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第12話

司達が、夜警の仕事を始めてから1年が経った頃。再び、おかしな自体が起こり出していた。遥か昔、ロボットが叛乱を越したのと同じような現象だった。人々は口々に、ロボット対人間の全面戦争も近いとささやいていた。この間、ロボット側は独自のネットワーク網を作り出していた。だが、久美子と宥嶽は、そのチップを積んでいなかったので、ネットワーク網に入る事ができなかった。


さらに、半年後、ついに、恐れていた事態が起こった。その事件は、司達がいた研究所、ロボット開発研究育成センターが、最初だった。そこの全ての研究員が、惨殺されていたのだ。犯人は、不明。非常に鋭利な刃物で、首を皮一枚でぶら下がるようにして吊るしてあったのだ。それを発見した人は、すぐに警察に連絡を入れたが、その人も、犠牲者の一人になった。警察側は、この研究所に、当時いたロボットを捜査したが、一切の証拠は得られる事ができなかった。そうこうしているうちに、国立ロボット教育創造センターが、次の殺人の現場になった。そこにいた、研究員が、精確に3cmのばらばら肉片になって発見された。DNA検査によって、どうにか、本人と確認されたが、体の90%以上が、どこに行ったか、結局分からなかった。


「いやだね〜、こんな事件って…」

「ここ、私達がいた研究所でしょ?そのままいなくてよかったじゃない。あのままいたら、私達まで殺されているわよ」

「犯人は、以前逃走中…か。ま、ここに来る事はできないがな」

司達は、あの、久美子を起こした地下研究室に、いろいろな家具を持ち込んで家を作っていた。校長が開けてくれた部屋は、教室一つ分ぐらいあり、そこに、仕切りを持ち込み、部屋を作ったのだった。仕切りを動かせば、すぐに、部屋を大きくしたり小さくしたりすることができた。彼らは、その中央の場所を、居間にして、テレビやソファーを持ち込んでいた。

「結局、あたし達、あの研究所で何をしたんだっけね〜…」

「何もしてないと思うよ。私達の利益になる事は、何も」

美春は、遠いところを見ていた。ただ、じっと、一点を注視しているようだった。

「どうしたの?美春。なんか、遠いところを見ちゃってるけど…」

テレビでは、国会が、税金の使い道について喧々囂々、論議をしている所だった。周りには、司と美春、達也と玉緒の子供がはしゃいでいた。彼らは、仲が良かった。

「こらー!あまり、走り回るな!迷惑だ!」

司が、怒った。

「はーい」

子供達は、返事をして、どこかに出て行った。高校の授業は、既に終わっており、闇の帳が下りていた。


「やれやれ、もうそろそろ、見回りに行くか」

「そうだね〜」

ソファーでもたれあって眠っている、玉緒と達也を起こして、6人で見回りしに行った。


「そう言えば、子供は、どこに行った?」

「あ」

誰もが、その存在を忘れていた。

「そうか…あいつら…どこ行っただろ」

とりあえず、一行は、一通り見周りをしながら、探す事にした。


「おーい、どこいったー?」

達也と玉緒は、そこは、理科室だった。生物室として利用されていたこの部屋は、今は、物置と化していた。そこで、トランプをしている子供達を見つけた。

「あ、お母さん。見つかっちゃったね」

「あ、じゃない!さっさと帰るわよ」

彼らは、子供を連れて、見回りが終わった後、地下室に戻った。


達也と玉緒が帰ってきたら、すでに、他の4人は帰ってきていた。

「おかえり」

「ただいま〜」

テレビを見ていた彼らは、その内容を考えていた。

「あちこちで、国立ロボット教育創造センターが作ったロボット達が、人を殺しては、どこかに消えているそうよ」

「…そう」

久美子は、何か考えていた。しかし、誰もその事をあえて聞かなかった。

「そう言えば、久美子と宥嶽は、どこで作られたんだろうね」

「ボクは、ここ。旧ロボット研究所。生まれも育ちもね」

「オレ自身は、箱根の方の研究所で、生まれて育ったな。今は、どっちの研究所もなくなっているけどな」

「そうだけどね。とりあえず、確認よ。でも、なんで、こんなことをし始めたんだろう…」

「わからん。オレや久美子が分からん事は、ロボットじゃない、司、美春、達也、玉緒にも分からない事だろう」

「そうね…とりあえず、これで、今日はおしまいよね〜。もう、寝ない?」

「あ、そうね…みんな〜、もう寝る?」

子供達は、みんなで、一つの部屋に入れ、そのまま、こっちに返事を返した。

「もうちょっと、待って〜」

「だとさ」


結局寝たのは、翌日の午前4時ごろだった。


そして、それから、10時間経った、午後2時。臨時速報が、全世界に流された。それは、ロボットが、独立宣言をすると言うものだった。独立した後の国家名は、ロボット共和国。その国は、ロボット達のみの共存を目指す事を国是として、人類は、その敵として見られていた。そして、司達にも、戦争の波が来た。


「で、俺達は、どちら側につくかって事ですか?」

「そう言う事ね」

校長は、司達に対して、ロボット共和国側につくのか、それとも、人類圏のままなのかの確認をしていた。

「…俺達は、どちらにもつきません。俺達は、ロボットの親友もいる。人間の親友もいる。どちらを取れと言われても、取る事はできません」

「そう…仕方ないわね。今日を以て、あなた達は、夜警の職から解きます。これは、理事会で決定された事よ。人類圏に入らない場合は、切り捨てろって…」

「校長…分かりました。では、これで」

達也が最初に立ち上がり、それにつられるように、みんな立ち上がり、外に出て行った。残された、校長は、一人で、悩んでいた。このままでよかったのか、本当にこのままでいいのか…


「でもさ、子供達は、実家の方に預けるとして、私達は、どうしようか」

「う〜ん、もう、十分親に迷惑をかける事になるから…自分達でどうにかするしかないな」

「じゃあさ、俺が作った秘密基地で、計画を練ろう」

「秘密基地?」

残り5人の声がきれいに重なった。

「とりあえず、こっち」


達也が案内したのは、第2次世界大戦の時、作られた防空壕だった。

「ここ、研究所で働いていた時に格安で買った土地なんだ。ちゃんと、地権書もあるし、俺自身の土地だと、法的にも証明出来る」

「じゃあ、ここが、あたし達の家になるんだね」

「この家の名前、どうしようか…」

美春が言った。そして、考えた後、「ロボットと人間の楽園」と言う名前に決めた。そして、この家から、世界を変える事を、この、雨漏りがしそうでしない家でした。


世界は、大きく変わろうとしていた。その非常に太い潮流に巻き込まれながらも、彼らは、もがいて、自らの個性や特徴を守ろうとしていた。

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