両手に花?
アレはひどかった。
加齢臭発言がよほど頭にきたのか、あのあと一時間ほどギルマスに付き合わされたのだ。
「ははは、ギルマスは強かっただろう?」
なぜか自慢げなニッツを軽く睨め付ける。
「強いどころじゃないわよ! 見た目は野獣みたいなくせに、計算し尽くされた捌きをしてくれちゃって! 完全に! 動きを見切られて! 剣士としてのプライドが傷ついたわ!」
「……ギルマスも、プライドを傷つけられたと思うがなぁ。戦士としても、加齢臭発言でも」
なぜかギルマスに同情的なガイルだった。さっきからしきりに自分の腕のニオイを確認しているのは見て見ぬふりをするべきかしら? あなたまだ20歳くらいなんだから平気よ。……たぶん。いざとなったら浄化があるし。
「セナさん。さっきの結界魔法、無詠唱というか、自動展開ですよね? あとで、いいので、どうやって、いるのか、教えて、もらっても、いい、です、か?」
と、ミーシャ。『あとで』と前置きしている割には圧が凄い。今すぐ教えてと顔に書いてある。
「……刀、教えて」
と、フェイス君。ふっふっふ、おねーさんの格好良さに痺れちゃったみたいね? 罪な女だわ、私。
ただ、フェイス君の場合はもうちょっと大きくなって、身体ができてからの方がいいと思うなぁ。もちろん素振りや型の練習をするのはいいけど、それもあくまで木刀で。今から本物を使い始めると身体を変に痛めてしまうかもしれないもの。
その辺をゆっくりと、分かり易いように伝えると――
「――身体強化魔法を使ってもダメなの?」
「んー? まぁそれならいいかもしれないけど……。なに、フェイス君も使えるの?」
「ううん。でも、セナはさっき使ってた。教えて」
「…………」
「…………」
思わず目を見合わせる魔術師二人。
魔力の流れを視るのは魔術師になるために必須の技術だけど、相手の体内で発動する身体強化まで視えるのはごくごく少数。魔導師団内でも十人いるかどうか。
あれ? この子、もしかして天才? 天才なんじゃない?
「これは今から英才教育を施さなければ……」
「今からやれば大賢者だって目指せますよね……」
「いやいや、ここは剣も魔法も使える魔法剣士を目指しましょう」
「そんなセナさんみたいな色物――いえ、奇っ怪な人を目指さなくとも、普通にすれば偉大な魔術師になれますよ?」
「それ、訂正した意味がないわよ……。でも、やはり魔術師は接近戦が弱点なんだから――」
「一つの道を究めさせた方が――」
「いやいや――」
「いえいえ――」
フェイス君の今後の教育方針をめぐって、熱い議論を交わす私とミーシャであった。もちろんフェイス君本人は放置である。
「……うわぁ。端から見れば美少女二人から取り合われているんだがなぁ」
「全然羨ましく見えないな……」
なぜか呆れたような顔をするニッツとガイルだった。




