8.体育祭⑪ 氷壁の向こう側
▷▷神崎 美穂
……どうしよう。2対1はさすがに不利すぎる。
私は横にある氷の壁をちらっと見た後、目の前にいる茉央を長谷川君に視線を向けた。
せめて、晃太か紗奈どちらかだけでもこっちに来てくれてたなら……。
体育祭最後の種目、大合戦。
私と晃太と紗奈は、一緒に行動して他の組団の人たちを倒していっていた。
そして、フィールド内にいた人が半分くらいまで減ったところで南たちを見つけ、紗奈が不意打ちで魔法を撃ったのがきっかけで現在の状況になったわけだけど……。
「私さ、前から思ってたんだけど、一度美穂と勝負してみたかったんだよね」
茉央が私と対峙するなか、そんなことを突然言う。
「……何で?」
「身近にすごい相手がいたらつい普通に勝負したくなっちゃうでしょ?」
それは果たして普通なのだろうか?
「……須藤。それは普通じゃないと思うぞ」
「そう? ま、細かいことは気にしないで、本当はサシで勝負したいとこだけど、今回は体育祭だからね。行くよ長谷川」
「はいよ……」
「“ブリザード”!」
「“コピー”。……凍てつく風よ、吹き荒れろ、“ブリザード”!」
茉央にツッコミを入れた後、茉央が放ってきた氷のフォース、“ブリザード”を長谷川君が“コピー”を使い、“ブリザード”を追加で放ってきた。
「“プロテクト”!」
襲いかかってくる2つの猛吹雪を、最近一番多く使ってるかもしれない“プロテクト”を使って防ぐ。
「“エンチャント・アクセル”!」
そして、移動速度を上げる付加魔法を自分に掛けて狙いを定められないようにジグザグに移動する。
「“フローズン”!」
「……っ!」
しかし、すかさず茉央が周囲の地面をツルツルに凍らせて私を近づけないようにする。
氷の張っている場所の直前で止まった私は、後ろにバックして距離を取ってから魔法を撃つ準備をする。
近距離が難しいなら遠距離から!
「“ファイアボール”!」
氷には炎が効果は抜群。
“ファイアボール”を連続で放つことで、あっちの隙を伺おう。
「“バブルショック”!」
と思ったのも束の間、長谷川君が“バブルショック”を放って私の“ファイアボール”と相殺させてきた。
長谷川君が使えるのは特殊魔法の“コピー”以外はサポート系の魔法だけだったはずだから、きっとどこかで“コピー”したのをストックで取っていたんだ。
魔法のクラスは“ファイアボール”の方が上だけど、炎は水に弱い。
相性の有利を突こうとしたが、逆に突かれてしまった。
「ナイス長谷川! “アイスエッジ”!」
「“ストーンエッジ”!」
茉央の放った鋭利な氷の柱と、私の放った鋭利な岩の柱がぶつかり合いどちらも破壊される。
「“コピー”! 固き意思で敵を貫け、“ストーンエッジ”!」
「くっ……“プロテクト”!」
これじゃあキリがない! 攻撃魔法出したら長谷川君に“コピー”されるし……。かと言って魔法を出し渋ると茉央の猛追に遭うしどうしたら……!
「“ブリザード”!」
そんなことを考えている時も、茉央は攻撃の手を緩めずに、私は“プロテクト”で攻撃から身を守り続けていた。
やっぱり2対1は無理だって! 元々あまり攻撃もそんな得意じゃないし!
ずっと貼っていた“プロテクト”にひびが入りはじめ、2人の攻撃にそろそろ限界を感じていた時だった。
「“流星群”!」
この大合戦の開始早々にフィールド全体に降り注がれた“流星群”が、再び上空から襲いかかってきた。
「やば……守れ、“プロテクト”!」
“流星群”を見た長谷川君は、即座に元々使える“プロテクト”で茉央もろともガードする体勢に入る。
「ああもう! “プロテクト”!!」
そして、私も身を守るために壊れかけていた“プロテクト”をさっきより魔力をこめて分厚く張り直し、防御体勢に入る。
何でこの疲れてきたタイミングで来るかな!?
おかげで助かったけども!
“流星群”は次々と墜落してきて、茉央が張っていた“アイスウォール”をも破壊し崩していく。
「ふう……」
“流星群”を何とか耐えきった後、辺りを見渡すと地面があちこちぼこぼこしており、“アイスウォール”の破片が私から見て遮られていた方側に崩れ、瓦礫の山となっていた。
「ああ! カラーボールが!」
「私のも! ちょっと長谷川、防ぎきれてないじゃん!」
カラーボールが割れ、ジャージが赤く染まっている茉央と長谷川君。
少しボロボロになっているところを見ると、どうやら“プロテクト”ではガードしきれなかったっぽい。
「ほ……」
2人がやられたことに少し安堵する。
……そう言えば、晃太と紗奈はどうしたのかな。
壁が崩れたことで、遮られることのなくなったフィールドを見渡す。
南たちと戦ってたし、そんな遠くに行ってはないと思うけど……。
「……まさかね」
私はふと瓦礫の山に目をやり、そして自分の考えを否定するように首を横に振った。
「……熱っ! 何!?」
すると突然、肩に熱い何かが触れ、ふと上を見上げると。
「……え?」
そこには、真っ赤な炎の翼を背中に火の粉を振り撒きながら羽ばたかせ、全身が煤だらけの南がこっちの方に飛んでくる姿があった。
……何あれ? どういうこと?
目の前の光景に色々な疑問が浮かび、呆気に取られてしまう。
「……ってああ!」
南に呆気に取られていると、その隙に南に“風手裏剣”を撃たれて、反応できずに私のカラーボールが割れてしまった。
やられた!




