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ビーシュリンピア  作者: クラウンデイジー
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水色魔石もどきの成型

出来上がった水色魔石もどきの効力と使い方を考える二人。

魔石開発が成功し、水色魔石もどきが出来た。だが、問題はまだある。


出来上がった水色魔石もどきはジワリジワリとしか水を出さない。掌に収まるくらいの大きさの魔石ではコップ一杯の水を溜めるのに半日はかかるだろう。王宮に集められた平民は数百人。それだけの人々が飲み水や生活用水として使うにはどれだけの魔石が必要になるのか。リューグはこれまでの準備期間の生活を振り返った。


「水が出るのは良かったが、王宮で使うにはこれでは全く足りないな。せっかく水が出ても、一旦、水が枯れてしまえば、魔石の効力は発揮できなくなるからな。」


水色魔石はドラゴンの井戸の水に触れている間のみ、水を出す効力を発揮するのだ。水を使い切ってしまうことの無いよう、たっぷりと水を溜めておけるような仕組みが必要だ。


「おにいちゃん、お貴族様から水を貰うときはどうやっていたの?」


「持って行ったコップに一杯もらって、足りなければ、また、並ぶ。」


「え・・・、一回にコップ一杯だけって。みんなそんな感じ?それじゃあ、水を出してくれるお貴族様は一日に何回魔石を使ってくれたのかしら。一度にたくさん出すなら回数が少ない分、少しは手間が少なかっただろうに。お貴族様たちも本当に大変だったんだね。」


「そうなんだ。魔石は使い初めが一番力を使うから、出来たらどこかにたくさん溜めておきたいって何回か言われたんだけど、みんなコップしか持っていなかったからさ。飲みたいときに毎回並ぶしか無かったんだよ。帰ってくる少し前、お貴族様たちが移動して来た時に、これからは瓶に溜めておけばどうかって話が出ていたよ。」


「瓶ねぇ。」


セイリアは調合台の横にある瓶を見た。この瓶は毎日、庭の中央にあるドラゴンの井戸の水を汲み運んでくるので、セイリアが胸の前で両腕で抱え込める位の大きさだが、腰から首元くらいまでの高さがあるので、瓶一杯に水を入れてしまうと重すぎて持ち上げることすら出来ない。


「用意する瓶はこの瓶と違って、床から腰の高さ位はあるものなりそうだったけど、瓶も一つでは足りないだろうな。」


「その大きな瓶でも王宮の平民がみんなで使ったら一瞬で水が無くなるわね。さっき作った魔石の大きさじゃあ水を溜めるにしても時間かかりそう。まだまだ、問題ありね。」


平民が使う瓶が大人の腰丈くらいの高さがある物として、そこに並々と水を溜めておくよう保つには、どれくらいの水色魔石もどきを準備すれば良いのか。食事時など、ひとたび水を使い始めれば一気に水は無くなる。ただ、水を使わない時間には水色魔石もどきからどんどん水が出るので水は増える一方。容量を超えれば瓶から水が溢れることになるだろう。だが、王宮の庭に水をダダ流しにする訳にもいかない。


「じゃあ、瓶をいくつかに置いて、朝用、昼用、夜用とか用途を分けて、使う時間以外は水を溜める時間にするのは?」


「それでも良いけど、使う量は均等じゃないんだよ。夕方が一番たくさん使う。でも、そもそも、そんなに大きな瓶あるかな。」


「水を溜められるだけの魔石も作らなきゃ。いくつあれば足りるのかしら。」


「とりあえず、水が瓶から溢れないようにするには、ある程度溜まったたら魔石を水から出せば良いよな。そうしたら、それ以上は溜まらない。でも、水の量を十分に保つ方法は・・・」


リューグが手に取った水色魔石もどきを受け取ったセイリアは、水色魔石もどきを両手に一つずつ持って見比べてみた。リューグが作った水色魔石もどきは柔らかくは無いが爪を立てれば跡がつく程度の硬化度合いだ。セイリアが作った水色魔石もどきは持ち上げた感触でカチコチに硬い事が分かる。石の温度もリューグの方は常温だが、セイリアの方はひんやりと冷たい。もしかしたら、魔石の効果にも違いがあるかもしれない。


セイリアはリューグの作った魔石を握り、その拳を井戸水の瓶にジャボンと浸けてみた。水色魔石もどきからジワーっと水が湧いてくる感触がある。セイリアの作った魔石も試してみると、湧いてくる水が少し冷たい感じがするが、湧いてくる水の量は同じくらいのようだ。


次に、二つ一緒に握ってみると変化があった。リューグの作った魔石が柔らくなったのか、いや、溶けているのか、ヌルっとした感覚が魔石を覆い始めた。水から取り出してみると、やっぱりリューグの魔石は表面が溶け出しているように見える。手の平の水が水色になっている。ただ、それはセイリアが握っている時だけで、金属の器に置くと溶けるのが止まった。器には溶けた魔石の水色の水が少しと井戸の水が少し混ざり合っている。


セイリアの横から調合台を挟んだ向かい側へ移動したリューグがその器を見たが、訳が分からないだけだ。


「魔石が溶けるなんて初めて見る。」


「私も。」


セイリアが再び二つの水色魔石もどきを一緒に握ってみると、溶け始めたリューグの水色魔石もどきがグニャリと粘土のように柔らかくなった。それをセイリアの水色魔石もどきを覆うように捏ねると、今度は次第に硬くなっていった。


「二つの魔石が、一つになったわ。」


合わさった二つの魔石はゴツゴツと歪な形をしている。色は最初に作った時と同じく水色で全く透き通っていない。


「これ、さっきよりも大きくはなったけれど、不格好ね。納品する魔石としては美しくないわ。」


「効力さえあれば形なんてどうでも良いと思うけど。」


「これを良しとしたら、受け取ったお貴族様たちに私の美的センスを疑われるじゃない。」


「ふーん。じゃあ、もう一度やり直したらどうだ。もう一度、水の中で握ったら、成型し直せるんじゃないか?」


「名案!」


セイリアは変な形に固まってしまった魔石をもう一度瓶の中に入れてリューグの魔石が溶けるのを待った。だが、今度は溶けない。水が出る量は一つの時の倍以上出ていることは良かったが。


「だめだ。固まっちゃうともう直せないみたい。」


「じゃあ、もう一度、最初からやり直しだな。」


「マジかぁ。」


セイリアはガックリと肩を落とした。「最初からやり直し」は、セイリアの苦手分野なのだ。でも、仕方ない。二人は水色魔石を作るところから、最初からやり直した。そして、やっと、瓶の中で二つの魔石を握るところまできた。


「セイリア、今度はこの少し大きめのボールでやってみて欲しいんだ。どうなっているのか、俺も見たいんだけど、瓶の中でじゃあ見えないし。」


「了解よ。」


調合台の下の戸棚からセイリアは両手が余裕で入るだけの大きさの金属のボールに魔石と井戸の水を入れて、両手で二つの魔石を握りしめた。魔石は手の中でヌルっと溶け始め感覚を合図にセイリアは二つの魔石を揉み解すように纏めた。だんだんに感触が二つから一つになり、両手の掌を開いてコロコロと転がすと魔石は丸くなった。そして、しばらくすると、二つの魔石は元の魔石の二倍の大きさの丸い水色魔石もどき第二号が出来上がった。


「凄いな。」


「ホント。びっくりね。」


「真ん丸だな。それにしてもこんなに綺麗に一つになるとはな。あと、水は出るのか?」


「出る。魔石は二つ分、二倍の大きさだけど、水はもっと出るよ。ほら」


二人が話している間に、半分以下だったボールの中の水が見る見るうちに増えていき、今にもボールから溢れ出しそうになっている。


「ヤバい。今度は調合室が水浸しになっちゃう!」


セイリアが慌ててボールを流しへ移そうとした目の前にリューグの手が伸びて、ボールの中から魔石を取り出した。しばらく魔石から水が滴った後に水は止まった。ボール水はあふれる寸前、表面張力で淵よりも少し盛り上がっているが、零れてはいない。


「良い勢いで出ていたよね。」


「そうだな。一つじゃ足りないと思うけど、必要な量が分かればなんとかなるかも。」


「良かった。」


リューグが王宮に戻る前になんとか水色魔石もどきが完成したし、使える目途も立ってきた。「本当に良かった」と心の底からセイリアは思った。水が必要になる度に貴族に頼まなければならないなんて、飲み水すら自由に飲めかったのでないだろうか。この暑さの中、炎天下の仕事なのに。


ただ、安心するのはまだ早かった。まだ問題が残っている。瓶だ。一日に必要な水の量が分からなければ、水を溜める瓶の大きさも魔石の数も決められない。それに、水色魔石もどき第二号はリューグの魔石が無いと作れない。


「お兄ちゃん、とりあえず、ここにいる間にお兄ちゃんの水色魔石もどきを出来る限り作ってよ。」


「ダメだ。魔石職人はセイリアなんだ。魔石の作り方はすべて、シュリンピアで唯一の魔石職人が把握していないとダメだろ。それに、いつかは誰かに引き継いでもらわないと。俺がいつまでも手伝える訳じゃないし、セイリアだって永遠に生きていられないんだ。」


「そうかもしれないけど。」


「これから先、地下での生活をするようになるなら魔石はもっと必要になるだろう。そのうち、セイリアだけでは手が足りなくなる。その前に、弟子を取った方が良い。先のことを考えるんだ。」


リューグは急に真剣な顔になった。


間がだいぶ空いてしまいました。次は1週間後くらいに更新できたらと思っています。

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