4 本編
相変わらずテンション高め自称大根です!
もっとチート活用して! というツッコミが聞こえそうですが、活用したらしたで飼い主の気苦労がヤバい事に……。
今回2話構成となっておりますので、こちらからご覧ください。
魔法も使えちゃうプチチート持ちな自称大根、他称マンドラゴラなわたくしです!
魔法の検証は飽きました!
あと日も落ちてきて暗くなってきたので、今日はついにあの行動をしてみたいと思います!
飼い主は外泊中なので、親フラ……じゃなくて飼い主フラ? の心配もないので、どんといこう。
しかも、なんと本日はいつもきっちり閉められている私の背後の窓が少し開いてるのですよ、奥さん!(誰)
朝、天気が良かったからか飼い主が出かける時に開けていってくれたんだけど、閉めてくれと頼むのを忘れたのかもしれない。
「(でも、イケオジなら言われなくても気付きそうなんだけど……)」
その点だけがちょっと不思議だ。
イケオジは見るからに仕事が出来そうだし、飼い主への敬ってる気持ちもバリバリ伝わって来てたから、その命令を忘れるなんてないと思うし、気付いてないなんてのもあり得ないと感じるから。
そんな素朴な疑問を呟いて植木鉢の中で葉を傾げていると、何の前触れもなく部屋の扉がガチャッと開かれる。
「(危惧してた飼い主フラ!? って、メイドさんか)」
ビクッとして葉をピンッと立てた私だったが、開いた扉から顔を覗かせたのは若いメイドさんだ。
部屋が薄暗いから断定は出来ないけど、庭からこちらを見ていたメイドさんだと思う。
「もう! なんでこの部屋なのよ! あたしは旦那様の寝室の担当が良かったのに! そうすれば上手いことやって旦那様と……」
「(独り言でっか!)」
なんて、私のツッコミも大きかったので他人の事言えないか。
私の声は誰にも聞こえないからいいとして、この色々妄想駄々洩れてるメイドさんの方は大丈夫なんだろうか。
しかも、どうやら飼い主の妻の座狙いみたいだけど、この残念な感じじゃ愛人枠も難しいのではと老婆心ながら心配してしまったのだが……。
メイドさんの次の発言で心配する気持ちは綺麗さっぱり消えてしまった。
「こんなくだらない本とか興味ないし……なにより、あの気持ち悪い植物はなんなのよ!」
「(くだらないってあなたが決めないでよ! 全部飼い主の大事な本なんだからね! あと私は気持ち悪く…………うん、それはちょっと、ごめん?)」
飼い主の大切な蔵書に関しての『くだらない』には怒りが湧いたが、私への気持ち悪いには怒りより先に、同意する気持ちが前に出てしまい、語尾が尻すぼみになる。
もしも私が人間のままで、こんなうごうごしている謎植物見たら、あのメイドさんと同じ事叫んでたかもしれないし?
でも、少々反論させてもらえるなら、私はゆるキャラ系な体型の結構可愛い寄りな自称大根マンドラゴラだと思うんだよね。
そこんところどう思います? 奥さん(誰)
「どうせこんな埃臭い部屋掃除しなくてもわからないわよ!」
そんな捨て台詞を吐いたメイドさんは、フンッと顔を反らせてこの部屋に一歩も入る事なく去って行ってしまった。
鑑定のえじ……ゲフンゲフン、練習台になってもらえばよかったなぁといなくなってから気付いた。
次に会ったら、即鑑定させてもらおう。あそこまでわかりやすくイラッとする子なら全く罪悪感が湧かないからね。
それよりだ。もしかしてというか、たぶん? イケオジはあのメイドさんに掃除と一緒にこの部屋の窓を閉めるように頼んだんじゃないかな。
でなければ、この時間になっても窓が閉められていない理由がわからない。
普段は飼い主が夕方になると閉めてくれるし。
…………怒られるのは私じゃないからいいか。
私はただの鉢植えの気持ち悪い植物なんで知りませーん。別に根に持ってる訳でもありませーん。
脳内で言い訳しながらうごうごしていると、開かれたままの窓から外の風が吹き込んできて私の葉を揺らす。
あのメイドさんのおサボりのおかげでガラス越しではなく外をじっくり眺める事が出来るんだし、逆に感謝するべきかも? と思考を切り替えた私は視線を窓へと向けて口を開く。
私に口があるかは知らないが。
「(これは好機なり!)」
それでは早速、植木鉢からの脱出から試してみようと思うぞ、諸君!
あんまりゆっくりしていると、イケオジが念の為の戸締まり確認とかに来るかもしれないからね。
有言実行あるのみという事で、私は葉を使ってぐっと植木鉢の縁を掴み、体を持ち上げてみる。
ついでに多分動かせそうな感じの手足(?)にも力を入れる。
さらについでに魔力なんかも乗せてみちゃったり?
なんて調子に乗ったのが悪かったのかもしれない。
スポンッ!
そんな間の抜けた音と共に、私の大根ボディは植木鉢からすっぽ抜けてしまい、勢いのまま窓の方へと飛んでいく。
スローになった流れていく風景の中、これは窓をぶち破って血塗れコースかと慄いたが、思いがけず痛みはなく……。
ただ流れる風景が室内から屋外へと変わり、窓ぶち破って血塗れコースよりヤバい状況に陥った事を悟って青ざめる私。
自称大根な私のそこそこスリムなボディ、どうやら開いていた窓の隙間にジャストでインしてしまった模様。
顔(?)色は変わってないと思うけど。
ツッコミを入れてたらちょっと冷静になれたので、先ほど練習したばかりの風を起こす魔法で吹き飛ぶ勢いを殺して華麗に着地! とかしたかったがその前にガクンッと自由落下が停止する。
どうやらふさふさ(?)な葉が庭の木の枝に引っかかってしまったぽい。
自分じゃ見られないけど、たくあんでも作るのかよって感じでぶらんとぶら下がってると思う。
しかも、運悪く枝葉に葉が絡んでしまったのか、葉をうごうごした程度では体が揺れる程度で脱出出来る気配はない。
土から引っ張り上げたマイボディは手足短めだし、まだ上手く使えないのでこちらを使っての脱出も無理そうだ。
「(魔法でなんとかなるかな)」
そんな事を呟いて周囲を見渡してみるが、とりあえず燃やしたら色々ヤバそうなので火魔法は却下。
風魔法で枝を切り刻もうとすると自分も切り刻みそうなのでひとまずこちらも却下。
水を地面へ向けて噴出したら…………葉がブチブチと千切れる痛々しい未来しか見えぬ。
どうしようかなと悩んでいたら、自然とボディが動いて腕組みしていた。
動かせたじゃんと感動した私は、リアル大根足な足の方も動かしてみる。
すると、葉ほどはスムーズに動かせないが、きちんと足の方も動かせた。
これはもしや歩けるのでは! と喜んだのも束の間、今の自分の状況を思い出してしゅんとしてしまう。
このまま枯れ果てる運命かと覚悟した私の目が、先程までは気付かなかった存在を捉えたのはぶら下がって少し経った頃だ。
ちなみに口に続いて目があるかも知らない。
そんな事より今はさっきから見えている相手の方が重要だ。
「(おーい、おーい)」
葉を揺らしてアピールすると、木の枝に同化するように張り付いていた相手の目が私の方を見る。
「(すみませーん。ちょっと、この辺触って解いてもらえたりしません?)」
私の声が聞こえた訳ではないだろうが、頭をもたげてこちらを見ているのはヤモリっぽい生き物だ。
私の知ってるヤモリとはちょい大きさが、あと色味も派手かな……。
そこまで考えた私は、やっとチートなスキルであろう鑑定の存在を思い出してヤモリ(仮)へ向けて試してみる事にした。
「(うなれ、私の鑑定!)」
あ、この呪文にほぼ意味はないよ。
色んな物体に鑑定をかけている時に気付いたんだよね、鑑定したいって思いながら魔力動かす感じにすると発動するって。
という訳で、今叫んだのは生き物相手に鑑定使うのが初めてだから気合を入れてみただけ。
その甲斐(?)もあって何事もなく鑑定結果の画面が目の前に現れる。
『ミラージュゲッコー』
半透明のウィンドウの中にカタカナで浮かんだのは、そんななんか格好良い感じの名前だった。
どうやらあのヤモリは『ミラージュゲッコー』という種類の生き物らしい。
説明文を読む限り、人間の区分で言えばモンスターになりそうだ。
この世界のモンスターと動物の境は、人間が決めたものなら『魔力を持つものがモンスター』となっている……と飼い主が読ませてくれた本に書いてあったから。
確かに他の生物からしたら、自身がモンスターなのか動物なのかなんて気にする必要ないもんねと納得した覚えがある。
そんな小さな事を気にするのは人間ぐらいだと思う。
「(魔法を使って擬態するなんて、さすが異世界)」
鑑定結果を読んでそんな呟きを洩らしていると、厨二心が疼く名前と特徴のヤモリくんがゆっくりと近寄って来る。
「(聞こえてる訳じゃないよね?)」
今度は無反応。
やはり私の声が聞こえている訳でなく、うごうごしている私が気になって近寄って来ているぽいな、これは。
お腹が空いてるから餌になりそうな物が気になるんだろう。
鑑定結果に『極度の渇きと軽い空腹』って出てるぐらいだし。
軽い空腹はともかく、渇きは早くどうにかしないとヤバいのでは極度とか付いてるし……あ、ヤモリなら爬虫類だから多少は大丈夫なのかな? でも鑑定結果に出る程の渇きならヤバい事には変わりはないか。
「(私はやれば出来る子!」
声に出して自身を奮い立たせ、思い浮かべるのは私へ水をくれる時の飼い主の水の魔法だ。
「(出でよ、水の玉!)」
数秒間何も起きなくて一瞬失敗したかと思ったが、すぐに変化が現れる。
ふよりと視界が揺れるみたいになってから不定形な水が空中に現れ、ちょっと安定しないけどなんとか丸く出来た。
それをこちらを見ているヤモリくんの前へと動かす。
かなり頑張った。
動けーと念じたら何とかふよふよと移動したので、病は気からという言葉もあるように思い込みの力は異世界でも通じるようだ。
なんか例えが間違ったとしても。
「(さあ、とりあえずこれを飲んで喉の渇きを潤して)」
聞こえないとわかっていても、ついつい話しかけてしまった。
色々死にかけぽいヤモリくんのくりんくりんの大きな目は、星屑を散りばめたみたいにキラキラしてて綺麗で、今はその目をゆっくり瞬かせて私の作った水球を見ている。
膠着状態は数秒で終わり、サササッと動き出したヤモリくんはガバッと口を開けて勢い良く水球へ噛みついた。
警戒させちゃったかと反省したが、どうやら喉が渇きすぎて勢いがついてしまっただけらしく、その後はおとなしくガブガブと水を飲んでいくヤモリくんに安堵する。
舌でチロチロ可愛く飲むかと思ってたのに、思いの外飲み方が豪快だ。
それだけ喉が渇いてたって事だから良かった。
私が窓から落ちたのも無駄じゃなかったね。
しばらくガブガブ水を飲んでやっと喉が渇きが治まったようで、動きを止めたヤモリくんが私の方を見る。
「(あのー、すみませんが、この引っかかってる葉っぱの部分、どうにか出来ません?)」
下手に出て丁寧に話しかけてみたが、そもそも聞こえてないじゃんと気付いてポリポリと頬……辺りであろう部分を掻く。
しかし、そんな私の念が通じたのか、ヤモリくんがとても察しの良いタイプなのかは不明だが、ヤモリくんがゆっくりと枝の上を歩いて近づいて来る。
「(お願い、その引っかかってる所を少し突いてくれれば外れると思うから……)」
わかっていてもまたついつい口に出してしまった私に対し、ヤモリくんがゆっくりと瞬きをしてから大きくうなずくような仕草を見せて、枝に引っかかった私の葉へ前足を伸ばしたのが見える。
「(え?)」
これは予想外過ぎて、間の抜けた声が洩れたのも仕方ない。
まるで本当に私の声が聞こえたかのような反応を訝しむ間もなく、存外に器用だったヤモリくんのおかげで引っかかっていた葉はすぐに外れて──。
「(そりゃ落下するよねー!)」
葉が外れて起こるであろう結果を考慮していなかった私は、地面へ向けて自由落下をしながら叫び、何とか先ほど思いついていた『風による落下速度遅延』を実行する。
思いの外上手くいってしまい、ドヤッとしながら何となくグ◯コのポーズで着地を決めた私の脳内に、あの『声』が流れる。
『テイムスキルを獲得しました。使い魔契約が結ばれました』
うん? テイムスキルに使い魔契約? しかも、使い魔契約結ばれちゃったと?
これ同時に流れてていいやつなんだろうかとグ◯コポーズのまま葉を傾げて疑問を感じていた私は、とてもとても油断をしていた。
今ここが屋外で、私がある意味脱走中だという事を忘れて。
「は?」
不意に響いたのは、私の声ではなくイケボな男性のちょっと気の抜けたような短い驚愕の声。
声のした方を恐る恐る見やると、本日は帰って来ないはずの飼い主が目を見開いてこちらを見ている。
これは──。
「(とりあえず、逃げる一択で!)」
こうなったらダッシュで部屋へと駆け戻って植木鉢へインして、見間違えでしたーってやるしかないっしょ!
そんな決意と共に駆け出そうとした私はというと……。
「…………どう見ても私のマンドラゴラだな。何故こんな所に?」
即座に、とったどー! な感じで葉の根元を掴まれて飼い主に捕獲され、その状態のまま持ち上げられてまじまじと観察される。
「(やーん、えっち……)」
何だか今さらになって妙な気恥ずかしさを抱いてしまい、某女神の誕生の絵のようなポーズをとって肌(?)を隠していたら、飼い主から深々とため息を吐かれた。
「……とりあえず、戻ろう」
「(はーい)」
たしっと元気よく葉を上げて応えると、飼い主の方からフッと息が抜けるような音が聞こえ、見上げた美麗な顔は柔らかな笑顔を浮かべて私を見つめていて。
出会ってから一番かもしれない飼い主の不意打ち笑顔に見惚れている間に、私は飼い主から小脇に抱えられて懐かしの我が家(植木鉢)に戻される。
飼い主の名誉のために言っておくと、さすがに『とったどー』状態だったのは観察される間だけだったよ?
もっもっもっと体をくねらせて植木鉢の中に戻る私を、飼い主が何とも言えない表情で見守ってくれている。
だが、飼い主は気付いていない。
もっさもさな私自慢の緑色の葉の中に、ヤモリくんが潜んでついてきてしまっている事に。
そして、このヤモリくんが私の『使い魔』とかいうのになっているという事を。
女(?)は秘密を着飾って美しくなるとか誰か言ってた気もするし、気にしないでいいかという結論で落ち着く。
その後、イケオジには私の行方不明がバレてしまっていたらしく、とても恐縮されてしまっていたようなので、次回はもっと華麗に抜け出して、気付かれる前に植木鉢への帰還を果たそうと思います。
いつもありがとうございますm(_ _)m
こちらネタに走ったシリアス皆無シリーズとなっております(*´艸`*)
主人公はちょっとチートなだけで秘密とかは何にもなく、ただたまたま変なマンドラゴラに転生したテンション高め女子でございます。
今回は長くなってしまいましたので、2話分割です。
深く考えず、あーやらかしてるなぁとなまあたたかく見守っていただけますと幸いです←




