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アビリティワールド-ABILITY WORLD-  作者: イズミ
第2章 炎天下の熱闘
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10.将来の夢① どっちなの?

▷▷日向南


「―――皆も知ってる通り、来週から期末テストが始まる。テスト期間は午前だけで終わるが、なるべく無駄な外出をしないように。あと、アビリティ実技のテストは7月に行うが、訓練場を使用したい場合は必ず私に届け出るように。以上だ」


 古城探索から週明けの月曜、帰りのホームルームで六花先生がいつも通り凛とした声で連絡事項を伝えると、クラスの全員が返事をして、帰りの挨拶をする。


「来週からテストかー。面倒くせえな……南、テスト勉強してるか?」

「いや。これからだな」

「ま、南は中間の点数見てる限りだと大丈夫そうだもんな」

「そうでもないさ。中間は範囲が狭かったから解きやすかっただけだしな。期末ってなるとしっかり復習しないとさすがにきついわ。ていうか、学はどうなんだよ」

「俺は結構やばいんだよなー。でさ、赤点取ると夏休み補習行かないといけなくなるだろ? それでダンジョン行けなくなるのは困るって須藤が言ってきて、チームの皆でこれから毎日勉強会だってよ」


 学はそう言ってため息をつく。

 こいつは授業中に後ろから見ていると、ボーッとしてたり寝ていたりするので、ノートを取ってなかったり先生の話を聞いてなかったりというのが割と多い。

 学という名前に反して授業中に学ぶ行為をしないので、まさに名前負けと言えるのかもしれない。


「良かったじゃねえか。お前1人だと勉強しないだろどうせ」

「失礼なやつだな。でもよくわかってるじゃないか」

「こら!」


 さすがだと言わんばかりの顔を学がしていると、学の背後に人影が現れ、持っていた鞄で学を後頭部を軽く叩く。


「いつまでも待たせるな! さっさと勉強しに行くよ!」

「いってーなー……わかったから暴力ふるうなよ須藤……」


 須藤は仁王立ちで席に座りながら話していた俺たちを見下ろし、早くしろよオーラを体中から放っている。


「あと日向。あんたも美穂たちと約束あるんでしょ? あそこで待ってるから早く行った方いいんじゃない?」


 須藤がそう言って美穂の席の方に視線を向けたので、続いて俺もそっちを見ると美穂と紗奈がこちらをずっと見ていた。


 やべ……。


 美穂がまだかよという目をしている。

 あれは早くしないと後で何か言われるぞ。


「じゃ、南、また明日な」

「おう」


 学は帰り支度を整え、そう言うと須藤とともに教室を後にした。

 廊下からは鹿央や冬木、武井の声も聞こえてきていたので学が来るのを待っていたのだろう。


 「さて……待たせたな」


 俺は帰り支度を素早く整え、美穂と紗奈に声をかける。


「本当に待ったわよ」

「くっくっく……我を待たせるとは良い度胸ではないか……」

「まあまあ。どうせ電車来るまでまだ時間あるしいいじゃねえか」

「全く……さっきⅡ組もホームルーム終わってたっぽいから、多分、晃太も廊下で待ってるんじゃないの?」

「あいつなら大丈夫だよ。待つの苦手だからすぐに……」

「南ー!」

「……な?」


 俺がドヤと言わんばかりにすると、美穂がため息を一つ吐いた。




「―――ここだ」

「これは……中々普通の家ではないか」

「確かにそうだけど他人には言われたくねえ」

「へえ……ここが……」


 学校を出てから電車に乗って、そこから歩くことおよそ10分。

 俺は皆を連れて我が家へと帰ってきた。

 そう、勉強会は何故か俺の家でやることとなった。

 美穂は、実家を離れアパートに一人暮らししているのだが、部屋が生活感溢れてる状態だから嫌だと言われ。

 紗奈には、「だが断る」とばっさり言われ。

 晃太は、「やっぱり南の家だろ!」言いやがり。


 俺は別に誰かの家でやらなくても図書館とかでもいいだろと言ったのだが、俺の家がいいとごり押しされ結局俺が折れる形になってこうなった。


「ただいまー」


 玄関の扉を開けると、トタトタと足音が聞こえ、そいつは玄関の前で立ち止まる。


「おかえりー」

「おう」


 日向(ひなた) 陽菜(ひな)

 俺の妹で現在9歳の小学3年生である。


「おじゃましまーす……南の妹?」

「ああ、陽菜っていうんだ」

「へえ。初めまして、陽菜ちゃん」

「初めましてー。お姉ちゃんは?」

「神崎美穂だよ。よろしくね」

「美穂ちゃん! よろしく! そっちのお姉ちゃん?……は?」


 陽菜は美穂に挨拶した後、紗奈をお姉さんと呼んでいいのか一瞬戸惑いながら訊ねる。


「くっくっく、我が名はシャ「こいつは福山紗奈。見た目はそう見えないかもしれないが同級生だ」


 紗奈がまた痛いことを言いそうだったので俺は即座に紗奈の言葉を遮らせる。

 小学3年生は周囲に影響されやすい大事な時期。

 陽菜なら大丈夫だとは思うが、中二病予防はしておかなければ。


「おい! なぜ我の話を遮―――」

「そっか! よろしくね紗奈ちゃん!」

「お……おふ。よろしく……」


 紗奈が俺に何か言おうとしていたが、今度は陽菜に遮られ、それだけ言って静かになった。


「おーい、俺に挨拶はないのか陽菜」

「晃ちゃんはいつも来てんじゃん」


 そして、慣れたかのように晃太をあしらう陽菜。

 晃太は昔からかなりの頻度で家に遊びに来ていたので、我が家の家族全員晃太の扱いは割とこんなものである。


「おかえりなさい南。その子たちが?」


 すると、奥のリビングからパタパタと母ちゃんが着けていたエプロンで手を拭きながら玄関までやってきた。


「ああ、同じクラスでチーム組んでる美穂と紗奈だよ」

「あら。初めまして、南の母です。いつも南が世話になってるみたいで。今日はゆっくりしてってね」

「いえいえ、お世話になってるのはこっちもですから。それに今日は勉強会ですので……」

「え? じゃあ美穂ちゃんたちと遊べないの?」


 美穂の言葉に少しがっかりする陽菜。


「陽菜、じゃあ俺が少し遊んでやろうか?」

「晃ちゃんは勉強した方いいよ。みなにいに教えてもらわないとまた赤点取っちゃうかもよ?」

「待て陽菜! まだ赤点は取ったことないからな!」

「そろそろ俺の部屋行くぞ。勉強会はお前が主役なんだからな、晃太」

「あとでおやつ持っていくから勉強頑張ってね晃ちゃん」

「はい、頑張ります!」


 俺の言葉に少し渋ったような顔をした晃太だったが、おやつというワードでやる気になったのか、急に元気になった。

 さすが母ちゃん。

 晃太の扱い方をよくわかっている。


「ねえねえ、1つ聞きたいんだけど」


 2階の俺の部屋に皆を連れていこうとすると、陽菜が呼び止める。


「どうした?」

「美穂ちゃんと紗奈ちゃんはみなにいと晃ちゃんのどっちと付き合ってるの?」


 それは、その場の母ちゃんと陽菜以外、全員がその場で凍りつく質問だった。

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