閑話2 ある父親の回想
かなり短めです
突然だが、エンカだ。エンカ・ベールだ。
わざわざ私の話を聞きに来てくれて嬉しいと思う。
さて、今日話すのは、私の息子、セルについてだ。
セルはまだ4歳なのに、グランドラゴンを狩ってくるほどの実力だ。
信じられないだろう。オレも信じられなかった。
まあ、2歳くらいの時から薄々気が付いてた。こいつは天才だって。
2歳なのに、言葉を完全に理解し、本も読めていたのだ。天才としか言いようがない。
そんなとき、私は夢を見たんだ。妙にリアルな夢だった。
その中で、女神と名乗る女が出てきた。妻がいる身でいうのも何だが、美人だった。
その美貌に見いっていると、唐突に女神が口を開いた。
「あなたと妻の間に産まれた子供は、特別な子です。どんなことでも、乾いたスポンジのように吸収していくでしょう。彼は、世界を変えてくれます」
表情を全く変えずに、女神はこう言ったのだ。
「世界を……変える……?」
「そう」
確かに、セルは特別だ。しかし、そこまでの実力があるのだろうか。勿論、その時はそう疑った。
「しかし、彼はまだ経験が足りません。彼に色々な経験をさせてください」
そのとたん、目の前が暗転して、気付いたらベッドの上だった。
その後、セルにキツイトレーニングを課してみた。とても2歳に出来るとは思えないようなものをだ。
しかし、彼はやって見せた。
その時、私は悟った。
私の息子、セルは、本当に世界を変えてくれるのだと。
それから2年間、段々キツくしながらトレーニングを続けさせていった。
気が付いたら、セルの運動能力は私を越えていた。また、Aランク以上の実力を持っていた。
そして、私はセルにそれらのことを伝えて、初めてのモンスター討伐に出掛けさせた。
最初は嫌がっていたセルもようやく出掛けてくれた。目的地はルーク草原の奥地だ。
そう、グランドラゴンの住みかである。
いきなり無謀ではあったが、あいつなら死ぬこともあるまい。
また、経験をつませろと女神に言われていたから。
しかし、予定よりも早く帰ってきたのには驚いた。しかも、エリクサーも取ってきたので、倒してきたのは明確だ。
まあ、こういうことを話せば、セルがすごいということは明らかであろう。
そして、次が驚きなのだが、まあ、誰にも言わないでおいてくれ。機密事項何でな。
何と、ルーク草原にセルを行かせた次の日の朝、セルが、エルフを連れてきた。
……驚いただろう。
私も初めて見たよ。綺麗な少女だった。
おっと、勘違いするなよ。ロリコンではないぞ。
で、セルが相談してきたのだ。
ルー(エルフの少女の名前)がエルフだということを隠しながら、家においておくことはできないかって。
勿論OKしたよ。
全く、エルフの少女にあんなに慕われるとはな。
セルには奥が見えないよ。