9.ある日の母の教え
HD復活!
喜びの舞いを踊りました。
長らくお休みしていたこちらのお話も、ゆっくりではありますが、再開させていただきます。
もう忘れちゃったという方々もいらっしゃると思います。もしよければ、サラサラーとかパラパラーとか、そういう感じで思い出して戴けると、また作者が踊ります。
よろしくお願いいたします。
ゼノア公爵邸の公爵夫人の作業場で、4、5歳くらいの女の子が大泣きしながら、訴えている。
「お母様、どうしても作らなくちゃいけないのっ お兄ちゃんも、れんしゅうしてるでしょっ」
「でもねぇ、マリア。あなたにはまだ早すぎると思うのよ?ほら、手もまだこんなに小さいでしょう?」
「ちいさくないっ はやく作らなくちゃ、また泣いちゃうでしょっ」
既に泣いているくせに、意味不明なことを言って地団駄を踏んでいる娘に、公爵夫人も手を焼いている。
「マリア、よく聞きなさい。お母様はあなたが嫌いで駄目だと言っているのではないのよ?
お母様が香水を作っているからといって、あなたが作らなくちゃいけないわけではないわ。それに同じ魔法が使えるからといって、同じことをする必要もないわ。
あなたはあなたの好きなこと、やりたいことをしていいの。あなたはまだこんなに幼いのだから、ゆっくりお探しなさいな」
「でもっ、マリア、スゴい香水をつくりたいっ」
大人しく母親の話を聞いてくれてはいたが、意志は変えるつもりはないらしい。
「はぁ、仕方ないわね。それじゃいいわ、香水の作り方を教えてあげる。でもねマリア、約束して頂戴。他にやりたいことが見つかったら、ちゃんとお母様やお父様に教えてくれるわね?」
「うんっ」
そう言って、練習中の兄のもとに駆けていく娘に公爵夫人は盛大に溜め息をついた。
「頑固なところは曾祖母様似なのかしらねぇ」
同時期、ある貴族の屋敷の一室で女の金切り声がする。
その声は幼い女の子に向けられていた。
「わかっているのっ? その程度のお作法も満足に出来ないなんて、本当に私の娘かしら?!」
「ごめんなさい! ごめんなさい、お母様」
鞭を覚えた身体は、勝手に頭を抱えて縮こまる。
「そんな言葉聞きあきたわ 謝るよりもう一度やってみせなさい」
「はい、お母様」
よかった、ぶたれなかった………
でも、今度はちゃんとやらなくちゃ
女の子が先程まで座っていたテーブルに戻る。
テーブルには4つの席があり、うち3つには枕が席についていた。その枕達を相手に「食事をしながら優雅に会話する」という練習をしている最中らしい。
まだ4歳くらいだろうか、母親の表情を窺うその子の顔には、怯えと苦痛しかなかった。
「ねぇ? 忘れたの? 令嬢ならいつでも微笑みを浮かべて余裕をみせなさいと言ったでしょう! 」
バシッ
「いたいっ…………」
乾いた音の後、女の子は乗馬用の鞭でつけられた痛みに小さな手をあてた。
「そんなことで通用すると思っているのっ? いるべき場所に戻ったときに恥を掻くのはあなたなのよ? 」
「……ごめんなさい」
「あの女が、あなたのお父様を騙して身重の私を追い出したことを忘れないで。
本来なら、あの女の娘などではなく、あなたが公爵家の令嬢なのよ。だから、マナーもダンスも!誰よりも優れていなければならないのっ
…………ねぇ、私が厳しくするのはあなたを愛してるからだとわかってくれるわよね? 」
「……はい、お母様。ありがとうございます」
「いいこね。いつかふたりでいるべき場所に戻ったとき、きっと私に感謝するわ。
一緒に私を嵌めた非道な奴等を引き摺り下ろしてやりましょう? その為にも、あなたには立派なレディになってもらわなくちゃ。
さぁ、もう一度おさらいよ」
◇
ジェダイト国の王都にある学園の女子寮で、暗い瞳の生徒が鏡を睨み付けていた。
瞳だけは大嫌いな母親にそっくりで、鏡を見る度に、辛い記憶が甦る。
忘れられるわけがないわ
毎日、毎日、母親を破滅させた人間達への怨嗟を聞かされながら、マナーや貴族の令嬢の立ち居振る舞いを、夜遅くまで練習させられた。
私があんな子ども時代を過ごしたのも、あいつらのせいよ
「絶対に、あいつらを幸せになんかさせないわ。必ず、私とお母様が受けた苦しみを、あいつらに思い知らせてやる」
お読みいただきありがとうございます。
ブクマしてお待ちくださった皆さまも、本当にありがとうございます。
応援、早く書け、等々何でもいいです。ブクマ、評価ポチっと戴けると頑張れます。




