聖女から魔女に⑳
「ウォーレス、魔王の力が強くなったわ」
私は洗濯物を干しながら、隣で一緒に洗濯物を干すウォーレスに告げた。
「ベル、あの国のことを考える必要はないよ」
「そうそう、心配するだけ馬鹿らしいの」
草原に座り込むアラキナが、隣に座る狼を撫でている。
「あんな国など滅びればいい。我々も平和に暮らせるし、アラキナを悲しませるような国など、存在する価値もない」
その狼の口からこぼれる言葉に、私は苦笑する。
狼は、カールという獣人で、今は獣の姿で過ごしている。
そして、アラキナの恋人で、獣人の国の王だ。
私たちは、獣人の国に流れ着いた。
人間と獣人は相容れない。
そうずっと教えられていたけど、そんなことはなかった。
私たちの状況を知ると、獣人の国は、私たちを喜んで迎えてくれた。
そして、私たちは知ることになる。
あの国を見捨てて、獣人の国に逃げ込んでいる人間がいることに。そして、獣人の国は、平和を望んでいるのに、あの国の人間たちがちょっかいをかけてきて、平和が保てずにいたことを。
「俺が家督を継げなくなったのも、アラキナの家がひどい目にあったのも、結局は王族に端を発したものだった。それに自ら聖女を退けた。あの国が滅びたとしても、自業自得だ」
ウォーレスとアラキナが王族の護衛として働き始めたのは、自分たちの家の出来事に違和感を感じていたからだった。そして、真実にたどり着いたころ、私が魔王に気づき、魔女として牢に入れられることになった。それだけは、ちょっと誤算だったらしいけど。
「私は魔女だから、魔王を倒す力はないもの」
私の言葉に、二人が頷く。
あの国では、私は魔女だから。
だから、聖女としての力は貸すことができないわ。
*
そうしてしばらくして、ロックハート王国が滅びたのだと知った。
魔王を倒さない代わりに、王族を始めとして貴族を恐怖に突き落としてほしい、というウォーレスの願いを、魔王が叶えたかどうかは、知らない。
完
本編は完結しましたが、最後にもう一話番外編で完結となります。明日は14時更新となります。
お付き合いいただけると幸いです。




