第1話
おはようございます。chinoです。
ようやく物語のはじまりです。
よろしければ最後までご覧下さい。
世の中は変わってしまった。僕はそう思う。
みんな何かに怯えて過ごしている。
遥か遠い昔、神様は人間を造り出した。
最初に造られた青年は、周りの動物たちには仲間がいるのに自分には仲間がいないことを寂しく思い、神様に願う。そして神様によって少女が生まれた。人はひとりでは生きられなかった。
そして、何不自由なく楽園で暮らしていた2人だったが、ひとつの過ちを犯してしまった。
「この楽園の中心の大樹になっている赤い実は食べないこと。」
その約束を破ってしまったのだ。
悪魔の化身である蛇に唆され、少女はその実を食べてしまう。その愛する少女に勧められた青年も約束を破り口にしてしまった。
その実を食べた2人は知恵を手に入れた。
他の動物にはない「 羞恥心 」と「 罪悪感 」というものが芽生えてしまったのだ。
それを知った神様は罰を与えることにした。
赤い果実を食べてしまった人間は、永遠に生きられずに年老いていつかは死に至る。そんな呪いを与えた。
これは有名な話だろう。人間のはじまりのお話。
永遠には生きられない憐れな人間のお話。僕はそれで良かったのだと思う。
永遠ではないから「 今 」を大切に生きられる。
なのに、世界には自ら命を絶つ選択をするひとが一定数存在する。生きることが辛いと悲しむひとがいる。
世界は変わってしまった。
「 …生きづらい世の中だ。」
街外れのベンチに座り、空を見上げて小さく呟いた。
もう日も暮れて薄暗くなってしまった。
そろそろ帰ろうかと思っていたその時、真上を何かが横切った。
鳥か?いや鳥にしてはやけに大きな…
「 え!?女の子!? 」
僕はその場に響き渡る程の大声で叫んでいた。
周りに人がいなくて本当に良かった。
空をふわりと飛んでいたのは、とても小柄な少女だった。その声にびっくりしたのか、少女はそのまま少し離れたところに落ちてしまった。
落ちる瞬間、目が合った。
血のように深く鮮やかな瞳と。
ハッとして僕はすぐに落ちてしまった場所に駆けつけた。そこには天使のような白くて透き通る肌にとても長くて綺麗な白金の髪、灰紫の瞳をした少女が立っていた。真っ白なワンピースには少しレースが施されていて、本当に天使のような子だった。
「 …あっ、大丈夫だった? 」
少し間を空けて僕は少女に話しかけた。
「 ……?あぁ、大丈夫…。」
とてもか細い声で少女は答えてくれた。しかし何故かすぐに目を逸らされてしまった。
「 あんな高いとこから落ちて、怪我もないなんて君は本当に天使みたいだね。」
「 天使…?どちらかというと悪魔の部類なのだけど」
悪魔。そんなことはない。そう言おうとした僕の口は、声にはならなかった。なぜなら、その少女の瞳が紅く光っているように見えたから。
「 失礼ですが、貴方は人間ですか? 」
「 え、?…え? 」
耳を疑った。人間以外に何があるというのか。
「 人間のようで安心しました。」
少女はそう言って困惑している僕の方へ近づいてきた。
「 よろしければ、私に涙を頂けませんか? 」
「 なみだ?それはどういう… 」
「 あ、見ず知らずの人にいきなりこういうのは変ですよね。失礼しました。 」
いや、見ず知らず以前に人に涙をくれ、なんて言うこと自体おかしいと思うのだが。
「 レティシア・カルヴァートと申します。」
「 ええと、ちょっと飲み込めないのだけど。」
「 貴方のお名前はお聞きしてはいけませんか? 」
「 …。エルヴィス・アルフォードと申します。」
「 アルフォードさま、よろしければ私に… 」
「「 レティ!! 」」
話している最中に遮ってきたのは小さな子供だった。見た目がレティシアより若くまだ齢10くらいの小さなそっくりの双子。
「 レティ!また道に迷ったでしょ! 」
「 なかなか戻ってこないから僕ら心配したんだよ!! 」
そういって彼女をぐいぐいと引っ張る2人。
「 そんなに時間経った?そんなに焦らせないでよ。」
「 だめだよ!今日は大事な日でしょ! 」
「 そうそう!お姉様のお誕生日なんだから早く帰ろう? 」
彼女は少し申し訳なさそうにこちらを見て言った。
「 ごめんなさい、また後日お話に来ます。」
後日。まだ出会って数分なのに次会う約束までするなんて。そう思って少し目線を外した一瞬で、彼女たちの姿はもう何処にもなかった。
この日の出来事が僕、エルヴィス・アルフォードの人生を変える、幕開けだったとはまだ気づいていなかった。
第1話、如何でしたか。
作者が人外系大好きなもので詰め合わせたような物語になりました。
不慣れ故、お手柔らかにお願いします。
続きが気になった方、少しでも興味を持って下さった方、よろしければブックマークや評価、感想など頂けると嬉しいです。
第2話、また近々更新したいと思います。
ありがとうございました。