
彼女の言葉に合わせてカードをポケットから取り出す。そのときポケットのカードから静電気が当たるような感触がした。
「ありがとう。あなたのおかげでまだ消えずに済みそうね」
私は彼女の言葉に共感した。彼女が出したのは最小の数字である一に対して、自分が引いたのはジョーカーだった。これが運命というものなのか。
そして私は彼女の隣に立つ。急に自分の肉眼で見える白い階段が現れた。これがさっきまで見えなかった透明の階段の正体だった。
”まだ私は知らなかった。運命のいたずらとこのゲームの本当の目的を”
私たちはこのまま上って行く。天井にぶつかると思ったが、そのまま私たちの頭は天井の上をすり抜けていく。度々下を見ようとしたが、天井に頭を捕まれながら歩かされたと言った方がいいのだろうか。とにかく見ることは出来なかった。それにそうする気を起させないアクシデントが起こった。