14.試験に向けて⑥ 圧倒的実力差
あの古城での一件以来、俺は密かに〈クロス・バースト〉の練習に拍車をかけていた。
全身に痛みが走りはするが、一応〈クロス・バースト〉の状態を少しだけ維持できるようになっていた。
時間で言うと、3分持つか持たないかくらいだろうか。
それ以上は、体の負担が半端ないことになるのでやらないようにしている。
「……ほう!」
師匠は晃太の攻撃をいなしながら俺の方を見てそんな声を上げる。
「あっ! 南! いつの間にそんなもんできるように!?」
師匠に釣られるように晃太がこちらを振り向きわくわくしたような表情でそう言ってくる。
ていうか……。
「バカ! こっち見んな!」
「戦闘中によそ見は厳禁だぞ晃太!」
「っ! しまっ……!」
晃太がこっちを向いた一瞬の隙を師匠は見逃さず、晃太に蹴りを入れる。
「ぐっ……」
師匠の蹴りが入った晃太は横に吹っ飛んでいきそのまま壁に叩きつけられる。
「くそっ……! “火手裏剣”!」
俺は晃太を攻撃した後の一瞬を狙って“火手裏剣”を放つ。
「ふっ!」
すると、師匠は一瞬で印を結び、俺と同じく“火手裏剣”を放ち俺の“火手裏剣”と相殺させてくる。
「“噴火鉄拳”!」
「“土城壁”」
俺は師匠に反撃させる隙を与えないように続けて“噴火鉄拳”を放ち、師匠は“土城壁”で俺の攻撃をガードしてくる。
「“エアロブースト”」
“土城壁”は強固な壁となって相手の攻撃を防いでくれるが、前方が少しの間見えなくなるというデメリットがある。
師匠にはそんなデメリット大したことはないだろうが、狙うならここしかない。
「“メテオスマ……!」
「土遁、“土石流”」
“エアロブースト”で横を取り、“メテオスマッシュ”を打ち込もうとした時だった。
師匠は俺の動きを読んでいたのか、俺が回り込んだ時には既に印を結び終わっていて“土石流”を俺に向かって放ってきた。
「うわっ!」
俺は避けることができず、“土石流”に呑み込まれるように流されそのまま勢いよく壁に背中をぶつける。
「っ! ったぁ……!」
〈クロス・バースト〉の発動に伴う全身の痛みにプラスして、背中を打ち付けた痛みが全身に走り、その衝撃で〈クロス・バースト〉が解けてしまう。
「よーし、ここまでだな」
師匠がスッキリしたような声で全体に響き渡るようにそう言う。
フィールド全体を見渡すと、宙にはワイヤーで吊るされて身動きの取れない美穂、“蟻地獄”で胴体辺りまで体を埋められ同じく身動きが取れない紗奈、俺の正面には壁に打ちつけられてそのまま“変身”も解けて背中を押さえている晃太、……そして同じく壁に打ちつけられて全身にじんじん痛みが走っている俺。
完全敗北である。
まだ新人冒険者の俺たち相手とは言え、4対1でも余裕たっぷりに本気も全く出さずに俺たちをぼこぼこにした師匠。
……まだまだ実力差は縮まない……か。
「はい、というわけで今回の稽古をつけてやった俺の率直な意見を言おうと思う」
師匠との稽古(半分強制)が終わって少し休憩したあと、俺たちはギルドの1階のテーブル席に飲み物片手に座って、師匠の言葉を聞いていた。
飲み物は勿論師匠の奢り(強制)である。
「まずは美穂ちゃん」
「あ、はい」
「様々な属性魔法に強化、防御といった支援系魔法を使えるのはいいが、さっきも少し言ったようにそれ故に器用貧乏感が出てるな。色々なことができる上、〈詠唱破棄〉っていうお手軽便利スキルがあるんだ。後々のことを考えると、もう少し強力な攻撃魔法も覚えていった方がいいかもしれないな。……現段階で使える強力な攻撃魔法って何かあるか?」
「……ってなると“グングニル”なら使えますけど、〈詠唱破棄〉の対象外だし、魔力消費が激しいので出来ればあまり使いたくないんですよね」
「……ふむ、そういえばそうだったな。……じゃあ、まずは中級クラスの魔法から覚えてみたらどうだ? C級までなら中級クラスの魔法でほとんどのダンジョンで通用するし」
「ってなると、例えばハイマジック……とかですかね?」
「そんなところだな。ま、とりあえず支援よりも攻撃を重点的に鍛えた方がいいってことだ。今の時期は伸ばせるところは伸ばすのが大事だからな」
「わかりました」
確かに、いつもダンジョンに潜るときは戦闘中の攻撃は美穂以外の3人でやることが多くて、美穂が攻撃に参加するってことが援護以外でほぼなかったけど、これから潜るダンジョンの難易度が上がっていけば美穂が攻撃しなければならない場面も増えてくるかもしれない。
なら、今のうちに少しでも威力の高い攻撃魔法を覚えておいた方がいいってことか……。
「次は紗奈ちゃん」
「う、うむ……」
「紗奈ちゃんは扱う属性が光と闇ということも相まって、使える攻撃魔法はどれも強力なものばかりだ」
「……ふっ、当然である……ます」
「だが、その分、典型的な遠距離魔法使いの弱点でもある近接戦闘に弱いな」
「ぐぬ……」
「お、わかりやすいな。図星って顔してるぞ」
師匠の言葉にドキッとしたのか体をビクッと震わせる紗奈。
「まあ、紗奈ちゃんみたいなタイプは接近戦に持ち込ませないようにするのが一番だが、どうしてもそういう場面になる時はそのうち出てくる。別に近接戦闘ができるようになれとまでは言わないが、相手に接近された時の対処法とか、相手と上手く距離を取り続ける方法っていうのを考えておいた方がいいかもしれないな」
「う……うむ……」
師匠の言葉に素直に頷く紗奈。
まあ、こいつ元は素直だし自分でも少なからずわかってはいたのだろう。
多分俺が同じこと言ったら認めないだろうけど……。




