第20話 女公爵から、本気の求婚を受けました
祭りの翌日、三枝宗一郎は朝から自分の右手を気にしていた。
別に怪我をしたわけではない。
包丁も握れるし、鍋も持てる。前日の屋台で四百五十本もの肉串を焼いたせいで腕全体に重い疲労は残っているものの、仕事に支障が出るほどではなかった。
問題は、手そのものではなく記憶だった。
人混みの中でレティシアに握られ、そのまましばらく手を繋いで歩いた。
夜には、自分から握った。
そして焚き火の前で、互いに異性として意識していることまで確認した。
「四十二になって、手を見ながら昨日のこと思い出すとは思わなかったな……」
「何を思い出しているんです?」
「うわっ」
厨房の入口から突然声をかけられ、宗一郎は肩を揺らした。
ニーナが籠を抱えて立っている。
「驚きすぎですよ」
「気配なく入ってくるのやめてくれる?」
「普通に表から入りました」
「そうだった?」
「三枝さんがぼんやりしていたのでは?」
「……否定できない」
ニーナは持ってきた葉野菜を作業台へ置き、宗一郎の右手へ視線を落とした。
「手、どうかなさいました?」
「何でもないよ」
「昨日、レティシア様と繋いでいた手ですよね」
「朝から刺してくるなあ」
「私は事実を申し上げただけです」
「ガレスさんの悪いところまで覚えたね」
宗一郎は逃げるように鍋へ向かった。
今日は祭り翌日なので、食堂を休みにしようかとも考えた。
しかし仕入れてある食材もあるし、祭りで店を知った客が来る可能性もある。結局、昼だけ通常営業し、夕方以降は休むことにした。
「公爵様、今日は来るかな」
考えるより先に口へ出ていた。
ニーナがすぐ反応する。
「気になるんですか?」
「昨日かなり働いたでしょう。公爵なのに屋台で」
「はい」
「しかも夜まで祭りにいたし、今日は仕事もあるだろうから、疲れてるんじゃないかなと思って」
「そういうことにしておきます」
「その言い方やめて」
宗一郎は根菜を切り始めた。
今日の献立は、胃を休ませる意味も込めて豆と野菜を多めにした鶏肉のスープにした。祭りの翌日は肉や酒を大量に口へ入れた者が多いだろうと考え、普段より少し軽い味つけにする。
こうして料理をしている間は落ち着く。
切る。
煮る。
味を見る。
やることが決まっている。
恋愛のように、相手が何を考えているのか延々と悩まなくていい。
「俺、やっぱり料理の方が簡単だな」
「何と比べてです?」
「聞かないで」
昼になれば、予想以上に客が来た。
祭りで肉串を食べたという旅人。
以前からの常連。
騎士団の若い連中。
中には、屋台で売っていた串が今日もあると思って来た者までいる。
「すみません、あれは祭り用なんです」
「店じゃ出さないのか?」
「仕込みが大変なんですよ。いつか出すかもしれないけど、今は無理」
「じゃあ閣下が焼いた串だけでも」
「もっと無理です」
「高くても買うぞ」
「公爵様を観光資源にしないでください!」
店中に笑いが起きた。
昨日までなら、その笑いの中心にレティシア本人がいた。
だが今日は来ない。
宗一郎は忙しい合間にも、何度か扉へ目をやった。
正午を過ぎる。
来ない。
一時になった。
まだ来ない。
「三枝さん」
ニーナが小声で呼ぶ。
「何?」
「入口を見るの、今日何回目です?」
「そんなに見てないよ」
「八回目です」
「数えてたの?」
「はい」
「仕事して」
「しています」
「俺もします」
少し恥ずかしくなり、宗一郎は厨房へ引っ込んだ。
考えてみれば、毎日来る方が異常だったのだ。
公爵である。
領地経営が本業なのだから、食堂へ来ない日くらい当然ある。
それでも、来ないだけでこんなに気になる自分に、宗一郎は少し驚いていた。
昨日、女性として意識していると口にした。
その結果、何かの蓋が外れてしまったらしい。
「面倒だな、恋愛って……」
「何か言いました?」
「言ってない」
午後二時を過ぎ、最後の客が帰った。
宗一郎は入口へ「昼営業終了」の札を出してもらい、ニーナと片づけを始めた。
「今日はもう戻っていいよ。昨日も手伝ってもらったし」
「でも洗い物が」
「これくらい一人でできるよ」
「では、お言葉に甘えます」
ニーナは前掛けを外した。
帰り際、扉のところで振り返る。
「三枝さん」
「何?」
「レティシア様が来なくても、あまり落ち込まないでくださいね」
「落ち込んでないよ!」
「では失礼します」
「絶対信じてないな……」
一人になる。
食器を洗い、卓を拭き、厨房の火を落とす。
祭りの翌日らしく、外の通りもいつもより静かだった。
宗一郎が最後の椅子を整えたところで、扉が叩かれた。
「すみません、今日はもう――」
言いながら開ける。
そこにレティシアが立っていた。
「あ」
「……客はもういないのか」
「今終わったところです」
「そうか」
今日は簡素な軍装姿だった。
祭りで見せた普段着とは違う、公爵としてのレティシアである。
ただし護衛は見えない。
「ガレスさんは?」
「外で待たせている」
「一人で来たんです?」
「話がある」
宗一郎は、少しだけ緊張した。
昨夜の続きを思い出したからだ。
「入ってください」
レティシアは店内へ入った。
いつもの窓際の席へ向かうのかと思ったが、今日は中央の卓へ座った。
宗一郎も向かいへ座る。
「昼飯は?」
「城で食べた」
「ちゃんと野菜も?」
「食べた」
「珍しい」
「私はもう子供ではない」
「そこ張り合います?」
いつものように話そうとしたが、レティシアは笑わなかった。
冗談を言う空気ではない。
宗一郎も姿勢を直した。
「それで、話って?」
「昨日のことを考えた」
「俺もです」
「何を考えた」
「先にそっちから話すんじゃないんですか」
「……そうだったな」
レティシアは一度だけ両手を組み直した。
戦場で敵を前にしても動じなさそうな女が、言葉を選んでいる。
それだけで宗一郎にも、この話が軽いものではないと分かった。
「宗一郎。私は恋愛に詳しくない」
「昨日も聞きました」
「茶化すな」
「すみません」
「これまで縁談はいくらでもあった。貴族の次男、隣領の伯爵、王都の有力家の男。私自身ではなく、アルヴェイン公爵家と結婚したい者ばかりだった」
宗一郎は黙って聞いた。
「もちろん、全員が悪人だったわけではない。家同士の婚姻なら、それが普通なのだろう。私も若いころは、いずれ必要なら誰かを選ぶことになると思っていた」
「でも選ばなかった」
「ああ。戦が続いた。父が死に、領地を継ぎ、母も亡くなった。気づけば三十五だ」
「まだ三十五でしょう」
「貴族社会では、そう言ってくれる者ばかりではない」
宗一郎には、その世界の結婚事情を詳しく知らない。
だから安易に「気にするな」とも言えなかった。
「私は、それでも構わないと思っていた。一人で生きても困らん。領地も守れる。剣も使える。金にも困らない」
「料理以外はかなり一人で何とかなりそうですね」
「今その話をするか?」
「少し重かったので」
レティシアの口元がわずかに緩んだ。
少しだけ空気が柔らかくなる。
「だが、お前が来た」
「はい」
「最初は妙な男だと思った」
「お互い様ですよ。俺からしたら道端で血まみれの女公爵です」
「それから飯を作った」
「腹減ってたでしょう」
「私に野菜を食べろと言った」
「偏ってましたから」
「倉庫を整理した。ハンスの件でも、罰するか許すかだけではなく、仕組みの問題だと言った」
「総務だったので」
「何でもそれで説明するな」
レティシアは少し笑ってから、続けた。
「私が公爵でも、女でも、戦場で何と呼ばれていても、お前は態度を変えなかった。怒るときは怒るし、笑うときは笑う。疲れていれば飯を食えと言うし、仕事をしすぎれば休めと言う」
「それ、結構うるさい男ですね」
「うるさい」
「即答」
「だが、嫌ではなかった」
宗一郎は返事をしなかった。
「むしろ、そのうるささがない日を想像すると、嫌だと思った」
その言葉は、宗一郎の胸へまっすぐ入ってきた。
レティシアは誤魔化さない。
「お前が南へ行くかもしれないと思ったときも、元の世界へ帰るかもしれないと考えたときも、私は嫌だった。領主として有能な人材を失いたくないのだと、最初は自分に言い聞かせた」
「俺もそう思ってました」
「そうだろうな」
「すみません」
「もう怒っていない」
「少し怒ってる顔ですけど」
「少しは怒っている」
宗一郎は苦笑した。
「それで昨日、お前が私を女として見ていると聞いて、考えた」
「はい」
「私は、お前に自分を選んでほしい」
宗一郎の背筋が伸びた。
言葉の意味は分かる。
今回は、さすがに聞き間違えようがない。
レティシアは宗一郎の目をまっすぐ見た。
「宗一郎」
「……はい」
「私と結婚してくれ」
静かな店内で、その一言だけがやけにはっきり響いた。
宗一郎は動けなかった。
「え?」
「聞こえなかったか」
「聞こえました」
「では返事を」
「早い!」
思わず叫んだ。
レティシアの眉が寄る。
「何がだ」
「全部ですよ! 昨日やっと『お互い気になってますね』って確認したばかりでしょう!」
「だから次へ進んだ」
「一段飛ばしてます!」
「何を飛ばした」
「付き合うとか!」
レティシアは真顔で考えた。
「付き合うとは?」
「そこから!?」
「意味は分かる。だが結婚する意思があるなら、先に結婚を申し込んだ方が話は早いだろう」
「公爵様の恋愛、軍事作戦みたいなんですよ!」
「目的を明確にするのは大事だ」
「確かに大事だけど!」
宗一郎は頭を抱えた。
本気だ。
この人は冗談でも勢いでもなく、本気で結婚を申し込んでいる。
「ちょっと待ってください」
「待つ」
「俺、四十二ですよ」
「知っている」
「異世界人です」
「知っている」
「爵位も財産もないです」
「私にある」
「文字もまだちゃんと読めません」
「覚えればよい」
「魔法も使えない」
「私も生活に困るほど魔法へ頼っていない」
「料理屋のおじさんですよ」
「私はその料理屋のおじさんを選んでいる」
逃げ道が全部塞がれていく。
「公爵様」
「何だ」
「そういう即答、ずるくないですか」
「考えた上で来たからな」
「いつから?」
「朝からだ」
「今日来なかったの、そのせい?」
「ああ。お前の顔を見たら、考えがまとまる前に来てしまいそうだった」
宗一郎は思わず笑いそうになり、しかし笑えなかった。
嬉しかったからだ。
来なかった一日を自分が気にしていたのと同じように、レティシアも自分のことで悩んでいた。
「俺も、今日来ないから気になってました」
「本当か」
「昼だけで八回入口見たらしいです」
「誰が数えた」
「ニーナ」
「後で褒めておく」
「余計なことしないでください」
レティシアがようやく少し笑った。
その顔を見ると、宗一郎の中にあった「身分が」「年齢が」「異世界人が」という言い訳が、少しずつ形を失っていく。
だが、だからといって、その場で結婚すると答えることもできなかった。
「レティシアさん」
口にしてから、宗一郎自身が驚いた。
初めて、公爵様ではなく名前で呼んだ。
レティシアも驚いている。
「……もう一度言え」
「そこ拾います?」
「言え」
「レティシアさん」
彼女の表情が柔らかくなる。
「さんはいらん」
「急に難易度上げないでください」
「宗一郎と呼んでいる」
「立場が違うでしょう」
「今は結婚の話をしている」
「そうだった……」
宗一郎は一度深く息を吐いた。
「レティシア」
今度は、呼んだ。
たったそれだけなのに、ひどく照れる。
目の前の女公爵はもっと照れていた。
「……悪くない」
「感想言わないでくださいよ。こっちが恥ずかしい」
「続けろ」
「はい」
宗一郎は真面目に彼女を見る。
「求婚は、嬉しいです」
レティシアの肩から、ほんの少し力が抜けた。
「でも、今日『はい、結婚します』とは言えない」
「なぜだ」
「嫌だからじゃないです。むしろ、その逆です」
「逆?」
「ちゃんと考えたいんですよ」
宗一郎は言葉を選んだ。
「俺は昨日、ようやくあなたを女性として意識しているって認めたばかりです。今はたぶん、かなり好きになりかけてる。でも、結婚ってそこから先でしょう?」
「好きになりかけている」
「そこだけ復唱しないで」
「大事なところだ」
「恥ずかしいから」
レティシアは少し嬉しそうだった。
「それと、あなたは公爵です。結婚したら、俺だけの話じゃ済まない。領地や貴族社会や継承のこともあるでしょう。俺には何も分かってない」
「それは私が説明する」
「説明された上で、自分で考えたい」
レティシアは宗一郎を見つめた。
やがて頷く。
「分かった」
「怒らないんです?」
「なぜ怒る」
「断られたと思ったかなって」
「断っていないのだろう?」
「はい」
「なら待つ」
レティシアは少しだけ身を乗り出した。
「ただし、いつまでも待つとは言わん」
「そこは公爵なんだなあ」
「三十五だからな」
「それ関係ある?」
「ある」
宗一郎は笑った。
そして、ずっと言おうとしていたことを口にする。
「じゃあ、提案があります」
「聞こう」
「まず、付き合いませんか」
「……付き合う」
「恋人として」
レティシアが黙った。
今度は彼女の方が、明らかに動揺している。
「結婚するか考えるためだけじゃなくて、お互いをもっと知るために。公爵と店主じゃなくて、男と女として」
「男と女……」
「公爵様、そこだけ繰り返す癖あります?」
「今はレティシアだ」
「訂正早いなあ」
「約束した」
「してないですよ」
「今した」
宗一郎は笑った。
「じゃあ、レティシア」
「何だ」
「俺と付き合ってください」
求婚された男が、その直後に交際を申し込む。
順番として正しいのかは分からない。
だが二人には、それくらいがちょうどよかった。
レティシアはしばらく宗一郎を見つめ、それから静かに頷いた。
「ああ」
「よろしくお願いします」
「こちらこそ」
妙に会社員の挨拶みたいになった。
二人とも気づいたらしく、同時に笑った。
「何だこれは」
「四十代と三十代の恋愛って、こうなるんですかね」
「私は知らん」
「俺も久しぶりすぎて分かりません」
「なら二人で覚えればよい」
「料理みたいに?」
「そうだ」
「失敗しても怒らないでくださいよ」
「お前もな」
少しの沈黙。
気まずくはない。
宗一郎は卓の上へ置かれたレティシアの手を見る。
昨日は人混みを理由にした。
今日は、その必要がない。
「手、いいです?」
「なぜ聞く」
「一応」
「昨日は勝手に握った」
「人混みだったからでしょう」
「今日は恋人なのだろう?」
宗一郎はまた言葉に詰まった。
「その単語、破壊力ありますね」
「恋人」
「繰り返さなくていい!」
レティシアは楽しそうに笑いながら、先に手を差し出した。
宗一郎はその手を取った。
昨日ほど緊張しない。
嘘だった。
昨日以上に緊張した。
「宗一郎」
「何です?」
「私は求婚を取り下げたわけではない」
「分かってます」
「交際の先で、もう一度返事を聞く」
「はい」
「逃げるなよ」
「逃げません」
宗一郎は、今度こそ迷わず答えた。
その夕方。
ガレスとニーナとミレイユが、なぜかほぼ同時に食堂へ顔を出した。
三人とも示し合わせたように不自然だった。
「何です、みんなして」
宗一郎が聞く。
ミレイユが代表して口を開いた。
「どうなったの?」
「何が?」
「レティシアが昼からずっと落ち着かなくて、あなたの店へ行ったでしょう」
「宮廷魔術師って暇なんです?」
「今はそこじゃない!」
宗一郎はレティシアを見る。
レティシアも宗一郎を見る。
「言います?」
「お前が言え」
「何で俺」
「男だろう」
「そういうときだけ古い価値観出さないでください」
ニーナが待ちきれない顔をしている。
ガレスは平静を装っているが、明らかに聞き耳を立てていた。
宗一郎は観念した。
「ええと……」
「はい」
ニーナが前のめりになる。
「レティシアから結婚を申し込まれました」
三人が固まった。
数秒後。
「えええええっ!?」
ニーナの声が店中に響いた。
「そこまで!?」
ミレイユまで驚いている。
「我が主ながら、攻めましたな……」
ガレスは遠い目をしている。
「それで!?」
ミレイユが詰め寄った。
「結婚するの?」
「いきなりは無理なので、まず付き合うことになりました」
再び沈黙。
今度はニーナが両手で口を覆った。
「つまり……恋人?」
「そうなりますね」
言葉にすると、やはり恥ずかしい。
レティシアは隣で平然とした顔をしている。
ただし耳は赤い。
「ふふ」
ミレイユが笑った。
「何です?」
「やっとね」
「何が」
「いえ、こっちの話」
「またそれですか」
ガレスが宗一郎へ右手を差し出した。
「三枝さん」
「何です?」
「ご武運を」
「恋愛ですよね?」
「閣下が相手ですので」
「否定しづらいなあ!」
レティシアが椅子から立ち上がる。
「副団長」
「冗談です」
「半分本気だろう」
「否定はいたしません」
「お前!」
いつもの騒がしい食堂へ戻る。
だが昨日までと違うことが、一つだけあった。
レティシアが帰るとき。
宗一郎は店先まで見送り、周囲に誰もいないことを確認してから言った。
「また明日」
「ああ」
「仕事終わってから来てくださいね」
「分かっている」
「本当に?」
「恋人に会いに来るのは公務ではないからな」
「自覚あるじゃないですか」
「当然だ」
レティシアは少し歩き、振り返った。
「宗一郎」
「はい?」
「明日はデートだ」
「え?」
「恋人になったのだから、するのだろう?」
「いや、仕事は?」
「午前で終わらせる」
「また無茶する気だ!」
「約束だからな」
「いつ約束したんです!」
レティシアは答えず、楽しそうに歩いていった。
宗一郎は店先に立ったまま、頭を抱えた。
「恋人になっても振り回されるのは変わらないのか……」
けれど、口元の笑いだけは隠せなかった。
異世界へ来て、まだ一か月にも満たない。
剣の才能もない。
魔法もない。
特別な力もない。
ただ料理と家事と、二十年近い総務生活で身につけた面倒事への耐性があるだけの四十二歳。
そんな自分が、三十五歳の女公爵から本気で求婚された。
そして、すぐに夫になる勇気はなくても、彼女の隣へ一歩踏み出すことだけはできた。
問題は、その一歩の先だった。
レティシア・アルヴェインは、ただの恋人ではない。
北部を統べる公爵である。
彼女と付き合うということが、二人で飯を食べたり手を繋いだりするだけで済まないことを、宗一郎はまだ本当の意味では理解していなかった。




