EXP.91 銀髪伝説 その6
【アルトニア視点】北側
「思考に耽るとは俺も馬鹿にされたものだな」
銀髪の少年は大振りの双刃刀をひょいと躱す。
「そんな事で怒るなんて意外ですね……」
「つい、カチンときたんでな」
と言うのは口実で、あまり時間を与えてはこちらが得策では無いからだ。
俺の使用するスラスターブレードは通常の魔術武器より重量感があり、それを振り回すのにはかなり体力がいる。
ゲーム故に体力とは無縁の様に感じるが肉体的、精神的な疲労感は勿論ある。
その為、疲労で判断が遅れ負けるなんて事は良くある。故に持久戦に持ち込む事は容易いが、得策ではない。
ならば何か策を練られる前に倒すのが賢明だろう。
しかし……あの魔術武器の効果が不明である以上、下手に手を出せば負ける。
相手の武器を意識して構える。すると、少年は右手のみ片刃刀を逆手に握る。
「飛翔」
突風と共に飛んで来る少年を盾で遮りカウンターを狙う。
しかし少年は止まる素ぶりどころか右手を伸ばし左手を胸に寄せて、寧ろ攻撃の体勢を取っていた。
…
【ユウキ視点】北側
やはりカウンター狙いか……なら、
『韋駄天』
初級両手スキル【韋駄天】
身体を回転させ電動カッターの刃の様に相手に斬りかかる。
突風と共に回転斬りを盾にぶつける。
振り抜かれる双刃刀を躱し距離を取ると盾に罅が入り砕ける。
楓月さんの話ではオールブレードの刃は『韋駄天』などにも対応できる様に他の魔術武器に比べて頑丈に出来ているらしい。
ここで耐久値の差が現れる。
そして盾を形成する時間を与えない様に空かさず斬り込む。
アルトニアさんに向けて左手の片刃刀を投げ双刃刀で弾かせ右手の剣を持ち直し上段から斬りかかる。
避けたアルトニアさんに素早く大振りの攻撃を仕掛け背後に下がらせ壁際に追い込む。
アルトニアさんが壁で背後に退がれないのを確認して飛び蹴る。
左に躱したアルトニアさんとの距離を目で測り、足からブレードの伸縮範囲を全開にして壁の中を這わせて首を狙う。
しかし相手は、僕の足が壁に密着している事やそこから罅が入っている所を見ており、ブレードが飛び出すと同時に壁から飛び退く。
そして間合いを取られたのを確認して思考を練る。
魔術武器は主に二種類に分かれるらしく、一つはアルトニアさんが使う様な形を固定する物……変形もタイプ別で出来るうえ消費量などが毎回同じで把握しやすい。
もう一つはオールブレードの様な変幻自在な物、こちらは硬さと長さが反比例する為に状況に応じて調整ができ消費量なんかも調整できる。
しかし反比例する故に安定させるのも難しく、これだけを習得するのに丸一日もかかるほどだ。
まあ、それは置いといて特性を活かした攻めで無理となると……キツイ。
勝つにはあと一歩足りない、相手の慎重さが薄まれば……。
至難しながら相手の表情を伺うと僕とは対照的に相手の顔から悩みの色が消えている。
……よし、これで勝率が勝利に変わった。
右手の片刃刀を強く握りしめ左手の剣を相手に向けて投げた。
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